2002年 4月27日放送 マーケット・ナビのポイント

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 このところドル円で、ドルの頭の重さが目立つようになってきているが、ほかの通貨でもドルは軟調に推移してきている。上のグラフは、豪州ドル、スイスフラン、ユーロに対するドルの2月以降の推移をインデックスにしたもの(2月1日のレート=100)。これを見るとすべての通貨でドルが売られていることがわかる。ユーロは発足以来、一貫して対ドルで売られてきたが、ここへきて大底を打ちつつある可能性も出てきている。
 背景としては、米国の景気回復がそれほど強いものではない可能性が出てきたこと、イスラエルのパレスチナ侵攻問題や第2、第3のテロ事件の可能性が依然くすぶっていることなどがある。巨額の経常収支赤字を抱えていることも、ドルの先行きに不透明感を与える一因になっている。一昔前は“有事のドル買い”といわれ、何か国際的な事件が起きる時はドル買いに結びつきやすかったが、今や、そのような動きはなくなったと言えるのかも知れない。

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 米景気回復の足元は力強いと言われるが、その先行きについては不確定要素も多い。上は24日に発表された米地区連銀報告の概要。ヘッドラインは前回調査以降、“ほぼ全域で景気改善の兆候、または実際に回復の動きが見られる”としているが、クリーブランドやカンザス、ダラスなどの地区は回復ペースの力強さに懸念を示している。
 報告の内容を見ると、小売は全般に好調な様子だが、製造業の設備投資計画は“引き続き低迷” としている。居住用不動産は全般に活発な状況が続いているが、商業用不動産は軟調な状態が続いている、という。経済が上向きつつある割には、労働市場は低迷しており、賃上げや物価上昇圧力は見られず、労働不足を訴える地区はほとんどない、としている。
 全般に景気は回復に向かっているのだが、そのSustenability(持続力)が注目されている。

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 欧州についてみると、このところの景気低迷にようやく歯止めがかかる状況になってきている。上はユーロ圏のGDP実質成長率推移。茶色の棒グラフは、2001年の四半期別の前年同期比推移を示し、緑色の棒グラフは24日に欧州連合(EU)の欧州委員会が発表した、春季経済予測の数字である。ユーロ圏12カ国の2002年の実質GDP成長率は1.4%とされており、2003年は2.9%が予想されている。ユーロ発足以降、経済成長率の低下に悩んだユーロ圏だが、もともと経常収支や財政収支は日本やアメリカに比べ安定した状態いある。為替も安定しつつあり、今後成長軌道の道筋が明確になっていけば、投資家のユーロ見直し機運も高まろう。

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 ではドルが対円でも安くなると、日本の当局は介入に踏み切るのだろうか。デフレに悩む日本経済には、円安が不可欠との声は多い。金融当局も130円以上の円安を維持したい意向であることは、最近の一連の発言からも明らかだ。しかし、今週末にかけては円高が進み、130円を割る展開が続いている。
 上の表は、過去10年間のドル円の介入内容(実際介入した通貨にはこれら2通貨以外にもある)。レートは介入日のNY引値を示してある。これを見ると、財務省がドル買い介入をする時は全て125円以下の水準であり、逆にドル売りは全て125円より上のレベルで行われたことがわかる。125円は買いと売りの分水嶺なのである。直近のドル円介入は、2000年4月3日のドル買い円売りで、当日のNY引値は104円90銭である。
 もし125円から130円の水準で当局がドル買い介入を行えば、上の前例を破ることになり、市場へのインパクトは大きいものになろう。

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 22日(月)の東京市場は130円半ばでオープン、その後は海外勢や本邦輸出筋からユーロ売り円買いが持ち込まれ、対ドルでも円は連れ高となり、130円近辺までドルは売られた。海外では、NY勢によるドル売りに一時129円63銭まで下落するも、その後は買い戻され、129円95銭での引けとなった。23日(火)は130円近辺でオープン後、同意の乏しい展開が続いた。海外では、一時129円80銭近辺までドル売りが優勢となったが、その後買い戻され、結局130円20銭での引けとなった。24日(水)は130円25銭で取引開始後、黒田財務官が「円がドルに対して上昇することはない」と述べたことから、ドルは130円半ば近くまで上昇した。しかしその後はドルの頭の重い展開が続き、海外に入ると、3月の米耐久財受注が予想より減少したことなどを受け、ドル売りが優勢となり、129円半ばまでドル円は下落した。25日(木)は129円50銭で取引開始後、GWを前に厚みを増している本邦輸出企業のドル売りに押され、ドルは頭の重い展開が続いた。財務省の溝口国際局長が「円高が進む状況にない」との発言にもかかわらず、ドルの戻りは限定的。海外では、米景気回復期待の後退からドル売りの流れ止らず、結局128円70銭までドルは下落した。26日(金)の東京市場は、128円台後半で神経質なもみ合いが続いている。
 国内株が比較的堅調に推移していることもあり、これまでの円安一辺倒の見方が徐々に是正されつつあるようだ。金融当局はさかんに130円以下の円高は不満である旨コメントを発しているものの、今のところ市場は無視しており、介入でも行われない限りドルの反発は難しくなりつつある。これから日本はGW入りするため、海外では荒れた展開になる可能性もある。
 G-SECドル円指数(26日、速報値)は56.3(前回確定値比マイナス3ポイント)と若干下落した。ドルの反発を見込む参加者はまだいるが、前回より若干減少した。