日本における水虫の歴史


今や、かゆ〜い水虫に悩まされている人は日本全国で、
何と2100万人!!

皆さんも経験はありませんか?
実に、5人に1人が水虫と言われています!

でも どうして「水虫」という名前になったのでしょうか?

実は江戸時代の日本では、水虫は水田で働く農民や、川に入って洗濯などをする女性の足に出来る病気でした。
そこで当時の人は、正体不明の虫がたかり、痒くなるものと考え、水虫という名前をつけたのです。

文献に初めて「水虫」の名が登場するのも江戸時代の、式亭三馬の書いた戯作「浮世風呂」です。
そこには・・・「糠の脂をとって水虫の薬にする」と、治療法まで書かれています。
同じ頃の医学書、「本朝医談」にも「水虫松脂を焼きて…」と治療法が記されていました。

もっとも、実際に水虫の患者が増え始めるのは、日本人が靴を履くようになる明治になってからでした。
とはいえ、まだ庶民の大多数は下駄や草履の生活。靴で足が蒸れて、水虫が大流行するまでには至りませんでした。

では、多くの日本人がいつ頃から、水虫に悩まされるようになったのかというと…

それは昭和初期!水虫が爆発的に大流行します。
その原因は…何と軍隊でした。
下駄や草履で暮らしていた人も、軍隊では靴の着用が義務。

しかも、一日中履いたままの訓練ですから、水虫になるのも当然!
その流行り方は凄まじく、当時、軍の出していた雑誌「軍医団雑誌」にも「軍隊における白癬の研究」が掲載されるほど大問題となったのです。
水虫の原因になる菌、白癬菌の写真も掲載されています。

戦後、軍隊がなくなると共に水虫の流行は一度収まりますが、昭和30年代半ば、第二次水虫大流行勃発!
その原因は…ナイロン製の靴下でした。

昭和30年代半ば、高度成長期を迎えると共にナイロン製の靴下が、小学生から社会人にまで大流行!
何と、男性用靴下の95%がナイロン製になりました。
当時のナイロンの靴下は通気性が悪かったため、靴による足の蒸れに拍車をかける事になってしまったのです。

白癬菌(はくせんきん)とは


水虫の菌とは、一体どのような菌なのでしょうか?
帝京大学皮膚科・渡辺晋一先生

渡辺先生:「水虫の菌はケラチンを栄養にして生きているカビです。皮膚の垢となって落ちる所にケラチンが豊富にあるため、水虫が寄生するのです。」

水虫の原因となる細菌、白癬菌。この白癬菌はカビの一種です。顕微鏡で見ると、糸のような細長い形をしているのが特徴。高温多湿な環境を好み、栄養源になるケラチンががあれば、どんどん増殖していきます。

白癬菌は、皮膚表面にある角質層という細胞の層に感染すると・・
角質層の死んだ細胞・ケラチンを栄養にして増殖を繰り返し、次第に角質層の深い所へと侵入していきます。


実際、感染すると、どんな状態になるのでしょうか?
足の裏に出来た水虫の場合、足の裏全体がカサカサに乾燥して、皮膚の皺もかなり白くなります。炎症が起きた結果、小さな水疱が出来ることもあります。 足の指の間に出来た水虫の場合、指の股の部分の皮膚がふやけボロボロになり、悪化するとかゆみどころか痛みまで出てきます。

でもなぜ、水虫はかゆみが出るのでしょうか?

渡辺先生:「白癬菌は角層に住んでいるのですが、角層に住んでいるだけではかゆみを起こしません。菌が増殖して角質層の下の生きている表皮細胞に接触すると、皮膚に炎症が起こり、その結果かゆくなるのです。」

人の皮膚は上から、角質層・顆粒層(かりゅうそう)・有棘層(ゆうきょくそう)の三層になっています。
白癬菌が角質層にいるだけではかゆみは起こりません。増殖して、その下の細胞・顆粒層に達すると炎症を起こします。この炎症が、かゆみの原因となるのです。

実はこの白癬菌、足にだけ感染するわけではありません!

渡辺先生:「水虫の菌は、ケラチンがある所ならどこにでも繁殖します。皮膚、髪の毛、爪だったらどこにでも繁殖するのです。」

感染した場所が違うと、呼び名が違ってきます。
足と手に出来た場合が水虫。髪の毛に感染するとシラクモ。脇の下やお腹の場合はタムシ。股に出来るとインキンタムシというのです。

渡辺先生:「足を乾燥させて、長時間靴を履かないようにして水虫を防ぎましょう。」

水虫の薬


水虫の薬は、白癬菌を退治して水虫を治します。
薬を水虫のできたところに塗ると、皮膚の表面にいる菌はもちろん、角質層にいる菌も殺菌、退治します。
その成分としては、抗菌作用のあるものが使われています。

例えば、塩酸アモロルフィンなど。
白癬菌は角質層の中で、ケラチンを栄養に増殖を繰り返し、次第に皮膚の奥深くまで侵入します。

しかし、塩酸アモロルフィンは、この増殖そのものをブロックして、白癬菌を退治します。
しかも、塩酸アモロルフィンは角質層の奥にまで浸透し、水虫を治します。

薬のプロ〜薬剤師さんに聞いてみよう〜


水虫の薬といっても液状タイプもあれば、クリーム状、スプレータイプと種類は様々。

Q:どのように選べば良いのでしょう?
上村さん:「水虫の部分が乾いているとか、ジュクジュクしているなど、水虫の状態で使い分けます。水虫の部分に亀裂がある時は、液体はしみるのでクリーム剤や軟膏を使うことがあります。」

Q:薬は、一日の中で、いつ塗るのがベストですか?
上村さん:「お風呂上りが良いでしょう。古い角質が取れて、角質層がちょうどやわらかくなっていますので、薬が染み込みやすい状態になっているからです。」

Q:薬を使う時、何か注意する事はありますか?
上村さん:「毎年、水虫を繰り返す人は冬場も塗り続けましょう。とにかく根気強く薬を塗り続けることが大切です。1〜2週間で治ったからと思って、薬を塗るのをやめてしまうとすぐ再発してしまいます。」

水虫を治すためのキーワード


水虫を完治させるためのキーワードがあります。それは、“かきくけこ”です。

「水虫はもともと田んぼや洗濯など水を使う所から広まったので“水虫”という名前になったんですね。
暑い砂を歩けばいいとか、日光に当てて乾燥させたらいいんじゃないかなど民間療法を信じていたのですが、やっぱり薬ですね!