榊原・嶌のグローバルナビ


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第343回 2007年8月4日 放送

夏休みの最中に、ガソリンの店頭価格が大幅に値上がりしました。レギュラーガソリンの場合、7月までは全国平均で1リットル141円でしたが、今月6z日現在、145円と最高値をつけています。原油価格の高騰を受けて、石油元売り各社が卸価格を引き上げたためです。

その原油価格の高騰ですが、暫くは治まりそうにない、というのが現実です。中国やインドなど新興経済国の台頭による需要の逼迫や中東・アフリカなど産油国の地政学的なリスクの高まりがその背景にあるためです。いつでも安く石油が買えた時代は終わり日本のような資源小国にとっては安定供給先を確保することが至上命題と言えます。

石油を巡る国際環境の変化の中で、新日本石油は油田の探鉱、開発に力を入れています。その象徴が、ベトナム・ホーチミン市の250キロ沖合にあるランドン油田。1998年に操業を開始、1日に5万バレル、ドラム缶4万本の原油を産出し、世界10カ国で展開する新日本石油の自主開発油田の中でも最も生産量が多いと言います。ランドン油田の開発は、およそ6年の月日と170億円の開発費をかけた一大プロジェクトでしたが、このうち4割は国が資金を融資しました。それは自主開発油田が国のエネルギー戦略を担う存在でもあるからです。政府は現在、2030年までに輸入する原油の4割相当を自主開発油田で賄うという計画を立てているのです。

新日本石油がハイリスクを承知の上で油田開発に注力するのは安定供給を図るという目的の他にもう一つ理由があります。新たなビジネスモデルの構築です。石油の精製、販売に加えて、自主開発油田を確保することによって欧米の石油メジャーのように上流から下流まで全てをカバー。原油価格の変動に強い「一貫操業体制」を築こうとしているのです。

また、新日本石油では「総合エネルギー企業」への変革が始まっています。電力事業の自由化を受けて、新日本石油の国内5カ所の製油所では地域の電力会社を相手に電力の卸売りを行っているほか、川崎市では新たな発電所の建設も進めています。運転開始は来年4月を予定。根岸製油所のおよそ2倍、80万キロワットの電力を供給する能力があります。こちらの発電所は東京ガスとの共同事業で、燃料は天然ガス。これまでの卸売りから更に一歩進んだ電力の小売りを行う計画で、オフィスビルや病院に対して直接、電力を供給します。

さらに、総合エネルギー企業としての取組みは、次世代エネルギーの研究にも及んでいます。その一つが、家庭用の燃料電池システム。酸素と水素を化学反応させて発電するというのが燃料電池の基本的な仕組みですが、新日本石油では、灯油から水素を作りだして発電するシステムを世界で初めて商品化しました。標準的な家庭が必要とする電力のおよそ6割を賄うことが出来ます。家庭用燃料電池は、電力を供給するだけでなく発電時に発生する熱でお湯も湧かします。勿論、地球環境にも貢献。二酸化炭素の排出量を3割以上削減します。他にも、バイオ燃料の製造や、サルファーフリー燃料の開発など積極的に取り組んでいます。

新日本石油が目指す総合エネルギー企業。それは研究開発型企業への転換でもあります。

「“脱石油”を目指してはいません。石油をクリーンなエネルギーとして有効活用する技術力を活かし、勝負していきます」

総合エネルギー企業への転換を目指す新日本石油の成長戦略について西尾社長にお話を伺いました。

油田価格の推移は今年に入り一時的に1バレル=50ドル台で推移していましたが、6月から再び高騰。先月には、史上最高値の1バレル78.8ドルをつけました。しかし、新日本石油はそんな時代の変化に対応、その利益構成も大きく変化しています。

油田やガス田の開発を担当する上流部門と呼ばれるセクションが、以前に比べその割合を増していて、現在7割を占めるまでになりました。一方、石油精製やガソリンスタンドへの販売などの中流・下流部門の割合が減少。原油価格の高騰が石油事業の上流ではプラスに、中流と下流ではマイナスに作用したようです。

もっとも私が注目した点は、未来のエネルギーや環境を意識した研究に力を注がれているところです。
★1980年代から取り組んでいる家庭用燃料電池の開発。
★今年4月から首都圏で試験販売が始まり話題を集めた「バイオガソリン」では、食材ではない草や木を原料にバイオエタノールを作る研究が進行中。
環境への思いやりの心はとても深く共感できました。

今、私が気になるのは今後来るであろう「水素社会」について。「ガソリン入れてくるね」が、「水素入れてくるね」という時代もそう遠くはない未来なのでしょうか!?

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