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第209回 2004年12月18日放送三菱電機 野間口有社長

「次の社長は君にやってもらいたい」と、現在の会長である谷口一郎氏から野間口さんが告げられたのが2002年2月のこと。30年以上、研究開発者として取り組んできた野間口さんにとって「人生で最も予想していなかった役回り」だったという。1週間悩み抜いて社長就任を決意したものの、当時の三菱電機の業績はITバブル崩壊の影響で2期連続の最終赤字と極めて厳しい状況だった。

そこで野間口さんが打ち出した改革は、タテ割り組織を打ち破り、ヨコの連携を強化することだった。三菱電機のほぼ全ての研究開発部門を知っている野間口さんは、エアコンに使っている部品はエレベーターにも使えるなど、1つの分野で使われている技術が他の分野でも応用できることを十分感じ取っていたのである。

しかし三菱電機は85年の歴史を持つ巨大企業だけに、そう簡単にタテのものをヨコにはできない。その時、参考になったのが日本一の高さを誇る巨大ビル・横浜ランドマークタワーだった。実はこのビルは三菱電機の技術の結集とも言える存在だったのだ。

展望台まで273メートルの距離をほとんど振動なしで僅か40秒で移動する超高速エレベーターをはじめ、曲線状に動くエスカレーターや大規模な発電システムなど三菱電機が世界に誇る技術が数多く投入されている。さらに、これらの技術が有機的に結び付けられているために、僅か2人でこの巨大なタワーを丸ごと監視できる。

横浜ランドマークタワーの成功。それはタテの組織を打ち破り他部門と話し合いながら、互いの長所を出し合った結果だった。この経験を生かして2003年、社内に『戦略事業開発室』を設立した。現在では、営業・技術・開発など各担当者がヨコの連携を取りながら斬新なプロジェクト活動に取り組んでいる。

三菱電機は今、新しい成長戦略を打ち出している。具体的には、(1)エアコンやエレベーターなど強い事業を更に強化していく『VI(ヴィクトリー)戦略』と、(2)強い事業どうしを連携させて新しい市場を開拓していく『AD(アドバンス)戦略』である。

今、顧客のニーズはセキュリティの強化に向っている。その際、映像技術から情報処理技術、FA技術など様々な技術が要求されるようになる。野間口さんは「これまで以上に『総合電機メーカーの力』が発揮される時代が来る」との考えを示した。業種を問わず、『総合』と名の付く企業の経営戦略を疑問視する声も聞かれるが、野間口さんは「各部門がもたれ合いの総合ではなく、シナジー効果を発揮させながら『WIN・WIN』の関係で総合力を発揮することは、新しい発想を生み出す原動力となり強みとなる」と強調した。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • タテ割り組織を打破しヨコの連携を強化
  • 互いに協力し合えば様々な力が発揮される
  • 会社には多くの優れた知的財産が埋まっている
  • 総合電機メーカーの力が発揮される時代がようやく到来した
  • 激戦だが家電事業からは撤退しない
亜希のゲスト拝見

2004年3月期に約450億円の最終黒字を果たした三菱電機。ヨーロッパでの売り上げも好調です。ジメジメした日本の夏には不可欠なエアコンが、湿気の少ないヨーロッパでも売れているのです。エアコンの快適さを知ってしまったヨーロッパ人が増え、最近ではロシアでも人気が広がっているそうです。日本はお寿司やアニメだけでなく、エアコン文化も世界に運んでいるのですね。

野間口さんは30年以上も研究開発に携わってこられただけに、今も研究者と話すのが楽しいそうです。温和な語り口と大変な行動力で、私たちが『あっ!』と驚く新製品を作り出してください。ちなみに野間口さんのご自宅の家電製品はすべて三菱電機のものだそうです。