#24 「ハートに火をつけて」ドアーズ

出演者

  • 渡辺香津美
  • ロバート・ハリス(音楽評論家)
  • ホセ・フェリシアーノ
  • ブルース・ボトニック
  • パトリシア・ケネディ・モリソン
  • マリオ・マグリエリ
  • 続木徹(ピアニスト)

放送内容

1967年。サイケとヒッピーの夏。全米ナンバーワン・ヒットとなった「ハートに火をつけて」で、時代の最先端へと躍り出たドアーズ。ボーカルのジム・モリソンが放つ強烈なカリスマ性と、オルガンをフィーチャーした独自のサウンド。そして高度に文学的な詩の世界。ドアーズは、60年代後半のアメリカ文化を象徴する存在となった。
番組では、ドアーズの作品を手がけたエンジニア&プロデューサー、ブルース・ボトニックに取材。「ハートに火をつけて」のオリジナル4トラック・テープの中身を解析する。さらに、この曲を新たなスタイルでカバーした二人のアーティスト、ホセ・フェリシアーノと渡辺香津美が、ギタリストの立場からアプローチする「ハートに火をつけて」を熱演。DJ・作家のロバート・ハリスの解説と共に、時代を作った名曲と不世出のバンドに迫る。

ディレクターによる取材ウラ話

エンジニア、ブルース・ボトニック氏のプライヴェート・スタジオには、壁際からコンソールを見下ろすように映画『禁断の惑星』に出てくるロボット「ロビー」が直立していた。2mを越す身の丈は、おそらく等身大。ブルース氏がたっぷりと勿体をつけてスイッチを入れると、光って、動いて、喋る。すごい。
ブルース氏はそこで、悪戯が何より好き、という感じでニヤリとしてみせる。その目にはある種のテロルの光が走る。そういうエッジな迫力こそが、何かをやらかす才能の証なのだろう。
2時間近くに及んだインタビューの中で、「ハートに火をつけて」の話に加えてブルース氏が最も熱く語っていたのは自身がプロデュースも務めたアルバム、『L.A.ウーマン』のことだった。
アルバム『モリソン・ホテル』の時にはもう、アルコールに溺れるジム・モリソンの状態はあまりにも不安定で、デビュー以来プロデューサーを務めていたポール・ロスチャイルドも匙を投げ、去っていってしまった。その後で、彼らの音楽がそれで終わりにならないようにと、自分が如何に力を尽くしたか。「残った僕たちで、再起をかけて新しいアルバムを作ろう」とドアーズを励ましたこと。スタジオよりもジムが落ち着ける場所で録音しようと、彼らのリハーサル室に機材を持ち込んでレコーディングしたこと。デビューアルバムにドアーズの良さが詰まっていたことをメンバーに強く語り、もう一度あのようなアルバムを作ろう、と言ったら全員がうなずいてくれて胸が熱くなったこと。そして、それがジムの最後のアルバムになってしまったこと。
星の数ほどヒット曲・歴史に残る曲を手がけたブルース氏だが、ドアーズは「特別」なのだと言う。自分にそこまでの思いを抱かせた存在は他になかったと。番組のエンディングで『L.A.ウーマン』最後の曲、「Riders On The Storm」を流さずにいられなかったのは、そんなブルース氏の印象が忘れられないから、です。
翌日にはブライアン・ウィルソンの自宅インタビューという緊張の取材が控えていた我々、「寝不足にならないよう、今日は遅くならないようにしよう」と言い合っていたにも関わらず、ブルース氏のスタジオでの時間はみるみるうちに深夜近くにまで及んだのでありました。


PLAY LIST