2002年 10月26日の放送

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 今や「世界の工場」兼「デフレ輸出大国」として世界経済に大きな影響を与える中国。上のグラフは最近8年間のGDPと消費者物価指数の前年比伸び率推移を示している(Data:Bloomberg)。GDPは安定的に高成長を遂げており、直近第三四半期の伸び率は前年比プラス8.1%を記録、2期連続で8%台の高い伸び率を示した。昨年第四四半期の伸び率は6.6%にまで低下したが、今年に入ってからは再び高成長軌道に乗っている。ただし国家統計局によると、今年第四四半期の伸び率は政府支出の削減により、7.9%に低下すると予測している。

 一方、インフレはこの8年間で大きく低下した。94年当時の高インフレは景気過熱が背景。89年の天安門事件を受け外国投資は一時停滞したが、Deng XiaoPing(鄧小平)のリーダーシップの下で外資導入策を改善、その結果92年から95年にかけて10%を超える経済成長が続いた。しかしその後の景気引締め策が奏効しインフレは低下、現在は世界的な物価下落の影響もあり、前年比マイナスの状態が続いている。

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 中国への投資も活発に推移している。上は海外から中国への直接投資額推移。半期(6ヶ月)あたり200~250億ドル規模の直接投資が行われている。ちなみに日本から中国への直接投資金額は、昨年上半期が1136億円、同下半期が1489億円となっており、125円換算で大体8~12億ドル規模となっている(Data:Bloomberg、日銀)。ここ2年ほど増加傾向にあるのは、2000年10月に中国が外資企業法を改正した影響が大きいようだ。これにより、外資企業の国内販売規制が緩和され、積極的な事業展開を目指す企業が増えた。

 このため、今後中国に対する投資は一段と増えそうである。今年8月に発表された「日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書」(日本貿易振興会)によれば、回答した日系企業897社のうち54.1%が「今後の開拓対象海外市場」として中国を挙げている。2位のASEAN諸国は25.4%にとどまっており、中国がダントツに重要な市場として見られていることがわかる。

 日本企業が中国進出に積極的なのは、日本国内市場に要因があることにも注意したい。同報告書によると、「今後3年間における国内市場に対する見方」として、実に6割前後の企業が「収益面で厳しい状況が続く」・「競争が一層激化する」と回答している。国内景気の低迷やデフレの影響が、日本企業の目を中国を筆頭とする途上国の市場に向けられている。

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 直接投資の形態には、合弁や100%外資、委託加工など様々あるが、日本企業の中国での拠点形態はどうなっているのであろうか。同じく8月に発表された「日本企業の中国における国内販売活動に関するアンケート調査報告書」(日本貿易振興会、上海市および周辺省・市の日系企業183社が回答)によれば、「生産及び輸出拠点」として中国に拠点を置いているとした回答が半分以上を占めている(上のグラフ参照)。しかし、中国国内での販売を目指す拠点も増えてきている。中国への投資というと、低賃金を生かした生産拠点としての進出がイメージされるが、今後は販売拠点として投資する企業も増えそうである。

 なお、中国国内販売にあたっての最大の問題として、4分の3以上の企業が「売掛金の回収」を挙げられている。指摘した企業は非鉄金属・飲食料品セクターをはじめ繊維や医療品・化粧品など広範囲のセクターに及んでいる。どうやら売るだけでなく “代金取立て技術の向上”も成功への鍵を握っているようだ。

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 一方、日本の方は金融安定化策・産業再生策の行方を巡って大揉めとなっている。“竹中ハードランディング”路線は実際に行われるのか・・・市場は固唾を飲んで見守っている。上は今後の政策オプションの一部。他にも、財務諸表及び自己資本比率の正確性に関する経営者による覚書・刑事罰の強化・自己資本比率の引き上げ・退職金不払いなどいろいろ噂されている。デフレ対策として日銀による国債買入額の増額案も浮上している。

 最大の注目は銀行勘定の分離案か。スウェーデンで90年代に使われた手法と報道されているが、日本でも過去に例がある。1946年、巨額の不良債権処理へ向け、政府は金融機関・民間企業の資産・負債をそれぞれ新勘定と旧勘定に分離、戦後の負の遺産の一掃に乗り出した。この案は以前から雑誌等では話題になっていたが、ついにオフィシャルな場に顔を出したと言えるだろう。いったん分離を行えば、新勘定から多大な不良債権が出ることは許されない。その時旧勘定に移される資産が“本当の不良債権”であり、その金額も明るみに出ることになろう。

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 18日(金)の海外市場は、一部米銀によるまとまったドル買いなどを受け125円台半ばまで上伸して越週した。21日(月)の東京市場は125円半ばでオープン、しかしムーディーズが日本の外貨建てシーリングの格付けをトリプルAに戻すとの報道に円買いが先行、海外でも米系ファンド中心にドル売りが出され、125円近辺での引けとなった。

 22日(火)の東京市場は124円80銭で寄り付き後、竹中PTによる中間報告を控え円売りが先行、125円台に乗せた。中間報告は結局延期されたが、ドルは底堅い動きが続き125円台前半で引けた。23日(水)の東京市場は125円台前半でオープン。後場に米系ファンドの大口のドル売りが持ち込まれ、124円台前半まで急落した。しかし円買い材料にも乏しいことから、その後はドルの買戻しが入り、124円60銭で引けた。

 24日(木)の東京市場は124円台後半で寄り付いたが、本邦資本筋や海外ファンドからのドル売りで124円台前半に下落、一時123円台に突入した。海外ではドル買戻しの動きが入り、結局124円40銭で引けた。25日(金)の東京市場は124円台後半で寄り付き後、一段のドル高材料には欠けるとの見方からドル売りが優勢となり123円台半ばまでドルが売られる展開となった。その後ロンドン市場ではドル買戻しが進み、124円台前半でのもみ合いとなっている。

 日本の不良債権処理策の行方が不透明となっていたため、ドル堅調の展開が続いていたが、米系ファンドを中心としたドル買いの動きもようやく一服してきている。市場では日本の悪材料についてはほぼ織り込んだとの見方が台頭してきており、ここから一段とドルが上昇するには何か新しい要因が必要か。しばらくは上のレンジ内でのもみ合いが続こう。