榊原・嶌のグローバルナビ


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第331回 2007年5月12日 放送

サトウキビやトウモロコシなど植物を原料に作られた「バイオエタノール」が混合されたガソリン、「バイオガソリン」が先月27日から発売されました。石油元売り各社がつくる「石油連盟」が、首都圏のスタンド50箇所で試験販売を開始。2010年の全国販売を目指しています。

「バイオガソリン」には3%のバイオエタノールが混ぜられていますが、自動車の性能や安全性面では全く問題はないといいます。そもそも、なぜバイオエタノールは環境に優しいのでしょうか。ガソリンを燃焼して走行する自動車は走れば走るほど二酸化炭素を排出します。勿論、バイオエタノールも二酸化炭素を出しますが原料となる植物が光合成によってニ酸化炭素を吸収して育つため、新たに二酸化炭素を増やしていない、と見なされるのです。

このバイオエタノール、現在世界20カ国ほどで導入されていますが、何と言ってもバイオ燃料先進国はブラジルとアメリカ。ブラジルでは年間1620万キロリットルのバイオエタノールが生産され(2006年)、全てのガソリンに20%〜25%混合するよう義務づけられている他、バイオエタノール100%という燃料まで使われています。アメリカも導入に積極的で、年間1920万キロリットルを生産し世界トップ(2006年)。今後10年でバイオエタノールの生産を6倍以上に増やそうという計画まで打ち出しています。

こうして世界的にバイオエタノールへの期待が高まり、生産拡大の動きが強まる中で、私達の生活への影響も思わぬ形で出てきました。バイオエタノールの原料となるとうもろこしの国際価格がわずか半年で2倍近くに高騰、その結果、食用油やマヨネーズが値上げされることになったのです。また、100%果汁のジュースは、既に1割程度値上げされています。ブラジルでオレンジ栽培からサトウキビへの転作が相次ぎ、オレンジ価格が高騰したためです。

このバイオエタノールを国内で生産しようという取り組みが既に始まっています。政府の支援を受けて北海道や沖縄などで実証試験が続けられているのです。また、大阪・堺市では、日本で初めてバイオエタノールを商業生産するプラントが2007年1月に稼働。世界で初めて建築廃材などの木材を原料にバイオエタノールを生産しています。ただ、2006年に日本で作られたバイオエタノールは僅か30キロリットル。大阪・堺市のプラントが本格稼働を始めても年間生産量は4000キロリットルに過ぎません。その上、コスト面でも日本での生産は不利と言われていて、このままでは、バイオ燃料の時代になっても輸入頼み、ということになりそうです。技術革新が強く望まれるところです。

ところで、政府は、「京都議定書目標達成計画」というものを作成していて、そこでは、自動車用燃料50万キロリットル(原油換算)を2010年までにバイオ燃料に置き換えるという目標が掲げられています。このうち21万キロリットルについては、バイオガソリンの試験販売を始めた石油連盟がバイオエタノールをブラジルなどから輸入して、その普及を請け負う方針を表明していますが、残りの29万キロリットルは目途がたっていないのが現状です。目標達成までに残された時間は僅か3年…。

地球温暖化対策の一つとして注目を集めるバイオエタノール。日本では生産・販売ともに緒についたばかりですが、着実にその普及を図ること期待されます。

バイオエタノールの国内生産は食料以外の原料、木材や麦わらなどを使った技術開発にかかっている。今後ブレークスルーがあれば経済性も出てくる

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