BS-TBS

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放送番組審議会

第78回

2022/09

1.

日 時

2022年9月13日(木)午後3時58分

2.

場 所

BS-TBS会議室

3.

委員会の構成

委員総数 8名
出席委員数 6名

 

出 席 者

委員長  末綱隆
副委員長 出井直樹
委員   天野篤(リモート)
     寺﨑明
     古川柳子
     橋口いくよ
     ※瀬古委員はVTR出演/田中委員はレポート提出

 

局側

伊佐野 代表取締役社長
本田  常務取締役
中澤  取締役・番組審議会統括
鈴木  取締役・コンテンツ編成局長
高松  コンテンツ編成局編成部長
大手  マネジメント戦略室長
辻   マネジメント戦略室ビジネス考査部長
初瀬川 番組プロデューサー
川口  番組審議会事務局長
石井  番組審議会事務局幹事

4.

議 題

 

 

(1)審議事項

「通信簿の少女を探して〜小さな引き揚げ者 戦後77年あなたは今〜」
2K及び4K放送日時:8月14日(日)21:00〜22:54

 

(2)報告事項

「民放連放送基準改正」について

(1)審議事項

◎委員

 まず全体的に言って、あっぱれだと思います。6年間かけてリサーチされたということでしたが、どういう経緯でこの作品になったのか。私もかつてこういう感じの取材をやっていたことがあるので、この取材がいかに大変かというのはすごく思いましたし、最後に本人が出てきたときは、最後のピースがポンと入ったような感じで、よくここまできちっと取材をされたと、まずそこに敬意を表したいと思います。
 時代的な地の部分、地域としての地の部分と、少女を探すという本線、そういうものが非常に上手に組み合わされていて、少女の背景にあることが、別府であったり、引き揚げであったり、回天であったりとか、戦中戦後の背景、そういう時代の中を生きた一人の女の子がいたんだということを考えさせる、非常に重層的な構成ができていたということでは、すごくうまかったと思います。
 過去の物語ではなくて、彼女の戦後をもう少し分厚く描いていくと、その戦後というのが現在の物語につながっているというところまで語り得て、ものすごく構造的に重層的なものが描けたのではないかとも思いますが、1枚の通信簿からこれだけの戦後史を描き出されたということに関しては、本当にすばらしい労作だったと思いながら拝見させていただきました。

◎局側

 ディレクターの中には6年間の思いがあって、いろんなことを考えていたと思いますが、実作業として始めたのは去年の秋からになります。
 当初は、本当に通信簿しかなかったので、見つかるかどうかわからない状況でした。少女が見つかりそうだとなったのは、今年の春くらいのことです。最初の段階では、探し出せるかどうかわからない状態からスタートしています。

◎委員

 正直言って最初、2時間は重いなと思いましたが、2時間という時間をあまり感じませんでした。
 隠れた歴史を引きずり出すのはリスクが必ずあり、事実を伝えられない部分や見ないほうがいい事実というのがあります。兄の啓(ひらく)さんが亡くなったときに、「(死ぬのは)おまえのほうがよかった」、そういう一言を関係者から聞き出せたということ、そこまでの辛辣なことではなくても、生きていれば心にずっととげみたいに刺さっている言葉というのはあるもので、そういうものを思い出させてくれます。
 その後、加藤登紀子さんや山田洋次さん、秋吉敏子さんら3人の引き揚げた方たちの体験をインタビューされていますが、この流れだったら、その当時の、身近にある死、特に引き揚げを体験した人が、身近にある死というものにどういうふうに向き合ったのかということを掘り下げたほうが、もう少し今の時代に伝えるものがあったのではないかと思いました。生き抜くためにどういうことが必要だったのか、そういうものを伝えたほうが、若者に別の形のメッセージということで伝える意味があったかと思います。

◎局側

 ナビゲーターとして三浦透子さんを起用していますが、三浦さんは、アカデミー賞の国際長編映画賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」に出演されている方で、今、若手ではかなり注目されている方です。
若者の代表として、戦争を知らない世代として、番組を見る若い方々が三浦さんを通してこの物語を追体験していただきたいとの思いがありました。

◎委員

 少女の通信簿の、人望がない欠点というところと、保護者に母親の名前しか書いてなかったところから始まって、引揚者ではなかろうかという推察、途中の過程でそういった推察も非常にうまくされていて、すばらしいと思いました。
 過程の中で、地元紙が結構いろいろ情報を持っていて、地元紙の力は、昔も今も変わらずにあるのかと思いました。こういった調査も、今、個人情報の保護という中で、なかなか苦労されたと思いますが、うまくできてよかったなと思います。
 この番組は、戦争とか満州の問題とか、日本がかつてやったことを若い人に知ってもらえたらいいなという気持ちです。もう少し若い人用に、短かい形にして、そういう時代があったのだと、若い人が興味を持って見てくれるような手段がないかと思いました。

◎局側

 個人の情報に関することを新聞社でどこまで取材できるかというところはありました。
引揚者のお名前とか出ていた場面では、今回取材させていただいている方以外は、見えないようにぼかしを入れて、映像的に処理をしています。

◎委員

 番組全体としては、通信簿の少女を探すというのが縦糸になっていて、探す過程で、引き揚げという社会現象、それから引揚者の境遇とか、引き揚げの地になった別府の街が紹介される、そういう構成でした。
 辛口のところも含めて申し上げますと、三浦透子さんの役割というのか、見ている時は、なかなかわかりにくいと思いました。
 それからあと、重層的に広がりを持たせているので、いろんなエピソードを入れています。2時間という枠があるので、そういうのをいろいろ入れられたのでしょうが、もう少しコンパクトにすることはできたのかなと思います。

◎局側

 三浦透子さんとディレクターの二重構造というところは、ご覧になる視聴者の方にはわかりにくいところがあったかと反省している部分です。三浦さんがディレクターの思いを話しているところがあったりして、そこはすみ分けがうまくできていなかったかと思います。

◎委員

 8月15日前後は戦争のこと、真珠湾攻撃だとか、硫黄島の戦いだとか、広島・長崎の原子爆弾のことだとか、そういう重い題材が結構多い中、古本の中に挟まれた、残された通信簿から引揚者に焦点を当てたというのも、すごく意外性があって、おもしろかったという感想です。
 最後まで、通信簿の女性に本当に会えるか、人を探す中、推理小説やサスペンス劇場のような、最後まで会えるかというワクワク感、ドキドキ感が興味を倍増させたと思いました。
 お聞きしたいのは、閑子さんがインタビュー中に「気違い」と言っていましたが、わざわざそこに登場させた。それは意味があるのですか。

◎局側

 「気違い」という言葉自体は、統合失調症の方や精神障がいの方を表した場合は、差別用語となります。言葉には、いろんな意味があって、「気違い」というのは、〇〇キチのように、物事に夢中になっている状態を表す言葉としても使われていたこともあります。考え方や行動が常軌を逸しているというのが、いい意味に使われたり、悪い意味に使われたりすることがありますが、あくまでも流れの中で、その言葉が誰に向けて、どういう使われ方をして、どういう意味で使われて、それを聞いた時に傷つく人がいるのかいないのかという所をもって判断しています。
 今回のケースで言うと、お母さんのその時の状態を伝える言葉として、池見さん自身が選んだ言葉で、これをカットしてしまうと、その場の状況が伝えられず、発言が意味のないものになってしまう、などと社内で議論して放送にいたりました。

◎委員

 まず、私の世代やもっと若い世代も含めて、戦中戦後史と言われると一回構えてしまいます。昔の話をいっぱい、大変だったというのを聞くことになるので、頑張って見なければいけないと思いかけたところで、通信簿が本に挟まっていたという、ドラマティックな、映画のような設定から始まって、これは見れると思いました。番組自体は本当に興味深く拝見させていただきました。
ただ、なぜ本に挟んでいる通信簿を本人に届けなければいけないのか。ディレクターが何を考えて、6年間も温めてきているのか知りたかったです。最初にディレクターがどういう思いでこれを届けようと思ったかがわかると一緒に走って行けると思います。すごくもったいないと思いました。
 また、閑子さんをもっと早く登場させてほしかったです。歩行器を押しながら出てきた彼女が座った時に背筋がピンとしてて、私たちが女性同士で話す時と変わらない会話をしっかりとした活舌で話されていて、こんな人だったんだ。もう少しあの人が見たい。会いたいと思う素敵な人でした。
 ただ、最後に公園を歩行器を押していく姿で終わるのはどうなんだろうと違和感がありました。演出的にはわかりますが、悲哀という感じで終わるのは、さっきまで見ていた彼女が急にすっと消えた感じがしました。

◎局側

 映像では元気でいらっしゃいましたが、施設に入っておられて、コロナの中で外出の時間もかなり制限されていて、お話がそれほど聞けなかったところはありました。
 池見閑子さんに、実際にお会いできるというのがわかったのが、放送の2〜3週間前でした。
7月の半ばくらいまでは、会えない場合のエンディングをどうするかという所まで考えていました。会えないなりにも取材が厚かったので、演出の仕方はあると思っていましたが、最後の最後で、わずかな時間お会いできるという事になって、ああいう形になりました。

◎委員

 番組についての感想は、展開もうまくつくられているし、企画もおもしろかったし、発想もうまくいって、組み合わせもよく、引揚者の問題とか途中途中に入れて、非常にまとまっていました。ラッキーな展開も非常にあったという気がします。粘り強い取り組みによって、最後の番組の終結ができたのだろうと思いました。
 引揚者がいかに苦労されたのかとか、8月14日の番組としては、まさにタイムリーな番組だと思いました。いわゆる戦争の体験だけを語るのではなくて、ああいう形で戦争をもう一度振り返るというのは、なかなか意図してもできないと思います。そういう意味で、うまくまとめられたという気がしました。
 あの女性がどういう人生を歩んだのか、もう1つ番組をつくっていただいたら、おもしろいと思った次第です。

◎局側

 お時間をいただいて、もっといろんな話が聞けたらと思っていましたが、なかなかそうもいかず、また、機会があるのであれば、お話を伺って、別の物語ができるのではないかと思えるほど、深い人生を送られている方だと思います。

◎委員(レポート)

 ディレクターにこれほど会いたいと思う番組はなかったです。番組構想から完成まで、どれくらいの期間を要したのか。諦めかけたことはなかったのか。そもそも中古本を手にとって通信簿を見つけたのは本当のことか。(笑)この番組をつくられたディレクターご本人のこれまでの人生もお聞きしたいところです。
 番組後の感想を述べるとすれば、改めて今ある当たり前の幸せに感謝するということです。また、もう少し、80代、90代の方々に思いを馳せたいと思いました。
 一方、社会における多様な世代のつながりの難しさを痛感しました。人生の先輩方の価値観が全く違うのは当たり前で、その価値観にならざるを得なかった歴史背景など、今回改めて痛感しました。戦争中に生まれたり、多感な青春時代を過ごしてきた80代、90代の方々、その80年はあまりに激動であったと改めて推察しました。
 以上、率直な番組の視聴コメントです。すばらしい番組を拝見させていただき、ありがとうございました。

(2)報告事項

◎局側

 民放連放送基準が3年余りの検討を経て、この度改正されまして、2023年4月より施行されることとなりました。今回の改正は、社会の変化、人権意識の一層の高まりや価値観の多様化に対応することなどを目的とした大幅な見直しとなります。民放連放送基準は BS-TBS放送基準として準用されておりますので、放送法第6条第3項に基づき、番組審議会に諮問をお願いいたします。本日は、改正に至った経緯を説明させていただき、次回までに、資料をご検討いただきまして、12月の番組審議会で諮問・答申をいただきたいと存じます。

*BS-TBSでは、番組審議会委員のご意見を真摯に受け止め、今後の番組内容の向上に活かしていく所存です。