bs-i トップへ
大学病院救急救命室 Vital Signsトップ 番組概要 ストーリーテラー スタッフ 今週のVital Signs バックナンバー
  #3 2007年11月25日放送
 
「拝啓、ジョン・レノン世代様」

ある楽器店で熱心にギターを覗き込んでいる泉河武夫(56)。そのギターはジョン・レノンが使っていたものに近いモデルで、店員に勧められた武夫は悩んでいた。そんな中、部下の不始末を処理するため得意先に向かうことになる。事なきを得た二人はそのまま飲みに行くことになった。酔った武夫はバンドに熱中していた大学時代や、ジョン・レノンの死について熱く語るのだった。家に帰ると、妻の夏江(54)が起きてきたが武夫は目も合わさない。エキストラのアルバイトをしている夏江が気にいらないようだ。結局口論となり、武夫は自分の部屋に消えていった。翌日、お互いのことを分かろうとしなくなった理由を考え始めた武夫は、大学時代にそれぞれ音楽、演劇に熱中し、合間を縫って会っていたことを懐かしむ。そして酒に酔い、苦しそうに歩道橋を登る中、大学の時、夏江にカシミヤのコートを買う約束を果たしていないことを思い出す。武夫はギターではなくコートを買う決意をした矢先に足を踏み外し、階段から転落。救急車で運ばれた武夫は肋骨を骨折し、中心性脊髄損傷で首に損傷があるらしい。武夫の治療が始まった。

いつまでも若いつもりでいても、ちょっとした不注意から生死にかかわる病気や怪我を招いてしまうことがあります。今回はそんなジョン・レノン世代の方々におくる物語です。年々迫り来る“階段”の恐怖・・・。階段は登る時より降りる時の方が危険度が増します。中心性脊髄損傷の解説や突然のケガへの対応などを、ドラマを通して解説していきます。

 


 
今日のポイント

Q.中心性脊髄損傷とは?
脊髄は脳からの運動の指令を手足に伝えたり、手足からの感覚信号を脳に伝えたりするための背骨の中を走る太いケーブルです。そのケーブルの中心部だけが損傷した状態で、首などが極端に押し曲げられた時に圧迫されるなどして起こります。首の辺りで中心性脊髄損傷になった場合、足の動きは比較的保たれる一方、手の動きや感覚が悪くなります。感覚の中でも触った感覚(触覚)は保たれますが、熱い、冷たいといった温度に関する感覚と痛みに対する感覚(温痛覚)は脊髄の中心部を通るため障害されてしまいます。すなわち「やかんに触ったのはわかるが熱くない」「針を刺したのはわかるが痛くない」という状態になってしまいます。

Q.治療法は?
脊髄が圧迫されるような大きな血の塊が周囲にある場合は手術が必要になりますがが、一般的な場合は薬物治療を行います。完治の可能性がある場合、副作用の強い薬も使うことがあります。

Q.早めの対処で完治するか?
脊髄が断裂したような脊髄損傷と異なり、中心性脊髄損傷は完治する可能性もありますが年齢によります。

Q.後遺症は?
麻痺や感覚障害が残る場合があります。特に感覚障害は「けが」や「やけど」をしても本人が気付かない事もあるので、周りの方の充分な注意が必要です。

Q.メンタルケアは?
脊髄損傷は交通事故などの外傷が原因で起こる事が多いので、一家の大黒柱である人や 結婚前の若い人の場合もあります。そのような活発に社会生活を送っている方が、脳は全く正常にもかかわらず、手足の自由が効かなくなり、その障害が一生涯続くようなことになれば、その苦痛は耐え難いものがあると思います。医療従事者のみならず家族や周囲の方々によるメンタルケアが大切なことは言うまでもありません。

Q.今回のケースのように脊髄を痛めている場合の応急処置
ログロール法(頭と体を一本の丸太のように保持し、担架などに移す時に用いる方法)で扱ってください。救急隊も患者を一本の棒を扱うように行っています。身体が曲がっている場合は伸ばしてください。
意識がある場合は手がしびれたり、手足が動きにくかったり、首が痛いという症状があります。安全確保が保てない(その場にいると二次災害の恐れがある)場合以外は動かさないこと、極力頚部を固定して運ぶことが大切です。

bs-i トップへ