2002年 7月20日の放送

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  南米の通貨が不安定になっている。上はこのところ下落の目立つ4カ国の為替レート推移。今年4月1日のレートを100とし、対ドルでの推移を指数化したもの。特に5月からの下落が目立っている。ベネズエラは、国営石油会社(PDVSA)の政府への抗議ストがきっかけ。チャベス大統領が同社の幹部を解任したことが、職員の反発を呼んだ。4月にいったん正常化したかに見えたが、その後も政治不安が続いていることや、財政赤字問題などが懸念材料となっている。ブラジルは、大統領選挙に関する世論調査で、野党候補が優勢となっていることが通貨売りにつながった。4月に中央銀行が金利引き下げを見送ったことで、経済成長鈍化が懸念されたことも悪材料となった。アルゼンチンの市場混乱は、政府債務の借換え交渉難航などを理由に昨年10月頃から大きく報じられている。今年1月の切り下げ後、2月に完全フロート制に移行。以後、アルゼンチン・ペソ安が続いている。このような南米大国の経済不安は、他の南米地域にも悪影響を与えた。ウルグアイは6月20日、外貨準備が16億ドルに半減したため変動相場制への移行を決定、通貨は大幅に下落した。輸出の半分以上はブラジルとアルゼンチン向けのため、これら2カ国の経済不安の打撃を受けた格好となっている。

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  上はアルゼンチンのGDP成長率と対外債務残高の推移を示したもの。アルゼンチンは1991年に固定相場を導入して、インフレの沈静化に成功、その後経済は高成長を達成した。しかし、同国の財政は赤字基調が続いた。ここ最近3年の予算を見ると、99年は35億ペソ、2000年は44億ペソ、2001年は69億ペソの歳出超過となっており、その額は年々膨らんでいる。このため、国際資本市場へ頼らねば成り立たない構造は変わっていない。対外債務(グロス)は、91年末は613億ドルにとどまっていたものの、94年末には850億ドルを超え、96年末には1000億ドルを突破する水準まで上昇した。その後も残高は増加し、昨年末は約1400億ドルとなっている。アルゼンチン経済の再建にはまだ時間がかかりそうだ。(Data:アルゼンチン経済省)

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  ブラジルも基本的な構図はアルゼンチンとあまり違わない。為替は99年1月に変動相場制に移行している。GDP成長率は2000年に4.36%と高成長を遂げたが、翌年は1.51%に急低下した。電力不足による生産の縮小、金利上昇、通貨安などが低成長の背景。対外債務残高(政府・民間合計、グロスベース)を見ると、1990年に約1200億ドルだったものが、97年には2000億ドルに増加しており、ほぼ一貫して上昇している(昨年は減少したが、それでもまだ約2000億ドルある)。6月18日、IMFはブラジルに100億ドルの融資を実施すると発表した。通貨レアルの下落を受けて、ブラジル政府がIMFへ依頼していたもの。しかし、S&Pなど格付会社はブラジルの国債格付けを引き下げており(外貨建て長期債務 BBマイナス→Bプラス)、今後もブラジル動向は要注意だ。同国の大統領選は今年10月に行われる。(Data:ブラジル中央銀行)

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  ブラジルも基本的な構図はアルゼンチンとあまり違わない。為替は99年1月に変動相場制に移行している。GDP成長率は2000年に4.36%と高成長を遂げたが、翌年は1.51%に急低下した。電力不足による生産の縮小、金利上昇、通貨安などが低成長の背景。対外債務残高(政府・民間合計、グロスベース)を見ると、1990年に約1200億ドルだったものが、97年には2000億ドルに増加しており、ほぼ一貫して上昇している(昨年は減少したが、それでもまだ約2000億ドルある)。6月18日、IMFはブラジルに100億ドルの融資を実施すると発表した。通貨レアルの下落を受けて、ブラジル政府がIMFへ依頼していたもの。しかし、S&Pなど格付会社はブラジルの国債格付けを引き下げており(外貨建て長期債務 BBマイナス→Bプラス)、今後もブラジル動向は要注意だ。同国の大統領選は今年10月に行われる。(Data:ブラジル中央銀行)

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  中南米以外で注目されるのは、トルコか。上は最近の為替と株の動き。トルコ政府は5月21日、「早期の選挙はない」とする声明を発表している。首相の健康不安から、政局流動化が経済再建策を遅らせる、との懸念が市場で台頭したため。しかし、その後も為替・株式とも下落基調は続いており、まだ安定していない。為替の下落により、民間企業は今年のインフレ率を35%と予想している。10日の日経新聞は「トルコ、経済再建に暗雲」と題した記事を載せており、今後の状況はまだ流動的と言えよう。今のところ、米財務次官のジョン・テーラー氏は「トルコの実体経済は改善してきている。経済改革案は評価できるもので、効果も上げている」と述べてはいるが・・・・。