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2008年7月5日放送

7月3日、ECB=欧州中央銀行は、政策金利を0.25引き上げ4.25%とすることを決定。昨年の6月以降およそ1年ぶりの利上げに踏み切った。ただ今回は、事前に利上げが確実視されていたために、会見でのトリシェ総裁の発言内容に注目が集まった。そのトリシェ総裁は「インフレが欧州市民の最大の懸念」とインフレの進行に警戒を示しながらも、先行きの金融政策に関しては「わたしにはバイアスはない」と今後の状況次第であることを強調。この発言を受けて早期利上げ期待が大きく後退、ユーロは対ドル、対円で下落している。

今回、ECBが利上げを決定した背景には、ユーロ圏内でのインフレの進行に歯止めがかからないことがある。昨年の9月以降、ユーロ圏でも資源価格の高騰などからインフレ率が徐々に上昇してきている。

先日発表されたユーロ圏の消費者物価指数5月分は3.7%とECBが適正水準と見ている2%を大きく上回った。今回の利上げは、こうした状況に対応するものだ。

また、このところドル安、特に対ユーロでのドル安が原油価格の上昇をもたらしているという意見も聞かれる。こうした見方に配慮するため今後の利上げに関しての言及を避けた、という面もあったのかもしれない。しかし、対ユーロでのドル安傾向がある程度抑えられたとしても、原油価格の上昇が止まるという保証はどこにもない。

今年に入ってからの動きを見ると、必ずしも2つの関係は密接であるとは言い切れないからだ。原油価格の上昇が止まらなければ、ユーロ圏のインフレ率が再び上昇し、ECBは再利上げを実施するという可能性も十分ある。

トリシェECB総裁のハト派発言でユーロは一時的に下落したものの、金利先高感は依然として残っており、底堅い展開が続く。ドル相場は今のところ方向感がなくもみ合っている。アメリカの株価の動向次第であるが、現状の予想を超えるような事象やニュースが出てこない限り、どちらかに相場が動いていくことはないだろう。アメリカの株価の動向に注目しておきたい。

来週の予想レンジはドル円105円から108円、ユーロ円は165円-170円程度と予想する。

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