血液型の発見

"血液型"って何?

心臓から全身へ、生きている限り、絶え間なく流れ続ける血液。
その血液を語るときに登場する血液型。

檀和夫先生
A、B、AB、O、それぞれの違いとは一体何なのでしょうか?

血液の病気の専門家である、日本医科大学血液内科の檀和夫先生に伺いました。
檀先生:「赤血球の膜にくっ付いている、A型・B型・AB型の型物質というものが違います。それによって型が分かれているのです。」
2種類の型物質

血液中の赤血球。その赤血球の膜に付いているのが血液型を決める型物質。
その型物質には、AとBの2種類があります。
血液型

Aの型物質が付いている人の血液は、A型。
Bの型物質が付いていれば、B型、AとB、両方付いていればAB型になり、どちらも付いていないと、O型になるのです。
もし、違う血液型の血液を輸血すると・・・?

檀先生:「例えば、A型の人にB型の血液を輸血すると、B型の血液の中に入っているA型の型物質に対する抗体という物質があり、それと、その型物質が反応してしまい、赤血球同士が全部くっ付き合ってしまいます。
その結果、赤血球が壊れてしまいます。」

抗体というのは、身体の中に入ってきた異物を排除しようとする物質。
例えば、A型の人にB型の血液を輸血すると、抗体の働きによって、B型の赤血球同士がくっついてしまい、壊れてしまうのです。
その時、身体は・・・?

檀先生:「例えば、高熱が出たり、全身の関節痛が出てきたり、そして、呼吸困難が出てきたり、腎臓の働きが悪くなったりして、重篤な障害を及ぼします。」
青い試薬


そもそも、血液型は、どうやって調べるのでしょう?

血液型を知るには、青と黄色、2種類の試薬を使います。
A型の型物質を固める青い試薬と、B型の型物質を固める黄色い試薬。
黄色い試薬

 


血液加える

それぞれに、血液を1滴ずつ加えてみて、固まりができるかどうかを調べるのです。
A型

A型の血液なら、青い試薬だけに塊ができ、黄色い試薬には変化がありません。

B型

黄色い試薬だけに固まりができると、B型だということが分かります。
両方の試薬で固まりができれば、血液型はAB型です。
ところで、O型の血液は、どんな人にも輸血できると聞いたことはありませんか?これは本当なのでしょうか?

檀先生:「輸血は、同じ血液型同士で輸血するのが大原則ですが、時間が全くない緊急時に
一刻を争って輸血が必要であって、しかもその血液型が分かっていないという場合には、
O型の方の赤血球を使って、輸血をすることがあります。」

大怪我などで大量出血をして、一刻を争う場合には、O型の輸血を行う。
O型

O型の血液は、どの血液型とも反応を起こしにくいのです。
では、O型の血液を、赤血球を固める2種類の試薬に入れてみましょう。
ご覧のように、固まらないのがO型なのです。
ところで、血液型で、Rhプラスとかマイナスという言い方もしますが、これは何ですか?

檀先生:「Rh型というのは、ABO型とは別の、赤血球の膜に付いている血液の型物質のことです。
例えば、Rhマイナスの人に、以前にRhプラスの血液を輸血されたことがあると、そのRhプラスに対する抗体を持っていますから、その方にまた次にRhプラスの血液が輸血をされると、反応してしまって大きな副作用が出るのです。」
Rh型

Rh型というのは、赤血球の膜に付いている、ABO型とは別の種類の型物質のこと。
RhプラスA型

その物質が付いていれば、プラス。付いていなければ、マイナスということになります。
つまり、赤血球の膜に、Aの型物質とRhの型物質が付いている人の血液型は、RhプラスA型!
献血を記録する献血手帳にも、このように、ABO型とRh型は必ず記載されています。
ちなみに、日本人のほとんどは、このRhプラスだということです。
檀先生:「血液型が分かって初めて人から人への輸血が可能になりました。現在の医療は、
輸血なしには考えられませんので、医療全体が、輸血ができるようになって進歩
したということです。」
血液型が発見されたおかげで、安全な輸血ができるようになりました。
それが、医療の大きな進歩につながっているのです!

"血液型"はどうやって見つかった?


17世紀、イギリスの医学者・ウィリアム・ハーヴェイが、血液に関する画期的な新説を唱えました。
心臓を出た血液が、動脈から静脈を通り、再び心臓に戻る≠ニいう血液循環説。
この説が広まるにつれて、血液は全身を巡る栄養素であるという考えも広まっていきました。
当時ヨーロッパでは、「瀉血(しゃけつ)療法」という治療法が広く一般に浸透していました。
これは、病気の原因となる悪い血液を身体から抜けば、病気が治るという考えに基づいたものです。

そして、ハーヴェイの血液循環説以降、健康な動物の血液を入れて、病気を治そうという試みが始まりました。
これが、輸血の始まりです。
しかし、もちろん、うまくいくわけもなく、多くの患者の命が失われたため、輸血治療は禁止されました。    
1679年に書かれた、『輸血の起源と衰退について』という論文に、動物から人への輸血は良くない。また、人から人への輸血は、今後、検証すべきだと述べられています。

それから時を経ること200年。
人から人への輸血が、ようやく本格的に始まりました。
当時の輸血について、ダグラス・スター著:「血液の物語」に詳しく書かれています。
ポーランドの医師がまとめた統計によれば、1873年当時の輸血による死亡例は、なんと半数以上であったといいます。

そんな中、血液型が発見されたのは、1900年のオーストリアでした。
ウィーンの病理解剖学研究所の若き研究員・ラントシュタイナー。
彼は、血液のサンプルを混ぜ合わせると、時々、血液が固まってしまうことに気付きました。
早速、仲間の研究員や助手など、22人の血液を様々な組み合わせで混ぜ合わせてみました。
すると、血液には、3種類のタイプがあることが分かったのです!
混ぜても固まらない3種類の血液。
この瞬間、医学は大きな扉を開くことになりました!ABO型の血液型発見の瞬間です!!
さらにその後の研究で、同じ型の血液を使えば、輸血が安全に行えることが分かりました。

それから30年後、ラントシュタイナーは、血液型の発見により、ノーベル生理学医学賞を受賞。
当時の輸血は、輸血する側と、される側の静脈と静脈を直接つないで行っていました。

血液型の存在が発見され、人から人に血液を与えられるようになったことで、多くの命が救われるようになりました。


献血とは?


東京・新宿駅東口にある献血ルーム。
ここは、平日でも200人以上、休日には300人以上の人が訪れる、日本で最も多く血液が集まる献血ルームなのです。


献血の方法

献血には2種類の方法、「全血献血」と「成分献血」があります。

全血献血

「全血献血」というのは、文字通り、血液をそのまま献血すること。量は、200mlか、400mlです。針を刺してからかかる時間は、200mlで3分〜5分、400mlで6分〜8分。

集められた全血献血の血液は、外科手術で血液を補わなければいけない場合や、貧血の治療に使われます。

血液の成分

もう一つの「成分献血」とは、一体どんな献血なのでしょう?
血液には、血漿・血小板・赤血球などといった成分が含まれています。

成分採血装置

成分献血とは、このうち、血漿と血小板だけを献血してもらう方法です。
これが、成分採血装置。

血漿と血小板

血液中の血漿と血小板だけを取り分け、赤血球などは身体に戻します。献血にかかる時間は、40分〜60分。血漿と血小板を合わせて、およそ400mlになるように採血します。

こうして集められた成分献血の血液は、一体どのように使われるのでしょう?
檀先生:「現在、輸血療法は昔のように、血液全体を入れてしまうような乱暴なことはしないで、貧血の患者さんには、赤血球だけ輸血します。血小板が少ない患者さんには、血小板だけを輸血します。
例えば、有名な再生不良性貧血がありますが、この病気は血小板がなくなってしまうのです。
そして、例えば白血病の場合だと、血小板がなくなりますので、血小板の輸血が必要ということになります。」
献血ルームで集められた血液は、その後どこに運ばれるのでしょう?

東京都赤十字血液センターを訪ねました。

検査

献血された血液は、いったんここに集められるのです。都内はもちろん近郊から、毎日1000人から1500人に及ぶ提供者の血液が集まってきます。
運ばれた血液は、安全に輸血できる血液かどうかを調べるため、病気の有無など、詳しく検査を受けます。
冷蔵庫の血液

血液が保存されている冷蔵庫を見せてもらいました。
摂氏10度に保たれている、全血献血の血液用冷蔵庫では、血液型別に血液が並んでいました。
血液型別に整理されているのは、要請があればいつでもすぐに運び出せるようにしているため。
Rhマイナスの血液

日本人には少ないといわれるRhマイナス型の血液も保管されていました。
全血献血の血液は、採取してから21日間保存することができます。
続いて、成分献血で集めた血液のうち、血漿を保管している冷凍庫。
マイナス40度に保たれた部屋で、血漿は1年間保存することができます。
そして、白血病や再生不良性貧血の治療に必要な血小板は、摂氏20度から24度で保管され、わずか72時間しか持ちません。
新宿東口献血センター 所長・小泉雅由さん:「血液というのは、生きた細胞なので、毎日献血が必要なんです。」

善意の献血が、多くの命を救います。是非ご協力下さい!!

献血は非常に大事だと分かってはいましたが、なぜいつもピンチピンチって言っているのかなって思っていました。でも必要とされている方はたくさんいらっしゃるわけで、それを思うと献血は本当に大事だと強く思いました。
改めて、血液って大事なんだなと思いました。血液に使用期間があるなんて知りませんでした。