ゲスト一覧

第188回 2004年7月24日放送杉山知之 デジタルハリウッド大学院学長

日本初の株式会社による学校が誕生した。今年4月、構造改革特区を利用して、東京・千代田区に誕生したデジタルハリウッド大学院だ。この学校ではITやブロードバンドの普及によって需要が急拡大しているデジタルコンテンツの作成やデジタルコンテンツ・ビジネスについて教え、テレビ業界やゲーム業界などで即戦力として活躍できる人材を育成している。もちろん特区による正式な大学院として、卒業生には「デジタルコンテンツマネージメント修士」の学位も与えられる。

デジタルハリウッド大学院に入学した一期生は60名。大半は社会人で、平均年齢は26歳。証券マンに新聞記者、看護師など職種は実に様々だが、「社会を一度経験している彼らの目的意識ははっきりとしており、やる気は相当ある」と杉山さんは胸を張った。学校は24時間開かれており、いつでも勉強できるようにしている。

この学校の創立者で学長の杉山さんは、日米でコンピューターを用いた音響建築の研究に携わってきた。「自分が行きたくなる、意味のある学校を作りたい」という夢を持っていた杉山さんは、1994年にデジタルハリウッド大学院の母体となる社会人向けの短期スクール「デジタルハリウッド」を開校した。今では国内に8校、海外に1校あり、3万人の卒業生を世に送り出している。

そして、とうとう今年4月に株式会社の大学院を作ることを実現させたわけだが、学校法人ではないので、当然、税金を支払わなければならない。しかし、むしろ学費は通常の学校法人よりも2割ほど安いというから驚きだ。まさに企業努力の結果だろう。まだまだ規制と戦わなければならないことも多いようだが、企業から支援を受けたり、企業と学校が連携してプロジェクトを進めやすいことなどが株式会社による学校のメリットだと杉山さんは強調した。

杉山氏がデジタルコンテンツ・ビジネスにこだわったのには訳があった。10年前から「時代は読み、書き、そろばん、そしてマルチメデイア」といっていた杉山さんは、デジタルというのは生活するうえで必要不可欠な条件になっていると考えている。デジタルコンテンツは映画や携帯電話だけでなく、金融・福祉・医療などすべての産業のものを表現できる力を持っている。例えば株価を図式化し音声を加えれば分かりやすくなる。また現金を持たずコンピューター上の数字で済ませることもできるなど・・・。

こうしたデジタルコンテンツは世界に輸出することもでき、さらに大きな可能性に結びつけることができる。今まで横のつながりが少なかった新聞・テレビ・雑誌・映画など様々な業種が、デジタルという力で横につながっていけば、新しい産業を生み出すことが可能となる。この点がデジタルの一番の強さと杉山氏は強調した。

今、面白いコンテンツを作っている人は増えているが、これらをビジネスに結び付けていく力のある人が少ない。アジアも台頭してきている。だからこそ、コンテンツをビジネス化できるプロデューサーの育成が急務となっている。こうした考えで設立したデジタルハリウッド大学院には、多くの企業からのオファーがきており、なかには起業した人もいるそうだ。既にデジタルハリウッドは、来年4月の大学設立の申請も出している。新しい大学では、英語教育にも力をいれ、デジタルコンテンツの世界でグローバルに活躍できる人材を育成いていく考えだ。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 自分が行きたいと思う学校を作りたかった
  • 時代は「読み・書き・そろばん・マルチメデイア」
  • デジタルによって既存の産業が横断的に結びつけば、新しい産業が生まれる
  • これからはデジタルコンテンツをビジネスにつなげられる人材の育成が不可欠
亜希のゲスト拝見

長髪に全身黒の服装、右手には太目の銀の指輪が2つ。まるで芸術家のような杉山学長。熱い思いを理路整然と話して下さいました。実は子供の頃は「サンダーバード」を食い入るように見ていたなど、幼い頃からコンピューターの世界に魅了されていたそうです。

放送後、デジタル大学院を作るうえで大変だった様々な規制についてお話になりました。即戦力のある人材を育成するために、実務経験のある人を教授として積極的に迎えたかったそうですが、その審査をするのが学校法人だったため、服装や話し方や考え方の違う彼らをなかなか認めてもらえなかったそうです。色々な苦労があったんですね・・・。

さて短期スクールに大学院、そして来年4月に大学も開校する予定の杉山学長。学校名であるデジタルハリウッドの中にもある本場HOLLYWOODのアカデミー賞に名を連ねる生徒がきっと近い将来誕生するのでは、と楽しみにしています。