榊原・嶌のグローバルナビ


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第376回 2008年3月29日 放送

3月20日、札幌ドームの北海道日本ハムファイターズの開幕戦に4万2000人のファンが詰め掛けました。熱い声援を受け始まった開幕戦は、千葉ロッテマリーンズとの対戦です。今シーズン、日本ハムは3連覇がかかっているだけに、応援側にも気合が入ります。スタジアムを見渡すと男性客ばかりでなく、応援グッズを手にしているファミリーや若い女性の姿が目立ちます。実は、ファイターズのファンはおよそ6割が女性なのです。本拠地を東京から北海道に移転し今年で5年目、すっかり地元密着型の球団として定着し、北海道民の4人に3人がファイターズファンというまでになりました。07年の観客動員数も180万人を突破、今年は200万人の動員を目指すということですが、そんなファイターズ人気を支えているのは女性たちなのです。

では、なぜファイターズは女性ファンの心をがっちりと掴んだのでしょうか。一番の要因は、選手とフロントが一丸となった「ファンサービスファースト」の精神です。これは、北海道へ移転したファイターズの最大のチーム改革で、その端的な例が開幕戦で見られました。スタジアムに入場するファンを選手がハイタッチで出迎えるというサプライズ企画です。開幕戦は、選手達にとって普段以上の緊張感に包まれる大事な試合ですが、それにも関わらず、選手たちがファンサービスに参加するというのは「ファンに喜んでもらうことが一番大切」という考えがチームの全員に浸透しているからです。過去にも引退した新庄選手やヒルマン前監督が様々なパフォーマンスでファンを楽しませてきました。ファイターズは今シーズンから梨田新監督を迎えていますが、新しい監督を招聘する際、その選考基準の一つとなったのがファンサービスへの理解があるかどうか、だったそうです。それ程までにファイターズがファンサービスには徹底してこだわるのは、チームとしての集客力を上げ、テレビ放映権に頼らないビジネスモデルを構築しようとしているからです。

北海道日本ハムファイターズの改革はチーム編成にも及んでいます。その核となっているのがBOS=ベースボール・オペレーション・システム。業務提携先のメジャーリーグの球団から導入しました。これは、コーチやスカウトが、自軍の一軍の選手と二軍の選手は勿論、他チームの選手まで、その働きぶりを数値化して客観的な実力の評価を可能にしたモノ。そのデータは毎日更新され、選手の育成、トレードに活かされています。そもそもファイターズは、これもメジャーリーグにはよくある仕組みですが、チーム編成はフロントの仕事として位置付けています。どんなチームを作るのかはフロントが決め、その方針に沿った選手を集め育成するというスタイルです。例え監督が代わっても、ファイターズが目指す野球は変わらない、方針がぶれない効率的なチーム作りを目指しています。そして、それを可能にしているのが先程のBOS=ベースボール・オペレーション・システムなのです。

藤井社長がこうした様々な改革を推し進めてきたのは、親会社の広告塔ではなく、スポーツビジネスとして"自立"した球団にならないと「厳しい社会の中、生き残れない」と考えるからです。その経営方針は、今のプロ野球界に一石を投じています。

「プロ野球をエンタテイメントビジネスとしてやっていかないと日本のスポーツビジネス全体が拡がっていかない」


かつて千葉に住んでいたとき、「ロッテ対日本ハム」の試合といえば、よくスタジアムの外で、とてつもなく安くなった券を売っていたほど、人気がありませんでした(ファンの方、すみません)。しかし、それはもう昔の話。今はパ・リーグがとても熱いのです。パ・リーグとセ・リーグの違いもよくわからない私でさえ、パ・リーグの選手の名前を何人か言えます。なかでも、北海道日本ハムファイターズの選手は顔と名前も一致します。そんなこと今までありませんでした。

実は、2ヶ月ほど前、ヤクルトの元監督、古田さんにインタビューをしたのですが、その時、「巨人ファンばかりだった北海道民が、今ではみんな日本ハムファン。そのやり方を見て、野球は娯楽であり、ビジネスなんだということを実感した」とおっしゃっていました。

ファイターズというチームをそこまでに育てたのが、野球の経験のない藤井純一社長。社長は、お話しを伺っていてもとても楽しく、ファイターズファンの中でも人気者だそうです。しかし、社長がリードするチーム改革は、選手の能力を数値化するなどシビアなもの。例えば、同じ打率でも、どのような場面で結果を出しているのかは選手ごとに違います。しかし、ファイターズではその違いも数値化され、非常に客観的な選手評価が行われているのです。

これからは、効率的で客観的なファイターズのような球団経営が主流になっていくのかもしれません。日本の野球はどんなふうに変わっていくのでしょうか。とても楽しみです。

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