エコー検査はどんな使われ方をしている?


板橋中央総合病院副院長・田村勤先生
先生は循環器内科の医師として、これまで超音波エコーによる検査を元に、様々な心臓病に関する治療を行ってきました。

Q:超音波検査の優れているのは、どういう点でしょう?
田村先生:「身体にやさしい検査です。患者さんは痛くもかゆくもないので身体に害がありません。」

田村先生に実際の超音波による心臓エコー検査の様子を見せていただきました。
胸が苦しいなど、心臓の異常が疑われる患者さんは必ず心臓超音波室で検査を行います。
田村先生:「トランスデューサーと言って、その先から超音波が出て、それが跳ね返ってきた音波を受け取り、置き換えて像を作ります。超音波の検査で必ず必要なのが、ゼリーです。間に空気があるときれいに画像が撮れませんので、ジェルを付けます。第3肋間、第4肋間あたりにトランスデューサーを当てて心臓の像をとります。」
超音波エコー検査は、トランスデューサーと呼ばれる機械からこのように超音波を出します。
すると超音波が臓器に当たり、跳ね返ってきます。その跳ね返ってきた超音波から画像を作りだすのです。
しかし、心臓の上には内臓を守る肋骨があり、超音波を発射しても肋骨に邪魔され、すだれ越しのような画像になってしまいます。
そこで心臓用のエコーは、1本の超音波をスイングするように発射して、肋骨の間から心臓全体を捉える特別な仕組みになっています。

心臓の超音波エコーで左心室の映像を見ると、左心房から左心室へ血液を送る心臓の弁の動きが見えます。
患者の胸に当てた機械の向きを変えて、様々な角度から心臓の状態を検査します。
これは、ちょうど心臓の真下から弁の状態を探っているところ。
この心臓エコー検査では、心臓の大きさ、心臓の弁の動き、心臓を流れる血液の動き、この3点の正常・異常がチェック出来ます。

これは、心臓内の血液の流れの検査。
超音波が赤血球の動く方向を捉え、そこから心臓内の血液の流れに異常がないかを探ります。青い光は、心臓から全身へと送り出される血液。赤い光は全身から心臓に戻ってくる血液です。

超音波エコーで検査可能な臓器は、今や心臓だけではありません。
例えば頸動脈もエコー検査が可能です。
ご覧のように、血管を映し出す事が出来るのです。

一方、腹部超音波検査では、胆のうの中の状態がわかります。
"画面上に黒く映し出されているのが胆のう全体。そして、その中に白く映っているのは何と胆石です。

また、尿まで捉える事が出来ます。左右の尿管を通って、尿が腎臓へと移動して行く様子を見ることができます。
この検査は尿が出ない患者さんの異常がどこにあるのかを探る時などに行われます。

超音波エコー。それは、空気が充満している肺以外、ほとんどの臓器の状態を知る事が出来る検査です。

日本人によるエコー検査の実用化


和賀井敏夫は、脳腫瘍の研究に没頭していました。
当時、今から50年以上も前、脳腫瘍の検査で主流だったのは、脳に空気を入れ、X線撮影をする方法です。
しかし、この方法では空気を入れる際、患者が激しい痛みを感じる上に大きな腫瘍しか映すことが出来ませんでした。
そのため、脳腫瘍と分かった時には手遅れの場合が多く、10人に1人の命しか救えなかったのです。
医療技術の限界を前に、意気消沈するしかない和賀井。

しかしここで転機が訪れます。
彼はある時、故郷・宮城の港で、損傷を受けた船を検査している現場に出会います。
それは船体の外から超音波を使い、内側にある故障個所を発見していたのです。
その様子を目にした和賀井は思いました。
「この方法を脳腫瘍の発見にも使えないだろうか?」

和賀井は当時、潜水艦用の超音波装置を作っていた日本無線にこんな話を持ちかけます。
「これまで、軍事用にしか使われていなかった超音波を、是非、医療用に開発してもらえないだろうか。」
日本無線の技術総責任者・中島茂は和賀井の申し出を快く引き受けてくれました。
そしてすぐ様、2人は脳の標本に超音波を当てる実験に乗り出しました。
すると、脳の超音波の波形が見事に映し出されたのです!

この結果を受け、和賀井は実際に脳腫瘍の疑いがある患者の脳に超音波を当ててみると・・
今度は脳腫瘍特有のパターンを発見、すぐに緊急手術を行い、患者の一命を取り留めるのに成功します!

この結果を元に、和賀井はさらに研究を続けます。
「脳腫瘍の発見には成功した。
では今度は、止まることなく動き続ける心臓のその動きをとらえることはできないだろうか?」
和賀井の熱意に、中島は協力を惜しまず、自宅を担保にしてまで多額の開発費を捻出。
新しい超音波検査装置の開発に取り掛かります。

そして1974年4月。
和賀井が最初に提案をしてから、実に24年もの長い歳月を経て、ついに超音波エコー診断機が完成。
心臓の状態を、画面にクッキリと映し出す事に成功しました!
こうして、医者と技術者、畑違いの2人が手を取り合い、新たに作り出したエコーはそれ以降、多くの人々の命を救う事になるのです。

エコー検査によって早期発見が可能になった病気


超音波エコー検査によって早期発見が可能となった病気には、どのようなものがあるのでしょう?

まず、検査で最も超音波エコーを使う事の多い心臓の場合。
エコー検査によって発見が容易になった病気といえば、まず第一に、心臓弁膜症です。
心臓弁膜症では、まず心臓の中にある弁に異常が発生します。
そこでエコーを使い、弁の動きの異常をチェックします。
さらに、弁の異常が原因となって心臓内の血流に異常が起きる事もあるため、血流もチェックします。
心臓弁膜症にかかると、血流が滞って心室内に血液の塊が出来やすくなったり、さらに肺に水が溜まったりもします。
心臓弁膜症は症状が進めば、心不全を起こし、命に関わる事にもなりかねません。
田村先生:「心臓弁膜症は、超音波エコー検査のみで診断が可能です。入院後にどのように手術をするのかも、超音波エコー検査を診て決めます。」

次に、心臓病以外では、どのような病気の発見が可能なのでしょう?
例えば、動脈硬化の発見に役立つのが頸動脈エコー検査。
トランスデューサーを頸動脈にそって動かし検査を行います。左右の頸動脈の状態をゆっくりとエコーで探って行きます。
すると・・・
動脈の内側に盛り上がった所があるのを発見!
動脈硬化により、血栓が付着し、血管の一部を盛り上げているのです。
こうして頸動脈から、全身の動脈硬化の進行具合を推測するのです。

超音波以外では検査が難しい、胆のう。
その胆のうを検査すると、胆石の有無が確認出来ます。
胆石とは、食物の脂肪分を分解する胆汁が固まってしまったものです。
胆のうの出口に引っかかると、激しい痛みの出る胆石ですが、エコー検査を使えば胆の中の石の状態が、その大きさから個数までクッキリと映し出せるのです。

さらに、「沈黙の臓器」と呼ばれる肝臓では、肝臓に中性脂肪の溜まる脂肪肝の早期発見にエコーが役立っています。
肝臓には多量の血液が出入りします。その血液の流れは、赤と青で画面に表示されます。この様子から肝機能が正常かどうかをチェックできます。
脂肪肝かどうかは映し出された画像の濃淡から判断します。中性脂肪が溜まり、脂肪肝を起こしていれば、肝臓が白くキラキラと輝いて映し出されるのです。

さらに、エコー検査ではがんを見つけることもできます。
肝臓や腎臓、乳房に、もし、がんがあると、その部分は黒い影として映し出されます。

その他、下腹部エコーによる検査では、女性の場合、子宮、卵巣の異常、男性の場合は、前立腺の異常を発見する事が出来ます。

このように、頭から下半身まで、様々な臓器系の病気発見に今や超音波エコー検査は欠かせない存在となっているのです。

おくすりゼミナール『カプセル剤』


今回はカプセルのクスリに関するお話です。
東京都学校薬剤師会 会長・田中俊昭さんに伺いました。
田中さんが取り出したカプセル剤。
これが一体何でできているか、皆さんはご存知でしょうか?

その主な成分とはゼラチン。
手の平の温度でカプセルが溶けないようにするためなんです。

しかし、ここで注意することがあります。
ゼラチンで作られているカプセル剤は、水に濡れると皮膚や粘膜にくっつきやすい特性があるのです!
そのため、服用する時、水の量が足りないと食道などに引っかかり、炎症を起こしてしまう恐れがあります。
カプセル剤を飲むときは、充分な量の水やお湯でユックリ飲むように心がけましょう。

それではカプセルの中を見てみましょう。
カプセル剤の模型を見るといろんな色の薬が入っています。
田中さん:「カプセルにはこのように、胃で働いたり腸で働いたり、いろいろな成分の薬が入っています。」
カプセル剤は、薬の溶け方を調節して効き目を持続させたり、クスリの苦味を軽減させるといった働きをしているのです。
田中さん:「カプセルは中身だけを飲んだりすることのないように、きちんと飲んで下さい。」

和賀井先生と中島さんのエコー検査を開発するための熱意に感動しました。
乳がんが最近増えているということなので、早期発見できるように年齢に関係なく、若い人でもエコー検査を受けた方が良いですね。