榊原・嶌のグローバルナビ


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第335回 2007年6月9日 放送

ドイツ・ハイリゲンダムで開催されたG8サミット=主要国首脳会議ですが、最大の焦点だった地球温暖化問題について、「温室効果ガスを2050年までに少なくとも半減することを『真剣に検討する』」という表現で各国が合意しました。

最終日の8日は、中国、インドなどの首脳とG8の首脳が会談し、今後、G8と新興経済諸国5か国が「ハイリゲンダム・プロセス」という新たな枠組みで、温暖化問題などを定期的に話し合っていくことも決まっています。

今回の合意については、温室効果ガスの削減目標設定に強硬に反対していたアメリカを引き入れたという点で評価の声があがりました。しかし、その一方で、「真剣に検討する」という文言にどの程度の拘束力があるのか、そして、いつの時点と比べての「半減」なのかが明示されないことなど、あいまいさをかなり残しています。

「日本の提案自体が首脳文書に盛り込まれました。サミットの議論や成果に大きな貢献を果たすことができたと充実感を感じているところであります」

サミットの閉幕後記者会見に臨んだ安倍総理は、サミットでは地球温暖化問題の合意に貢献することが出来たと、胸をはりました。確かに日本政府は、今回のサミットを意識して、4月の段階から中国の温家宝首相と地球温暖化に関して共同声明を出すなど、戦略的な外交を展開してきたことは間違いありません。

しかし、曖昧さを残した今回の合意内容を、具体的なものにしていくこれからの作業は相当な困難が予想されます。来年の洞爺湖サミットでは、日本が議長国として各国の利害を調整し議論をとりまとめることが求められます。果たしてそれだけにリーダーシップを発揮することができるのか、大きな課題を背負ったとも言えます。

安倍総理にとっては、良いお披露目の場となった。 しかし、来年の洞爺湖サミットに向けては、環境問題もさることながら、 サミットにかかるコストとベネフィットの計算が今後の課題だ。

サミットの季節です。今回は旧東ドイツの保養地・ハイリゲンダム。今、ホワイトアスパラガスの季節だそうです。サミットと言うとよく話題に上がるのが、記念撮影で各国の首脳がどう並ぶかということ。参加回数が少ない人が端の方に立つケースが多いそうですが、ついこの前、大統領になったばかりのフランスのサルコジ大統領は、結構、真ん中にいました。気のせいだとは思いますが、メディアのカメラが入っているときは常に目立つ所にいるように感じます。日本人的な感覚だと「ずうずうしい」感じもしてしまうけれども、これだけ世界中に映像が流れることを思うと、サミットでは日本の遠慮という美学は通用しないのかもしれません。安倍総理はちょっと端っこな感じでした。来年の洞爺湖サミットでは真ん中に陣取って欲しいな、と思ってしまうのは私だけでしょうか?

さて、今回のサミットでは「温室効果ガスの排出量を2050年までに半分にすることを真剣に検討する」ということが決まりました。ただ、これでG8が地球温暖化防止に着実に動き出した、とよろこぶのはまだ早いようです。この「真剣に検討する」というのは外務省による翻訳ですが、元の原文は「consider seriously」とのこと。これは「真剣に考える、考慮する」という程度のニュアンスで、こうした交渉の現場では「NO」に近い表現との指摘もあります。

学生時代、翻訳の学校に少しだけ通ったことがあるのですが、そのとき先生に言われたのが「お笑いと政治家の言葉をキチンと訳せるようになったら一人前」。確かにこの微妙な政治家の表現をどう訳すかで、全く意味が違ってきてしまいます。小さな力とは思いながら、分別ごみの徹底をしたりしている私からすると、「consider seriously」に「YES」の意味が込められていることを切に願ってしまいます。

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