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2010年5月15日放送

EU=欧州連合は日本時間の10日未明、緊急財務相理事会を開催し、ギリシャのような危機に陥った加盟国を救済する総額7500億ユーロ(約87兆円)にのぼる緊急対策「欧州金融安定化メカニズム」を発表した。まず、EU加盟27カ国の資金繰りが危機に瀕した際に支援を行う基金を創設。600億ユーロ(日本円で約7兆円)の融資枠を設定した。更に、ユーロを採用しているEU諸国16カ国は3年間の期限付きで特定目的事業体を設立。債券を発行して資金を調達し、危機に陥った国に最大4400億ユーロ(約52兆円)融資することとした。その債券はユーロ圏各国が償還を保証するものとし、低利での資金調達を可能にしている。

この他、欧州の債券市場の動揺を抑えるため、ユーロ圏諸国の中央銀行が、国債の買い取りを始めたことも明らかになっている。金融当局が介入の姿勢を示すことで、市場の安定化を目指そうというものだ。

また、欧米を中心に銀行間でドル資金を融通する短期金融市場が、目詰まりを起こし始めていることから、ドル資金を供給する金融危機対策を再開した。(通貨スワップ協定の再締結)

今回の対応は、非常に迅速で評価できるものと言える。ただ、これらの対策は、あくまでも対処療法。今後は、ギリシャやユーロ圏の他国が、財政赤字を削減できるかに焦点が移っていく。これができなければ、再び支援が必要になると見られるだけでなく、解決が困難との見方が広がると、金融市場が再び大きく荒れる局面がくる可能性もある。

また、格付機関が再び格付けを引き下げることもありえ、そうなれば、先週紹介したような金融機関からの欧州債の売りなども出てくるだろう。ユーロが再び下げるリスクも出てくる。

今後は5月19日にギリシャ国債の償還が控えている。これはEUやIMFの融資を受けて無事に乗りきれると見られている。問題は、6月に予定されているギリシャ財政再建の進捗チェック。ここでギリシャ再建がやはり難しいと見られてしまうと、ユーロが売られ、金融市場は再び荒れ模様になるかもしれない。

EUとIMFの対策が打たれたものの、欧州の状況に大きな変化はないため、ユーロは引き続き売られやすい地合いになっている。市場の関心がユーロに向かっているため、ドル円は蚊帳の外。方向感が定まらない。

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