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2008年5月24日放送

今週ニューヨークの原油先物価格が、一時、1バレル=135ドルまで上昇し、史上最高値を更新した。中国経済の急成長などによる需要の急増が背景にあるのは言うまでもない。OPECもようやく増産を検討する姿勢を見せ始めているが、市場の見方は冷ややかで上昇基調に変化はみられない。

原油価格の上昇により、原油の最大消費国である米国からの資金流出が増加するために、ドルに下落圧力がかかる。特に産油国である中東やロシアが受け取ったドルをユーロに転換する動きを見ているために、原油価格の上昇に合わせる形でユーロが対ドルで堅調に推移するという相関関係が見られる。

急騰しているのは原油価格ばかりではない。その他の資源価格はもちろんのこと、穀物などの価格も急騰している。国内でもガソリン価格、食品価格などが急上昇。消費者物価指数も前年同月比1%程度まで上昇してきているが、これは日本ばかりではなく世界全体で起きている現象である。

先進国諸国では3%台から4%台という高水準でインフレ率が高止まりし、中央銀行が目標とする物価水準を遥かに上回る状態が続いている。一方で、世界経済全体が減速するリスクも抱えているために、各国の中央銀行は非常に難しい金融政策の判断を迫られている。

また、インフレ率の上昇は先進国より新興国のほうが深刻だ。中国でも消費者物価指数が8%台で高止まりしている。地震の影響でインフレが更に悪化するとの声も聞かれ、北京オリンピックを控えて中国政府は苦境に陥っている。その他の新興国でも看過できないほどの高インフレの上昇が続いている。

特にベトナムではインフレ率が20%近くまで上昇し、昨年まで非常に強気であったベトナム株式市場は、今年に入って連日下落を続け、代表的な株式指数であるVN指数は昨年の高値から60%以上の下落となっている。

ドル円相場は米国の景気減速によるドル安圧力と、金利差を反映した円安圧力の綱引きとなっているために、方向感が出にくい状況となっている。また、その他の通貨に対しては、ドル安と円安が同時進行し緩やかな円安基調が続いている。こうした環境は、当面続く可能性が高いと見ている。

来週の予想レンジはドル円は102円-106円、ユーロ円は161円-166円を想定している。

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