榊原・嶌のグローバルナビ


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第332回 2007年5月19日 放送

二期連続の最終赤字を記録し、現在、経営再建中の日本航空。その再生を目指す中期計画が2007年4月からスタートしています。(1)生産性の向上、(2)本業への経営資源の集中、(3)プレミアム戦略、(4)機材と路線の改革。以上の4つを柱に、2010年度には営業利益880億円を達成するというものです。より具体的には、全グループ社員の8%に相当する4300人の人員削減や、ホテルなどの資産売却といったリストラ策がありますが、特に人員の削減は、高コスト体質からの脱却には不可欠である一方で、その実施には困難が伴うのも事実です。しかし、もはや待ったは許されません。また、この計画にはJALの攻めの戦略も盛り込まれています。その代表がプレミアム戦略で、国際線の全クラスで座席を一新、更にプレミアムエコノミークラスを新設します。国内線にはファーストクラスを導入し、JALブランドの復権を目指します。西松社長は「本来の強みを捨ててしまっていた」という反省があるそうです。

機材の更新も注目のポイント。既に運行を始めた小型機ボーイング737−800に加えて、今後は中型機ボーイング787も導入します。ここ数年、燃料の高騰が利益を圧迫しているだけに、機材の燃費性能は業績を左右する重要な要素。また、路線の収益性に合った機材で運行する、という目的もあります。今後、大型機から中小型機へのシフトは確実に進みます。

JALの改革はこうした再生プランだけではありません。その一つが役員個室の廃止。西松社長は「風通しをよくしないといけない」と考え、役員全員が大部屋で顔をつきあわせて仕事をするよう改めました。また西松社長は現場巡回にも積極的で、2006年6月の社長就任以来、その回数は100回を超えています。これも社内のコミュニケーションの活性化を図ろうという狙いです。また、休日には成田空港を訪れ、海外出張へと出発する企業のVIPにトップセールスを展開。「顔を覚えてもらいたい。絶好の機会。運送業ですから自分から動かないと」と、今のJALに何が必要かを率先垂範しています。もちろん社員達も、このままではいけないという危機感を抱いています。1年ほど前から運航、客室、整備、販売など様々な現場のスタッフが自発的にミーティングを始めました。「コミュニケーション・リーダー・ミーティング」と呼ばれていて、社内の部門を隔てる壁を取り壊し、その声をまとめ、経営に提言をするのが目的です。

運行トラブルや経営陣の内紛でイメージの低下を招いた日本航空。選ばれるエアラインを目指して“JAL再生”は動き出しています。全社一丸となれるかがその成否の鍵を握っています。

中期計画の4つの柱(プレミアム戦略・機材と路線の改革・生産性の向上・本業への資源集中)をきっちり実行していけば十分再生できる。中でもクオリティの再構築とネットワークの維持は外せない。

私は、父の仕事の関係で、高校生の頃まで日本と海外を行ったり来たりしていました。その時に利用していたのは全てJAL。親しくなった友達や慣れ親しんだ土地を離れる時、いつもJALの機内で泣いていました。だから私にとってJALは人生の節目に結構深く関わってきているような気がします。

そんな日本航空が、大変なことになっている。経営不振に陥り、いま再建の途上にあるのです。当時のことを考えると想像できない事態です。2007年3期の当期損益は162億円の赤字、役員報酬は6割カットしたため社長の収入は1000万円を切っているそう。個別の役員室を廃止し、全役員が同じ大きな部屋の壁沿いに机を並べ、少し不思議な光景で業務をこなしています。

先日、友人でJALのキャビンアテンダントをしている人の結婚式に参加したのですが、そのときも同僚がスピーチで「わが社は色々ありますが、社員は頑張っています」と笑いを取っていました。社内でも今の状態を深刻に受け止めているようです。

西松社長は社内の雰囲気も気合も良い方向に動いているとおっしゃっていました。その勢いで、長年慣れ親しんできた私のような人のためにも、昔のようなキラキラした、みんなの憧れの企業に戻ってください。もちろん安全第一で!

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