榊原・嶌のグローバルナビ


Big name

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第326回 2007年4月7日 放送

100年以上にわたって国の経済を引っ張ってきた、インド最強の財閥、タタ・グループ。従業員は24万6000人、総売り上げは、およそ2兆7000億円(インドのGDPのおよそ3%!)、主要企業だけで96社という、巨大企業集団だ。

1968年に、創業者であるジャムシェドジー・タタ氏がつくった貿易会社が、全ての始まり。インドで初めて製鉄所や発電所を作るなど、重厚長大産業を得意とし、規模を拡大してきた。1950年代から60年代にかけて、主だったグループ企業が次々と国営化され、一時は、成長を阻まれたが、90年代に入り、インドが自由経済路線に転換すると、ITビジネスを起爆剤として、再び、息を吹き返した。

インドでのタタ・グループのイメージは、ズバリ、「信頼」だという。事業拡大だけでなく、社会貢献に力を入れていることで知られている会社なのだ。ラタン・タタ会長の強力なリーダーシップの下、タタは、今、M&A戦略によって、国際競争力を高めようとしている。グループの鉄鋼メーカーであるタタ・スティールは、英・蘭のコーラス社を傘下に入れたことで、世界ランキング52位から、一気に6位までジャンプアップ!名実ともに、グローバル企業へとのし上がってきている。

タタは、インフラ整備や自動車といった、国内市場における強固なコアビジネスを持っている。例えば、急速な経済発展を遂げるインドにおいて、欠かすことの出来ない「電力」…タタ・パワーの目下の最重要課題は、グジャラート州で進められている「ウルトラメガ・プロジェクト」と呼ばれる巨大発電施設の開発で、4000メガワットという発電所を作り、製造業の盛り上がりとともに、急速に高まる電力需要に対応。

一方、150万台市場と言われる自動車産業においては、シェア16.5%で第2位、乗用車の分野では、小型車に絞り込んだ戦略で業績を伸ばしている。主力車種である、「インディカ」(中心価格は80万円ほど)は様々なバリエーションを揃え、インドの中流階級の人々から多くの支持を集めているが、50万円をきるような低価格の新型を市場に投入しようという、計画も進められている。

インドには、このほか、老舗で素材産業に強いビルラや、石油精製・科学などを得意とする、新興勢力で最も勢いのあるリライアンスなどの財閥があり、この3大グループの売上だけで、インドのGDPの8%を占めている。

こうした巨大財閥こそが、インド経済躍進の主役であると言っても過言ではない。「出遅れている」といわれる日本企業が、インド市場で巻き返しをはかるためには、こうした巨大グループや、そのほかの中堅財閥と密接に連携をとりながら、地域に根ざしたビジネスを展開する必要があるに違いない。

私にとってのインドの最初の印象は、ちょっと古いですが、子供番組の主題歌。「インドの山奥で修行をして!」という歌の歌詞でした。しかし、今のインドはそのときのイメージとは全く違うことが、ドンドン分かってきました。奥が深いだけでなく、大変なスピードで高度成長とIT革命が同時に押し寄せ、きっと住んでいる人も驚くくらいの変化を日々見せているのでしょう。
中でもインドのイギリス統治時代の1898年、日本で言えば明治維新の年に誕生したタタグループの活躍は凄いです。なんてったってインドのGDPの3%も稼いでいるのです!

もう一つびっくりしたのが、そんなタタグループのトップであるラタン・タタ会長が独身と言うこと。後継者はどうなる?と心配するのは日本的な考え方です。後継者はタタ財閥全体から一番優秀な人を選ぶというやり方なので、タタ会長は後継者のことは心配せずに、プライベートでは独身貴族を謳歌できるのです。

そんなインドにはアメリカ・中国・韓国の企業がかなり入り込んで頑張っているようです。まだこれから、という日本の企業の皆さんも、このインド特集をごらんになって、インドに挑戦してみませんか?

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