榊原・嶌のグローバルナビ


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第367回 2008年1月26日 放送

日本の人口減少に歯止めがかかりません。2007年は、出生数の減少と死亡数の増加で1万6千人の自然減となる見通しで、このままいくと、2055年には、総人口が9千万人を割り込み、生産年齢人口に至っては、ほぼ半減してしまうと予測されています。まさに日本経済の未来を左右しかねない問題です。

第一生命保険・会長の森田富治郎さんは、人口減少によって日本の経済力が落ちた場合の諸問題をこう指摘します。「最初に心配になるのは、食料・エネルギーなどの輸入購買力の低下です。日本の食料自給率は39%、エネルギーはたった18%。世界的な需要増は必至で、当然価格は上昇、購買力が落ちた日本は国際競争に勝てなくなる」。他にも、社会保障の抑制や地域間格差の拡大、世界における存在感の低下などを指摘されました。

その解決のためには、高齢者や女性、若年層から潜在労働力を目一杯引き上げ、技術や経営のイノベーションだけでなく、一人一人の働き方の変革、それに伴う意識や制度の改革がこれからの経済成長には必要だといいます。もちろん、人口減少を食い止めなければ、日本経済の縮小は止めることはできません。

そんな中、注目すべきキーワードがあります。「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」です。仕事と生活の調和や、育児と仕事との両立を図って誰もが働きやすい環境をつくるという考え方で、これからの国や企業の取り組み次第では少子化対策の柱になると期待されているのです。

WLBの最終的な目標は、個人としては“生活の充実”であり、企業側にとっては“生産性向上による企業業績の向上”。ただ、企業業績の向上という結果が目に見えて出てくるには時間がかかります。WLBへの取り組みは、短期的な収益や目先のコストに囚われるのではなく、将来への「投資」として捉えていく必要があるのです。

第一生命では、昨年度、WLBを推進するため、育児休業はもとより、復職支援や介護支援などの新制度を整えました。例えば、「孫誕生休暇」。これは、社員の80%を占める女性営業職員、特に50代・60代のベテラン向けに整備したもので、そうした世代への支援が子育てには重要になっているという声を集めて作られたものです。

そして、こうしたWLBへの取り組みによって、第一生命では職員の満足度が改善し、退職者数も減少しました。また、新規採用では、女性総合職の応募者が増えるという効果も上がっています。優秀な人材の確保、定着に繋がるWLB。経営戦略上のキーワードになりそうです。


日本の少子化問題は、生命保険業界にとっては大変大きい問題だということはよくわかります。何しろ加入する人の数が絶対的に減ってしまうのですから。もちろん、人口が減って困るのは生保業界だけではありません。あらゆる業界に影響は及びます。

ですから、少子化対策は喫緊の課題という訳ですが、その少子化対策に有効だと言うのが「ワーク・ライフ・バランス」です。働くことと子供を育てることが両立できるような環境を整えようということで、勿論、制度としてはいいことだと感じます。しかし、最も大切なのはそうした制度を積極的に利用できるような職場の意識、周囲の目ではないでしょうか。迷惑をかけるのではと気兼ねして、制度を自由に使えないのであれば意味がありません。

そして、もう一つ気になるのは、社員の数が多い大きな企業よりも、人が少ない中小企業では制度そのものの導入もハードルが高いのでは、ということです。一企業を超えた取り組みも必要ではないでしょうか。

少子化対策を考えていくと、私なりに思うことがあります。人は日本のために子供を産むのではなく、自分の為に子供を産みます。ですから、将来日本はこんなに明るい未来が待っている、という様な気持ちが持てることが大切ではないでしょうか。明るい未来が見えていなければ、なかなか少子化のスピードは抑えられないような気がします。

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