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第187回 2004年7月17日放送 金杉明信 NEC社長

「NECの2001年度の最終損益が3120億円の赤字」というニュースは、経済界に衝撃を与えた。更に驚かされたのは、僅か2年で業績を急回復させて410億円の黒字化に成功させたこと。この成功の鍵は先頭に立った金杉明信社長が行った構造改革にあった。一体どのような改革だったのだろうか?

まず行ったのが選択と集中。工場の統廃合やリストラ、他社とのアライアンスを行うことにより、赤字の垂れ流しに歯止めをかけた。工場の役割も明確にした。例えば100億円以上の赤字だったパソコン事業の工場を統合し、最新の技術開発を行う工場を日本国内の1か所に集中、普及品は中国や台湾へシフトした。日本・中国・台湾の役割を明確にすることにより、需要変動に柔軟に対応できるようになった。

また工場内の生産性を向上させる改革も行った。NECが5年の歳月をかけて改良したNEC流「トヨタ式生産方式」だ。そのひとつがリレー式。隣り合う作業員が進捗状況に応じて助け合うことによって作業時間のバラツキをなくし、生産ラインを4分の1に短縮した。また必要な時に、必要なだけ、必要なものを生産ラインに部品を届ける「水すまし」というスタッフを設け、1つの工場で年間5000万円も削減に成功。こうした様々な改革により生産効率は6倍に跳ね上がったという。

「日本の消費者は世界でもっとも品質に厳しい」と考える金杉社長は、顧客満足度を向上させるため、工場の1つをサービスの拠点と位置づけ、ユーザーの苦情や要望を聞き入れる体制を整えた。こうした声はNECに指針を与えてくれるそうだ。

新技術開発も重要な柱である。国内には最新技術の工場を集中させ、世界をアッといわせる開発を行っている。数千年かかる計算を数分で解いてしまう「量子コンピューター」、セキュリテイーが注目されている中、人の顔を識別する「顔認証システム」など。こうした最先端の研究を行ったり、新しいアイディアを生み出す社員は「私よりも偉い社員」と金杉社長は考えている。

またNECはグローバル戦略も打ち出している。「グローバル戦略を成功させる大きなカギはそれぞれの地域のニーズに合わせること」とみている金杉社長は、中国を重要攻略地域として位置づけ、携帯電話などのモバイル事業を展開している。この春、デザインを重視する中国で、クレジットカードと同じ大きさ・形の携帯電話を発売。1台11万円もするがよく売れているそうだ。このような海外戦略により、現在22%の海外売上高を30%まで高めていく計画だ。

「構造改革は一段落し、今は本格的な業績回復のフェーズにある。そのため成長戦略をどう遂行するかが私に課せられた経営改革だ」と述べる金杉社長。今後どのような新しい技術を開発し、私たちの生活を変えていくのだろうか?

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • アジアが欧米の真似をするのではなく、アジアが世界のモデルになる時代が必ず来る
  • 日本の消費者は要求が厳しいから、技術革新やコストダウンが進む
  • NECには私(社長)よりも偉い社員がたくさんいます
  • 違いが分かり、違いを尊重できる企業集団にしたい
亜希のゲスト拝見

毎回私は、お話の内容をまとめるため、放送を必ず見直していますが、金杉社長のお話は全く無駄がなく、あまりにもまとまっていることにビックリしました。

大学をご卒業されてから、米国でMBAを取得されたからか、お話の中に出てくる「サプライ・チェイン」のSupplyという言葉を英語発音されているのも印象的でした。

学生時代、お母様に反対されながらも重量挙げを始めたそうです。重量挙げといえばバーベルを地面から頭の上に上げるスポーツ。今、金杉社長が一人ひとりの社員の力を発揮させ、ひとつの熱い集団として下から持ち上げようとされているお姿は「重量挙げに似ているのでは?」と勝手に思っています。

そして「社員食堂で食べているところを時々見かける」と社員の方からお聞きしました。「きっと日頃からこうして社員の方々を見守っているのかな?」と、またまた勝手に想像しています。