榊原・嶌のグローバルナビ


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第387回 2008年6月14日 放送

夏の避暑地の定番、長野県・軽井沢に、28万坪という広大な敷地面積を誇るリゾート施設「星のや 軽井沢」があります。90年以上の歴史を持つ老舗温泉旅館「星野温泉」を改築して作られたリゾートで、2005年のオープン以来、稼働率は平均で80%という人気ぶりです。

その秘密は“もうひとつの日本、谷の集落に滞在”というコンセプト。日常では味わえない空間を作り出しているのです。施設を囲む緑豊かな自然に美しい棚田。中央には川が流れ、その川沿いに離れ家が一軒、一軒並んでいます。そして日が暮れる頃には、水行灯が流れていくのです。客室の広さは44㎡から。そこには時を刻む時計やテレビなどはありません。これも普段の暮らしとは違う何かを感じてもらうための演出です。

宿泊料金は一人一泊2万2千からですが、この料金には食事は含まれていません。星のやは「泊食分離」という宿泊と食事を分けたスタイルを取っていて、宿泊客は食事をいつどこで取るかを選ぶことが出来ます。アンケートをとったところ、食事を取る時間や内容が限定される一般的な日本旅館のスタイルに不満の声が多かったそうです。星のやは、日本的な温泉旅館の魅力を追求しながらも、今の消費者の嗜好にも対応。目指しているのは、海外の一流リゾートと比べても遜色のないサービスです。

そんな星のやにはもう一つの顔があります。それは、環境を追求するエコリゾートとしての星のやです。施設内には水力発電所があり電気を起こしています。また地下400メートルのパイプに水を循環させ、そこから地中熱を取り出し、冷暖房や給湯に利用しています。星のやは石油に頼ることなく水力と地中熱というクリーンエネルギーで必要なエネルギーの75%を自給自足しているのです。また、星のやでは、ゴミを33種類に分別。リサイクル率を高め、廃棄ゴミをゼロに近づけようとしています。宿泊客が使った櫛や石鹸も分別回収し、契約工場へ送ってその8割をリサイクル。また、生ゴミは近所の契約農家に持っていき、牛の糞と混ぜて堆肥作りに役立てています。その堆肥で作られた野菜を星野リゾートが購入し、レストランで提供するという仕組みです。

なぜここまでエコにこだわるのでしょうか。それは、自然を活かし、環境への負荷をかけずにリゾートを運営する能力こそが、これからのリゾートの運営会社の競争力だと考えているからです。

島根県の玉造温泉にある「華仙亭 有楽」。昨年8月にリニューアルオープンした老舗の温泉旅館ですが、その総支配人を星野リゾートの社員が務めています。有楽は経営難から2007年に外資系証券会社に買収され、その運営が星野リゾートに委託されました。実は、星野リゾートは、2001年からリゾートや旅館の再生ビジネスにも取り組んでいます。山梨の「リゾナーレ」や「磐梯山温泉ホテル」は自ら買収し黒字化に成功。2005年からは他社が買収した案件の運営を受託。再生の現場へ人材を派遣しています。

星野リゾートが掲げるビジョンは「リゾート運営の達人」です。その達人という意味は環境への負荷を最小限に留めながら、同時に顧客満足と収益を生み出すこと。リゾート=自然破壊というイメージを払拭するだけでなく、日本の美しい自然を守ることによって海外からの観光客も集めることが出来る、世界レベルのリゾートを作りたいと星野社長は考えています。それは、日本が観光大国になるための戦略であるのかもしれません。

「コーネル大学で一番学んだことは、日本の旅館の見直したこと
 日本の魅力に立脚しないといけないと気付いた 」


どうも、世の中の成功者のキーワードは「環境」のようです。先週のスーパーホテルも今週の星野リゾートも、かたやビジネスホテルで、かたやリゾートホテル。利用のされ方はそれぞれ違いますが、共に環境を重要視しています。

星野リゾートでは、ごみを33通りに分別。一般家庭でこれをしてしまうと、台所は調理スペースよりもゴミ箱で溢れかえってしまいますよね。しかし、効率よくリサイクルをするためには、きめ細かい分別が必要なのです。原油や食糧価格の高騰のニュースを毎日のように耳にし、私自身もその不穏な足音を食卓で感じるようになり、無駄を無くすこと、省エネ省資源が求められていることはよく分かります。ですから、家庭でももっと細かく分別を、と言われれば、単に面倒だからと言って反対は出来ません。しかし30通りに、なんていうことになったら大変!どうしましょう…

さて、今日のゲスト、星野社長は、大学ではアイスホッケー部。アメリカにも留学され、ホテル学科で有名なコーネル大学へ行かれたそうです。若々しく、自信に満ちていて、ご自身も大変なエコ志向な方のようで、都内の移動はいつも自転車だそうです。そのせいかとても日に焼けていらっしゃいました。 そんな星野さんが度々、放送中におっしゃっていたのが「日本は魅力がある」ということ。海外から訪れる旅行者の数は世界で30位ですが、日本の良さを星野さんのように上手に表現できるようになれば、旅行者NO.1のフランスなんか抜いてしまうかもしれませんね。

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