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2010年7月10日放送

ユーロ円は安値圏で安定した動きを見せ、7月8日には6月21日以来の高値をつけた。またユーロドルは7月8日に5月12日以来の高値をつけている。8日のEBCB政策金利発表後の定例会見で、トリシェ総裁が「多くのデータは二番底を裏付けていない」「ユーロ圏の今年後半は、前半よりも強いだろう」と、ユーロ圏の景気に関して比較的強気な見方を示し、これがユーロ上昇を促した場面もあった。

ただ、一時的に買い戻しが入っても、それはショートカバーに過ぎないだろう。欧州はまだまだ問題が山積みだからだ。最近、特に市場の関心を集めているのが、7日に伝わった資産査定(ストレステスト)。これは欧州連合(EU)域内の銀行の健全性を調べることを目的とし、91行を対象(欧州銀行セクターの65%を網羅)に、経営環境の悪化に耐える十分な自己資本を各銀行が備えているかを点検するものだ。

このストレステストでは、大手25行については深刻な問題は指摘されないと見られている。しかし、ドイツの州立銀行やスペインの貯蓄銀行「カハ」など二番手、三番手グループの銀行は、バランスシートに深刻な問題があると、一部の通信社が伝えている。加えて、一部のアナリストは、ギリシャやスペイン国債で想定される損失を当局は過小評価している、とも指摘している。

ユーロ相場は、少し落ち着きを取り戻しているように見えるが、これは嵐の前の静けさかもしれず、今後も欧州の問題は一筋縄にはいかないだろう。ストレステストに絡んだ報道で、相場が荒れる可能性もある。23日前後と言われているストレステストの結果発表を前に、市場の不安感は募る。

ユーロ円は買い戻しが進んでいるが、ユーロを買い進めるポジティブな材料が出てきたわけではなく、ストレステストの結果発表を前に不透明感が漂う。徐々に上値が重くなるだろう。ドル円は、週後半に上昇する場面があったものの、これまで売り込まれていた反動の可能性が高く、ユーロ円同様に買い戻しは限定的なものに留まりそうだ。

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