榊原・嶌のグローバルナビ


Big name

バックナンバー

第358回 2007年11月17日 放送

丸みを帯びたまるでオブジェのような加湿器。底が上履きになっているバッグ。あえてブラウン管の形をした液晶テレビ。こんな“ありそうでなかった”ユニークな製品を扱うのが社員数23名のデザインベンチャー、プラマイゼロです。

プラマイゼロはデザインに特化した家電や雑貨を製造・販売しています。この社名の由来について平野社長は「いらない機能を取り外し、必要な機能だけつけた、ちょうどいいもの」と話します。そんなコンセプトのデザインを手がけるのは、世界的にも有名なプロダクトデザイナー、深澤直人氏。「ものには必然的な形がある」というモットーのもと存在感のある製品を次々と生み出しています。看板商品でもある加湿器はニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクション(永久収蔵品)に選ばれ、これまでにおよそ10万個を販売しました。

実は、この加湿器の丸みや光沢は職人が手作業で磨いたもの。プラマイゼロの製品づくりには手間暇がとてもかかっています。そのため製造を委託するメーカーとはときに対立することもありますが、それでも、プラマイゼロはこだわりを貫いてきました。例えば、マラカスのように振って使う塩コショウ入れの場合、たいへんシンプルなデザインですが、そのつなぎ目の美しさを表現するのに3年もの年月がかけられているのです。

最近のトレンドとして、大手メーカーも、機能だけでなくデザイン性を重視する姿勢を強めています。デザイン家電という言葉も普通に使われるようになってきました。当然、プラマイゼロのようなデザインベンチャーは大手家電メーカーとの競争に揉まれることになりますが、小さなベンチャー企業だからできること、つまり大量生産の大手メーカーにはなかなか真似の出来ない、細部にまでこだわる製品づくりで対抗する考えです。

また、プラマイゼロでは販売拠点の拡充にも力を入れています。キーワードは「タッチポイント」。消費者が商品に直接触れることが出来る場所、という意味です。平野社長は、プラマイゼロの良さを理解してもらうには「実際に触れてもらうことが大切」と考えていて、これまでに百貨店やインテリアショップなど300カ所以上にタッチポイントとなる販売コーナーを設置してきました。家電製品でありながら、販売拠点の多くはインテリアショップというのも特徴です。価格で訴求するのではなく、デザインで訴求することを意識しているからで、店内では家具類と一緒に展示して生活シーンでの使われ方を演出するなどの工夫もしています。

創業から4年が経過したプラマイゼロ。その間に、製品デザインは高い評価を得、知る人ぞ知るブランドとしてのイメージを確立しつつあります。しかし、平野社長は「万人が欲しがるブランド」にならなければいけないと話します。デザインベンチャーの挑戦はまだ始まったばかりです。

ブランドはお約束。±0の商品によって幸せになれるというお約束。ブランド名を3年以内に50%、最終的には80%の人に知ってもらいたい


40代前半の平野社長はとにかく前向きなオーラを醸し出しています。スタジオでも自社の製品を説明する時は、一層その言葉が熱を帯びてくるのを感じました。平野社長も「つい話しすぎちゃうんですよね」とご自分の熱さを自覚されているようです。

実は、このプラマイゼロのことは前から知っていました。人気のドーナッツ型の加湿器も気に入って購入。いまでは10万台も売れたそうですから、私は少し流行の先取りができたのかなと思います。家の中に置くものにデザイン性を求めている人が多くなっている、ということはとても感じています。

アンケート調査によると、現在、プラマイゼロの製品ロゴ「±0」を知っている人は11%。まだまだ知る人ぞ知るというレベルですが、これを80%にまで引き上げたいと平野社長はお話しされていました。いま、プラマイゼロには北欧やドイツなどのヨーロッパの国々から引き合いが寄せられていて、来年にも輸出を始めるそうです。そうしたデザイン先進国で更に評価を高めることが出来れば、日本で80%の認知度を達成するのもそう遠い将来のことではないのでは、と思います。

上に戻る▲