榊原・嶌のグローバルナビ


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第373回 2008年3月8日 放送

アラビア半島・東部に位置するアラブ首長国連邦のドバイ…。ここはいま、驚異的なスピードで経済が発展し空前の建設ラッシュが起こっています。埼玉県ほどの広さしかないこのドバイに、世界中の建設用クレーンの、およそ3割が集結しているとも言われ、世界一を謳ったプロジェクトも目白押しです。

例えば、高さ500Mを超えるブルジュ\ドバイ。「ドバイの塔」という名前の通り、まだ建設途中にも関わらず、昨年、世界一の高さになりました。最終的には800M以上になる計画で、東京タワーの二倍以上の高さです。しかし、このビルさえも超える、高さ1000M、東京タワーの3倍という究極の超高層ビルの建設がすでに始まっているとか…。

ドバイは、20世紀初頭からヨーロッパとアジアを結ぶ中継貿易の港として知られるようになり、1966年には、沖合で油田も発見されました。それでも、20年程前までは、砂漠の中の小さな町という佇まいでした。しかし、今や世界中から集まったヒトとカネによって大変貌を遂げました。原油の枯渇に備え、早々に「脱石油」を打ち出し、金融、観光、物流といった分野にシフト。政府関係者は「経済の石油依存度は6~8%。多角化による経済成長はしばらく続くだろう」と語り、2010年までに石油依存度をゼロにするという目標を掲げています。

石油に頼らず、貿易と投資で生きていく…。そのために、外国企業に魅力的なビジネス環境を整備する、というのがドバイの戦略。ただ、常識ではまずビジネスを成立させて、それから施設を作りますが、ドバイでは先に施設を作ります。しかも必要な資金は外国資本に大きく依存していて、言わば『軒貸し経済』を進めてきたのです。経済特区では関税や法人税がないなど、特別な優遇措置を設け、今では140カ国から6000社以上の企業が集まってきています。日本からもソニーや日産など、100社以上がすでに進出。湾岸諸国やヨーロッパなどへの輸送拠点にしています。

しかし、ドバイの繁栄の陰には、深刻な現実もあります。ドバイに暮らす人々は、およそ140万人。しかし、その8割が外国人でインドなど南アジアからの出稼ぎ労働者たちが多数を占めているのです。急速な経済発展に伴い、大量の労働力が必要になりました。砂漠が国の大部分を占め、もともと人口が少ないため、必要な労働力は外国に頼るしかなかったのです。

夏場には気温が50度を超えるという苛酷な環境の中、1日12時間、週6日働いても手にする賃金はほんのわずか…。更に、残業代の未払いや逃亡防止のためにパスポートを取り上げるケースも…。こうした外国人労働者に対する劣悪な待遇が問題となっているのです。政府から手厚い保護を受けられる「ドバイ国民」の就労意欲の低さも問題になっています。ドバイの発展は、激しい格差の上に成り立っているとも言えるのです。

「ムハンマド首長の強力なリーダーシップが続く限り今後もドバイは成長する。しかし反面、健康問題など生じれば重大なリスクになりえる」


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