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第275回 2006年4月8日放送 タカラトミー 富山 幹太郎 社長

先月、老舗玩具メーカーのタカラ(創業1955年)とトミー(創業1924年)が合併し、タカラトミーが誕生した。トミーと言えば、プラレール、トミカ、黒ひげ危機一発、そしてポケットモンスターなどのキャラクター商品。タカラと言えば、ダッコちゃん、リカちゃん人形、チョロQ、そして人生ゲームと、誰しもが遊んだ数々のヒット商品を売り出してきた。そんな両社が一つになり、合併第一弾として発売するのが『ポケモン人生ゲーム』、旧タカラと旧トミーのスタッフが初めて一緒に作った力作だ。

この合併に大きな可能性を見出しているのが、トミーの前身・トミー工業を創業した富山栄市郎を祖父にもつ、タカラトミー・富山幹太郎社長。小さなころからたくさんのおもちゃに囲まれて育った富山社長は、1986年、若干32歳で社長に就任した。当時はプラザ合意をきっかけに急激な円安が進行、日本の製造業全体が構造改革を強いられていた。富山社長は就任早々に6つあった工場のうち4つを閉鎖するなどリストラを断行。従業員の希望退職も募った。それから20年、玩具メーカーを取り巻く環境は変わった。富山社長が次の時代を睨んで下した決断が合併だった。

合併を選択した一つの理由は、玩具市場への異業種からの参入だ。ゲームやエンターテイメント、更にはアパレル関係の会社が次々と玩具を扱うようになったことで富山社長は決心した。「玩具メーカーは教育まで考えてモノづくりをしているが、その他はタダ面白ければよいという考えだ。その点に違和感を覚える。だからこそ、おもちゃ心(自然に子供たちが遊び健やかに成長してくれると願う心)を持つ者同士がイニシアティブを取らなければならない」と。

合併を選択した二つ目の理由は、キャラクタービジネスの拡大・強化だ。玩具メーカーのビジネスは、単におもちゃだけを作るだけでなく、キャラクターを作り出しそれを映像化するという、著作権や知的所有権が絡む分野にまで広がっている。おもちゃにゲーム、映画やテレビ、洋服や文房具と様々な分野で大きなビジネスになっているのだ。しかし、そういったキャラクターを開発するには10億円も20億円もかかってしまう(おもちゃだけの開発なら1〜2億円)。そのため、合併によって資金力のアップを図る必要性を感じていた。現に、合併後のタカラトミーでは、今までの倍、年間20本の企画を進行できるようになった。

では、なぜ合併相手にタカラを選んだのか?大きな理由の一つが、同じ玩具メーカーでありながらも補完関係が成立すること。お互いの商品が食い合わないのだ。タカラは小学生以上に強く、トミーは幼児に人気。企業体質も、ヒット狙いで業績は乱高下するが新しい物を作ろうという創造力があるタカラと、確かなモノを地道に作り続けるという安定感のトミー。この両社が一緒になることで、販売層が厚くなり、攻めと守りを兼ね備えた経営が可能になると言う。

今、玩具・ゲーム業界では大型再編が相次いでいる。タカラとトミーの合併だけでなく、バンダイとナムコの経営統合、スクウェアエニックスによるタイトーの子会社化などがあり、いずれのケースも少子化による市場の縮小がその背景にあると言っていい。逆風が吹く中でどうやって生き残っていくかを模索しているのだ。

少子化対策、その一つの答えが『大人向けのおもちゃ』だ。そのことに気付かせてくれたのが、トミーが2004年に発売したラジコンカー『エアロRC』。富田社長自身「売れるとは思わなかった」という。しかし蓋を開けてみると、20代から40代の男性を中心に300万台も売れた。人気の秘密は、まず千円という価格の安さと改造できるという楽しさ、そして「昔こんなのがほしかった」という懐かしさだ。その他にも赤ちゃんと同じ大きさと重さで、色々と返事をしてくれる人形も売れている。買い求める人の70%の人は50歳以上と高齢化社会を反映している。また、価格は高いが精密なフィギアも大人心をくすぐり拡大基調。子供に比べて購買力を持っている大人の心をいかに掴むか、玩具メーカーのこれからの重要な課題になっている。

社長に就任してから20年が経つ富山社長は、10年刻みで過去を総括している。最初の10年(1986年〜)は『破壊の10年』、様々なリストラや構造改革を行った。次の10年(1996年〜)は『創造の10年』、テレビキャラクターを中心にマーケティング志向を強化し、東証一部にも上場した(2000年)。これからの10年(2006年〜)は『飛躍の10年』と位置付ける。合併を土台に大人向けのおもちゃの開発やキャラクタービジネスを強化、少子化だからこその拡大路線で飛躍したいと考えている。富山社長は「おもちゃ産業は衰退産業ではない」と力説する。

富山社長が大事にしている言葉がある。「おもちゃ産業が発展する条件は、科学技術は発達し、教育が盛んで、文化があって、平和な国であること」。社長に就任してから10年ほど経った頃、部屋を片付けたときに見つけた創業者の言葉だ。これを見た富山社長は「おもちゃ業界を大事にしない国はダメになる。だからこそおもちゃを作る意義があり、プライドを持つことが大切だ」と感じた。私達がただただ無心になって楽しんでいたおもちゃ。その裏では、こんな戦略や改革、苦労があったのだ。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 玩具メーカーは教育を考える、その他はただ面白ければいいと考えている。
  • おもちゃ心を持つ者同士がイニシアティブを取らなければならない。
  • いかに大人の心を掴むかが、玩具メーカーのこれからの重要な課題。
  • おもちゃは衰退産業ではない。
  • おもちゃが発展する条件は、科学技術が発達し、教育が盛んで、よい文化があった、平和な国であること。
  • 『破壊の10年』『創造の10年』『飛躍の10年』
亜希のゲスト拝見

とてもソフトな語り口で、とても優しそうで、子供たちが寄っていきそうな風貌の富山社長。社長就任当時は、古参の幹部から『若』と呼ばれていたそうだが、実は大変なリストラや社内改革を進めてきている。

子供のころからおもちゃ工場が家の隣にあって、おもちゃに囲まれて育ったが、おもちゃに飽きることはなかったという、根っからのおもちゃ好き。商品の説明をされている時の目はとても楽しそうだった。実は社員の机の上にもおもちゃがたくさん並んでおり、タカラトミーは会社全体がおもちゃ好きなのだろう。

一つ面白い話を聞いた。100円玉を入れると、おもちゃが入ったカプセルが出てくる『ガチャ』を欧米でも販売しているそうだが、両国の反応は全く違うという。それは、欧州の場合は日本と同じ1枚で100円くらいの価値のコインが存在するため非常に人気がある。しかし、アメリカは1ドル札になってしまい、コインだと25セントを4枚も入れなければならないので、人気はいまひとつだそうだ。こんなところまで考慮しなければいけないのだから大変だ。

ちなみに、グローバルナビの出演者の一人である榊原教授は、子供のころおもちゃ部屋があり、なかでも『モノポリー』が大好きだったそうだ。いや、納得してしまう。私は、パズルとリカちゃん人形が好きだった。これは何を意味しているのだろう?