AQUOS美術館 かくて名画は生まれた。

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毎週土曜日よる22:00〜22:30
毎週日曜日7:00〜7:30再放送

今から100年以上も前に描かれた一枚の絵画。
名画の放つ色彩…そしてその筆遣い。
画家が持てる情熱を全て注ぎ込んだ絵画に向き合う時、あなたはそこに何を見るであろうか?

絵画の数だけドラマがある。そして見る者の数だけ感動がある。
絵画は人生を変える。画家も、そして見る者さえも…

セザンヌ Paul Cézanne

#7 『トランプをする人々』

5月17日O.A.(18日7:00 再放送)
8月16日O.A.(17日再放送)
声の出演 林 隆三(セザンヌ役)
テーマ音楽:宮川彬良
『トランプをする人々』

「トランプをする人々」

所蔵:オルセー美術館(フランス・パリ)

セザンヌはこの絵のモデルにエクス・アン・プロヴァンスの農夫たちを使った。
ここでカード遊びに没頭している彼らは、長時間をかけて念入りにモチーフを観察しなければならないセザンヌにとって格好の題材だった。しかし、モデルの男性に動かないように指示をしたという。トランプなので、ゲームの最中は動くのがあたり前。彼らもセザンヌのモデルになっている時は、素直に楽しむことができなかったに違いない。そう考えると、この絵に登場する人たちの表情が暗いのも頷ける。では、なぜセザンヌはトランプをする人々に興味をもったのだろうか。
この絵にはセザンヌの孤独が色濃く反映されているという。

レスタックから見たマルセイユ湾

「レスタックから見たマルセイユ湾」

所蔵:オルセー美術館(フランス・パリ)

セザンヌは、すでに印象派の仲間たちと距離を置き、パリを離れ、故郷のエクス・アン・プロヴァンスや地中海に面した港町レスタックでひとり、絵を描くことが多くなっていた。その頃、セザンヌが描いたレスタックの絵はもはやほとんど印象派主義の面影をとどめていない。時にモザイク・タイルのようなタッチを用い、絵具はかなり薄めで、白いカンバスを全て埋め尽くすこともなくなった。セザンヌは、ここで何週間も海を眺め観察し、自分が肌で感じたこと、心に抱いたものを描いた。瞬間を見たままに描くだけの印象派の絵画にものたらなさ感じていたのだ。深く対象の確信に迫り、その中の永遠なるものを描きたい、そう考え始めセザンヌは、印象派と決別した。


レスタックの海

セザンヌの作品では、静物画や肖像画、トランプをする人々など、彼がシリーズものを手がける時は、必ずといってよいほどモチーフを単純化していく傾向があり、後の作品になるにつれ、絵の形式や構成が力強くまとまっていくのが見て取れる。
パリから遠く離れ、たったひとりで描き続けるセザンヌ。そんな彼の作品が世間に認められることはなかった。それでも、セザンヌに対する水面下の評価は、やがて 若い芸術家たちの間に口コミで広まっていくことになる。

ポール・セザンヌ
Paul Cézanne

近代絵画の父と呼ばれ、20世紀絵画の扉を開いた後期印象派を代表する孤高の画家。多角的な視点から描く絵画、内面に迫る心情性に富んだ形体・色彩の表現を実践し、従来のアプローチとは異なる、独自性に溢れた革新的な表現方法を確立。自然の中に幾何学的配置を見つけ出そうとした手法は、後の世代の画家たちに絶大な影響を残した。人間嫌いで社交下手としても有名だった。