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第233回 2005年6月11日放送ロック・フィールド 岩田弘三社長

多くの人がお世話になっている『中食』。「外」食と家庭「内」で作る食事との中間の食事、簡単に言えばお惣菜である。しかし、その種類は実に豊富だ。かつてはコロッケや焼き鳥などが定番だったが、最近ではデパートの食品売り場に行くとわかるが、パスタ、インドカレー、有名料亭の小芋の煮っ転がし等など・・。しかも、どこも驚くほどの人だかりだ。

この中食人気の理由はライフスタイルの変化が大きい。かつてのように夜7時に家族全員が食卓を囲むことが少なくなり、家族それぞれがバラバラな時間に食事をするようになった。女性の社会進出で女性が家事をする時間が短くなったり、少子化で作る量自体が少なくなったことなどから、食材全部買うより値段は高めだが中食のおかずを少し購入しておく方が効率的になってきているのだ。

市場規模を見ても、外食は減少傾向だが、中食はデフレの影響をものともせず、2003年には6兆円を突破、今なお拡大している。そんな中食の中でもひときわ目立っているのが、カラフルなサラダが数多く並び、女性客が我先にと買い求めている『RF1』。ロック・フィールドが経営するサラダ中心の総菜屋だ。決して安いわけではない。100グラム399円や599円など、むしろ高い。それなのに週2〜3回来店するリピーターを中心に連日大賑わいである。

人気の秘密はライフスタイルの変化だけではない。客の健康志向とロック・フィールドの並々ならぬ素材へのこだわりがある。例えば、人気No.1の『30品目のサラダ』。これは1985年に旧厚生省が打ち出した「健康のために1日30品目を」という指針を受けて開発された商品だ。しかし、日常生活で30品目も摂るのは大変なこと。だからこそ、商品として提供してくれることは、時間がなく健康志向の人にとっては魅力的に感じられるのは自然なことかもしれない。しかも、このサラダ、実際は100グラムの中に30品目が確実に入るように、新鮮な葉野菜や根菜、ナッツが37〜38品目と多めに入っている(実際に数えるお客さんもいるためだそうです)。細かい心遣いだ。他にも、ニンジンなどカロチンの多い野菜を使ったサラダ、ビタミンCが豊富な野菜を使ったサラダなどもあった。まるでサプリメントのようなサラダだ。

こんなユニークなサラダを開発し大成功している裏には、岩田弘三社長の「多数派は世間の常識。少数派にこそ未来がある」という考え方がある。岩田さんは、中学を卒業後、夜間学校に通いながら日本料理店で修業し、1965年にフランス料理店を神戸市に開業した料理人である。1972年、(株)ロック・フィールドを設立、ヨーロッパやアメリカで見たデリカテッセンをヒントに富裕層をターゲットにした生ハムやパテなどの高級惣菜店を始めた。1992年、世間の多品種少量に対するニーズを先読みし、もっと庶民レベルのオリジナルブランド『RF1』を立ち上げ、デパートの食品売り場や駅ビルの中で惣菜販売を開始した。その後、中食ブームの波に乗り事業を拡大。現在は『RF1』の他にも、『神戸コロッケ』(コロッケ主体の店)、『べジテリア』(野菜ジューススタンド)、『融合』(アジア系惣菜)、『三日坊主』(和惣菜)、『そうざいや地球健康家族』(手軽で低価格な惣菜店)の6つのブランドを展開している。現在では全国に320もの店舗展開をし、売上高413億円、経常利益19億円と、惣菜のトップメーカーに成長している。

RF1を立ち上げた1992年から、「健康・安心・安全」を基本理念にしてきた岩田さんは、「素材」に徹底的にこだわってきた。ロック・フィールドの工場内を見ても、ダシは鰹節を削るところから手作業。ゴボウもジャガイモの皮も手でむく。レタスも手でちぎる。外部の加工業者に任せたりせず、全ての工程を同じ工場内で行ったほうが、素材が届いた日に下処理から出荷まで管理でき、それだけ新鮮なものを届けることが出来るからだ。

「日本の農産物は世界一」と主張する岩田さんは、Made in Japanの素材にこだわっている。全国で捜し求めた、選りすぐりの素材を調達している。例えばゴボウは堆肥づくりにこだわる宮崎県の生産者、卵は放し飼いで飼育されている鶏の平飼卵(福岡県)、レタスは茨城県の生産者と契約などなど。かつて季節モノといわれた北海道のジャガイモも、冬の間に積もった雪と一緒に保存することで、低温ながらも湿度を保ちながら保存する方法を考え出した(雪中備蓄)。人々の食に対するニーズは、「20世紀型の『厚化粧時代』から、素材の味を生かした『薄化粧時代』になってきた」と岩田さんは語った。

ロック・フィールドのライバルはトヨタ自動車だそうだ。もちろん岩田さんは、自動車を生産しようとしている訳ではない。良いものを早く消費者に届けようとするトヨタのカンバン方式に注目しているのだ。岩田さん自らトヨタに出向き、生産ノウハウを伝授してもらえるよう願い出たそうだ。最初はトヨタ側が「車を作るの?」と戸惑っていたが、岩田さんの熱意に打たれ、色々と教えてくれた。今ではロック・フィールドの幹部にもトヨタの人がいるほど関係は密になっている。

トヨタ方式を持ち帰った岩田さんは、ロック・フィールド内の無駄を徹底的に改善した。ストップ・ウォッチを使って作業スピードを計測したり、調理道具を工夫することなどで作業効率を大幅に向上することができた。製造業のノウハウは中食業界でも大活躍していたのだ。

「今は中食の大競争時代」と語る岩田さんは、「産業は競争によって成長する。だから今は大事な時」と、これからの取り組みに強い意欲を見せた。最も大切なことは、「健康・安心・安全」で「付加価値」と「独自性」のある商品を作ること。長年こだわり続けてきた「素材へのこだわり」と、徹底した「作業効率の改善」によって、ロック・フィールドは大競争時代を勝ち抜いていく考えである。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 多数派は世間の常識。少数派にこそ未来がある
  • 1人に全てを任せることで、仕事への達成感が生まれ結果も良くなる
  • 日本の農産物の品質は世界一
  • ライバルはトヨタ自動車
  • 食へのニーズは「厚化粧」から「薄化粧」の時代に
  • 産業は競争によって成長する
亜希のゲスト拝見

ロック・フィールドという社名は、岩田社長の岩=ROCKと、田=FIELDから来ています。NYのロックフェラーセンターを見て、「ロック・フィールド・・。夢があっていいな!」と決めたそうです。しかし、この社名はあまり食べ物を連想させないため、取引先や客から、「ドッグフード」とか「六甲フード」などと間違えられることもあったそうです。とはいえ、分かりにくい分、分かっていただけると覚えてもらえるそうです。確かに「ねえ、ねえ、知ってる」と人に教えたくなる名前ですね。

岩田社長ご自身は、社長の貫禄をお持ちながらも、食べ物の話になると話が止まらなかったり、手の爪がとても綺麗なのを見ると、料理人魂も垣間見れます。2か月ごと(1シーズン)に150点もの新商品の開発と既存商品の改良を行っているその姿勢からも、料理人としてのこだわりを感じます。

不思議と、グローバルナビの男性スタッフはデパ地下には余り縁がないようですが、「最近妻の料理が上手くなったな」と思っていたら、実は中食を食べているのかもしれませんよ。それに気づいてしまった方、是非、心の中で思うだけで、口からは「ウマイ美味い」と言ってあげてください!