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  #4 2007年12月2日放送
 
「秘密のキャッチボール」

フリーライターの茂木雅人(34)が、あるマンションへやってきた。家の中から、松野庄太(10)が雅人を見ている。庄太の母、松野百合子(36)の元夫が帰国したため、3人でのドライブが中止になってしまった。庄太に会うため帰国したと考えた百合子は、会わすわけにはいかないと、一人で元夫に会いに行くことにする。徹夜明けで寝不足の雅人は帰ろうとするが、庄太との留守番を頼まれてしまう。
初めて二人きりになることに不安を感じる雅人であったが、食事や百合子との編集部での出会いなどを話すうちに打ち解けていく。そんな中、出入り禁止となっていた元夫の部屋でグローブを見つけた雅人は、キャッチボールをしようと庄太を連れ出す。公園でキャッチボールをはじめた二人だったが、近所の住民にキャッチボールは禁止だと注意されてしまう。悪口を言い返した二人は、ダッシュで逃げるのだが、その際、つまづいた庄太は腹部を打ってしまう。心配する雅人をよそに平静を装う庄太だったが、おぶられて家につくと、額に脂汗をかいて苦しんでいた。慌てて救急車を手配した雅人だったが・・・

今回は外で遊ぶのが苦手な子供と、子供と接する機会が少ないままに大人になってしまった男性が二人きりで過ごすことになった、ある日曜日の話です。小児外科のなかでも転倒やスポーツの怪我、交通事故などで多い小児外傷。今回のケースである小児肝損傷の治療法を解説していきます。

 


 
今日のポイント

Q.肝損傷とは?
肝臓に強い力が加わり、肝臓が傷つく事で、急性期には肝臓からの出血が一番の問題になります。ナイフや銃弾による鋭的外傷による事もありますが、ほとんどは打撲などの鈍的外傷により起こります。肝臓が割れてしまう重症から、表面が傷ついてしまう軽症まで状態は様々です。

・I型 肝皮膜下損傷 
 肝臓表面の膜を破らない損傷
・II型 表在性損傷 
  皮膜が破れ、肝臓の深さ3cm以内の損傷
・III型 深在性損傷
  肝臓の深さ3cm以上の深部に達する損傷

鈍的外傷による場合は傷口から出血するなど分かりやすい状況がないため、子供の場合はそばにいる大人の観察が特に重要となります。

Q.治療法は?
以前はショック状態になるまでわからず、緊急手術になる事もありましたが、近年、超音波やCTなど画像機器が発達し、早期に発見できるようになったため、画像診断で経過を観察して手術せずに済むことも多くなりました。いずれにしても入院の上、厳重な観察が必要で、肝臓からの出血がとまらない、また血圧が安定しない場合などは、開腹して出血を止めます。また肝臓内の血管にカテーテルを通し、塞栓物質で出血を止める処置をすることもあります。

Q.対処法は?
動いたりすると損傷がより重篤になることがあるので、楽な体位で寝かしましょう。むやみに動かすことは避けてください。
子供は自分の症状をうまく表現できないので、ご家族が普段と違う様子(冷や汗、あくびなど)を注意深く見てください。

Q.小児外傷の特徴
子供は大人に比べて重心が高い位置にあるため転倒しやすく、頭をぶつけたり、ケガをしやすい。それに加え、子供は目的に対して一直線に行動するため、事故にあいやすいと言えます。

Q.小児外科・外科の違い
子供と大人は臓器の作り方をはじめ、大きな違いがあります。小児の急病は早く回復したり、悪くなったりするので、処置が遅れることがないよう、常に先手を打つことが必要となります。

Q.事故を未然に防ぐには?
大人と子供の目線が違います。子供たちの目の高さでうちの中を歩いてみることが必要です。机の角、ちゃぶ台の小さな出っ張りなど、子供への脅威となっているところを把握して下さい。最近はこれを予防救急と呼んでいます。

Q.小児救急のシステムとは?
初期救急=入院を必要としない軽症者
二次救急=入院や手術を必要とする救急・重症患者
三次救急=生命の危機が切迫している重篤患者
上記の3つの状態に分けられます。トリアージ(緊急度や重症度に応じて処置や搬送を行うために治療優先順位を決定)し、適切な処置が行うことができる搬送先を決定します。

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