榊原・嶌のグローバルナビ


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第369回 2008年2月9日 放送

今年1月、日本の未来のリーダーを育てることを目指す「子と親のための明日のリーダー塾」がスタートしました。この塾は中高生を対象にしていて、古典文学から歴史、国際関係、科学など様々な分野を学び、知識の幅を広げていくことを目的としています。

塾長を務めるのは当番組のキャスターでもある早稲田大学の榊原英資教授。副塾長はゲストの金澤一郎さんです。この塾の特長は、講師の講義を聴くだけでは終わらないこと。理論を体感する実験や、生徒同士のディスカッションを行い、「考える力」と「コミュニケーション能力」とを養おうという仕組みになっています。というのも、こうした力が今の日本の学生には欠けていると、榊原さんと金澤さんは考えているからです。

そうした二人の心配は、経済協力開発機構(OECD)が高校1年生を対象にした国際学習到達度調査によって証明されます。昨年、発表された最新の調査結果によると、日本の数学応用力は2000年の1位から2006年は10位へ、科学応用力は2位から6位まで転落していました。この調査は知識や暗記のレベルを問うものではなく、まさに「考える力」を測ることを意図した試験で、その結果は日本の教育のあり方への問題提起となりました。

実は、この国際学習到達度調査と同時に、科学に関する意識調査が行われているのですが、そこに表れた日本の学生の意識こそ問題、という意見があります。例えば「30歳になった時に科学に関連する職業に就きたいか?」という問いに対してYESと答えた日本の子供は8%、「科学に関する新聞や雑誌の記事を読むか?」という質問に対してもYESは8%にとどまり、理系への関心の低さが際立っていたのです。

実際、学生の理系離れは顕著になっています。工学部の入学者数は96年をピークに減少傾向が続いていて、06年には10万人を割り込みました。定員割れ、募集人数の削減、更には閉鎖という事態にまで追い込まれた大学も出ています。このままでは、ものづくり大国ニッポンを支える人材の育成・確保が危ぶまれます。

こうした「学力低下」「理系離れ」といった問題に対して、ゲストの金澤さんは「子供たちの意欲そのものが低下している」ことが問題だと指摘します。米、中、韓、日の4カ国の高校生を対象に行った意識調査でも、「将来偉くなりたいか?」という質問に対し、YESと答えた学生の割合は、中国で30%以上、アメリカ、韓国でも20%以上でしたが、日本は僅か8%。生活意識に於いても、日本以外の3カ国の学生は「やりたい事は困難があっても挑戦したい」「組織の中で自分の力を発揮したい」などと積極的な姿勢を示しているのに対し、日本は「暮らしていける収入があればのんびり暮らしていきたい」という消極的な回答が目立ちました。

では、そんな学生の意欲をどうやったら引き出せるのか。金澤さんは、「鍵を握るのは大人」と指摘します。「親や教師が子供に対し、叱責すべき時は叱責し、褒める時は褒めるという『情熱』を持った教育ができていないのでは」というのです。『ゆとり教育』を巡る議論が盛んに行われ、政府もその見直しへと動き出していますが、金澤さんは、「授業時間数やカリキュラムの内容以前の、もっと根本的な学問に対する姿勢、勉強をしようという意欲こそが問題で、そのためには、大人が情熱を持って、科学などの学問の面白さを伝えていかなければならない」と熱く語っています。

科学から離れているのは子供ではなく、大人・・・
科学には確かに光と影の面があるが、子供のうちは夢やロマンを語り、科学の面白さについて情熱を持って伝えていくべき 。


金澤先生のご経歴を拝読すると、「大変な権威の方が来られる。どんな難しいお話をされるのか」と身構えてしまいそうですが、お会いしてみてびっくり!気さくで熱い人でした。「今教育が必要なのは子供だけでなく、親にも必要!」、「今必要なのは情熱だ!」などなど教育の現状に相当な問題をお感じになっているようです。中でも印象に残ったのは、「子供は叱って、叱って、叱って、褒めるべし」という言葉。最近は「お友達親子」、「姉妹のような親子」、「褒めて育てる育児法」といったことを耳にしますが、金澤さんがおっしゃりたいことは、親は親として威厳を取り戻せということでしょうか?今の親は子供の顔色を伺いすぎているのでしょうか?今は金澤先生の真逆を行っているようです。

そして、今回の本題は「理系離れが進む日本」。全くの文系の私ですが、算数は決して嫌いではなかった理系科目。でも、いつからか私も理系離れ族に…時々「もっと勉強しておけばよかった」と後悔することもあります。そんな大人にならないよう、まだ理系離れしていない皆様、情熱を持ってその世界を探求してください!

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