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第195回 2004年9月11日放送東京スター銀行 タッド・バッジ頭取

東京スター銀行は、1991年に経営破たんした東京相和銀行をアメリカの投資ファンドのローンスターが買収して、2001年に誕生した銀行だ。頭取は、日本で始めての外国人頭取として注目を集めているタッド・バッジ氏(44歳)。アメリカではシティバンクやGEキャピタルで経験を積んだ金融のスペシァリストで日本語も堪能なバッジさんは、宣教師として日本を訪れたのをきかっけに、合計4回、14年間日本に滞在している。そのため社内でも日本語で通している。

そんなバッジさんが目指しているのは「人に役立つ、ユニークな銀行」。その考え方は店舗の作り方からも伺える。店内は銀行とは思えないようなオレンジ色で統一。インパクトがあり、温かみもあるという狙いを込めたそうだ。窓口カウンターを取り払い、ラウンジに作り変え、顧客のニーズを専門家がじっくり聞くスタイルを採用している。

東京スター銀行のモットーは『ファイナンシャル・フリーダム』。顧客に対して、お金の心配から解き放つということだ。1700の金融機関と提携してATMの手数料を無料化したり、アイワイバンクと提携して全国のセブンイレブンで利用できるようにしたのも、その一環だ。

東京スター銀行が提供するサービスの中で一番人気なのは、預金すればするだけ住宅ローンの金利が安くなる預金連動型の住宅ローンだ。日本では初めてのユニークな商品である。この1年間で貸出残高は13倍にも増えた。また法人向けでも、担保ではなく事業の収益性で融資する『ノン・リコースローン』で新しい顧客を開拓している。その結果、営業収益はこの1年で28%増、手数料収入は80%増を達成している。「我々は成長している銀行です」とバッジさんは胸を張った。

バッジさんは「これまでの日本の銀行に明るい雰囲気が足りなかった」と考えている。そこで東京スター銀行では、次のような企業経営の原則を掲げている。

  1. ビジョン・ミッションを持つ
  2. 優秀な人材を多く持つ
  3. 革新的な環境や考え方を持つ(イノベーション)
  4. 情熱を持つ(パッション)

「縦社会の弊害をつぶしたい」というバッジさんは、フラットな組織を作り上げるために、社員に自分のことを『頭取』ではなくファーストネームの『タッドさん』と呼ばせている。もし自分のことを『頭取』と呼べば、100円の罰金だそうだ。そして頭取室に籠もるのではなく、絶えず社員のいる部屋に出向き、コミュニケーションを図っている。

家に帰れば6人の子供の父親でもあるバッジさんは「自分は生活のために仕事をしている」と日本人の経営者からあまり聞かれないことをズバリと言い切った。OnとOffを明確に区別することは、仕事をする上でも大事だと考えるバッジさんは、社員に早く帰るよう促している。「今までにない革新的な環境にしなければ、新しいアイディアは浮かばないし、パッション(情熱)もなくなり、ビジョンが見えなくなる」からだ。

2004年6月に大阪にも進出した東京スター銀行は、今後どのような銀行になるのだろうか。バッジさんは「メガバンクだとか、地銀だとかにはこだわっていない。良い会社にしたい」と考えている。そのためには「大きくなるばかりの銀行ではなく、優秀な人材を抱えてお客様の心をつかむ銀行であり続けたい」と抱負を語った。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 「人の役に立つ、ユニークな銀行」を目指す
  • モットーは「ファイナンシャル・フリーダム」
  • メガバンクにも地銀にもこだわっていない。良い会社になりたい
  • 社員とのコミュニケーションが何より大切
  • 自分は生活のために仕事をしている
  • OnとOffを区別できなければならない
  • 革新的な環境がなければ、新しいアイディアは浮かばない
亜希のゲスト拝見

バッジさんの第一印象は、銀行の頭取というよりは、優しそうなアメリカ人でした。そして名刺を見た時、「この銀行はちょっと変わっているな」との予感がしました。一般的に、銀行の頭取の名刺は、普通のものより厚い紙で、名前は縦書き、Eメールアドレスはまず書かれていないものです。しかし、バッジさんの名刺は普通の名刺。もちろんEメールアドレスも書かれています。なぜか新鮮な感じがしました。

『初』が多いバッジさんの経歴や仕事ぶりの中で、もう1つの『初』を見つけました。バッジさんの頭取室にはミキサーがあり、毎朝プロテインを作っています。こんな頭取は他にいないのではないでしょうか。

これからも日本の良いところと外資系の良いところをミックスさせた『初』へのチャレンジ、頑張って下さい。