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第206回 2004年11月27日放送ベネッセコーポレーション 森本昌義社長

「今、身近に思っていることを実現できて、とても楽しい」と語るのはベネッセコーポレーションの森本昌義社長だ。森本さんは創業家である福武家以外で初めて社長に就任した異色の社長である。

1962年にソニーに入社した森本さんは、25年間の海外勤務を経て2001年にソニーグループのアイワ社長に就任した。ソニー一筋だった森本さんを、全く畑の違うベネッセの社長に招いたのが、現在の会長である福武總一郎氏だ。その時の条件は「何をしても構わない。経営改革をして欲しい」とのこと。当時ベネッセの通信教育講座の会員数は1999年の420万人をピークに減少し始めていたのだ。

森本さんは、まず「オーナーである福武家がすべて」という社内風土の改革に取り組んだ。ソニー時代に自らが手掛けたコーポレート・ガバナ ンス制度をベネッセに導入。意思決定もスピード・アップさせ、責任の所存も明確にした。もちろん、やる気のある人、成果をあげた人が権限を持つ体制に切り換えた。

商品戦略も見直した。戦後、順調に会員数を伸ばしてきた看板商品の「通信ゼミ」は、それまで平均的なレベルに合わせた画一的な教材しかなかったが、新しく大学別の対策コースなど「個人個人にフィットしたもの」に作り変え、品揃えを充実させた。従来、2種類しかなかった英語教材は1400種類へと一気に増え、数学の教材にいたっては2000種類も揃えているという。また宣伝方法も、かつてはダイレクト・メールしか行っていなかったが、テレビCMを多用するなど、これまでになく力を入れている。

ベネッセの大ヒット商品といえば、乳幼児向けの通信教育教材 『こどもチャレンジ』だろう。会員数は150万人に達しており、実に子供の4人に1人が会員という驚くべき商品だ。人気の秘密はキャラクターの「しまじろう」。読者である子供たちの成長に合わせて、しまじろうも成長していくというユニークな設定が成功の秘訣だ。親の目線だけから教えていくのではなく、しまじろうと共に成長するというのが子供たちの人気を呼んでいる。今は少子化の時代。しかし、森本さんは全く気にしていない。「子供が減ればそれだけ1人にかける教育費は増えていく」からだ。

思い切った改革が成功し、業績も回復傾向を辿っているベネッセが、今、力を入れているのが語学事業である。あまり知られていないが、ベ ネッセは10年前に世界的な語学企業の『ベルリッツ』を買収している。この有望な資産の活用を目指しているわけだ。ベルリッツでは、これまでの英会話授業に加え、新たに英語能力テスト『GTEC』を開始した。「読む」「書く」「聞く」に加えて、「話す」能力も測定できるオンラ インの英語テストである。その結果は、世界の英語水準の中で自分の実力はどの程度かが分かるという。まさにグローバル展開してきたベルリッツのノウハウが生かされており、既に日本の大手企業300社が採用しているとのこと。

「ベネッセ」という社名は、BENE(よい)とESSE(生活)を合わせた造語である。これは企業理念の『よく生きるを支援したい』そのものである。ベネッセは教育事業以外にも、『たまごクラブ』『ひよこクラブ』『犬のきもち』などの出版事業、さらには有料の介護付き高齢者向けホームを全国で82か所も展開するなど、ライフステージに合わせた生活支援企業を目指している。

森本さんは「子供がお母さんのお腹の中にいる時から、ベネッセというブラン ドに親しんでもらうことが大切だ」と語った。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • ソニーだけの人生じゃない方が楽しい
  • 外部から来て何も知らないからこそ大胆な改革できた
  • 時代に合わせた商品開発が必要
  • 少子化高齢化は怖くない
  • 人々の「よく生きる」を支援したい
亜希のゲスト拝見

「何も知らなかったからこそ、思い切った改革ができた」と森本さんはお話しされましたが、知らない分野でも成功できるのは、様々な経験をされて来たからこそではないかと思います。

『若い人の力』をもてはやす風潮がありますが、『ベテラ ンの力』もスゴイのです。そして、その力を森本さんが発揮し続けられるのは、仕事をとても楽しんでいるからではないでしょうか。

奥様がアルゼンチンの方ということもあってか、プライベートではラテン音楽とダンスがお好きだそうですね。楽しそう・・。