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第186回 2004年7月10日放送

森泉知行氏

7/10 「私がケーブルテレビの世界に入った1995年当時、テレビショッピングの売り上げは1日当たり僅か20万円だった。それに比べてスタジオの1日の賃料が100万円だった。とんでもない世界に入ってしまったと思った」と語るのは今では日本最大のケーブルテレビ運営会社に成長したジュピターテレコムの森泉知行社長だ。

現在、ケーブルテレビの加入世帯数は約2500万世帯。国内の全世帯数が約4900万世帯であるから、およそ半分の世帯がケーブルテレビに加入していることになる。正直言って驚くべき数字だが、その内訳を見ると電波が届きにくい難視聴対策として加入している人が約80%も占めている。その中には、相次ぐ高層ビルの建設によって電波障害が増えている大都市圏も含まれている。

7/10 しかし最近、難視聴対策や電波障害対策以外の理由でケーブルテレビに加入する人が急増しているという。人気の秘密はやはり多チャンネル・サービスにあるようだ。地上波の放送はバラエティーやニュースなどを1つのチャンネルに集めた総合編成。しかし、ケーブルテレビは、ゴルフはゴルフだけ、ニュースはニュースだけの専門チャンネルを作ることができるのが大きな特徴だ。

中でも最も人気の高い番組、いわゆるキラー・コンテンツとなっているのがテレビショッピングである。ジュピターテレコムでもテレビショッピングの去年の売り上げは300億円、今年は500億円を見込んでいる。さらに地域密着型の番組も好評のようだ。その地域内の様々なショップ紹介や、地元の少年野球チームの試合結果など、暮らしに密着した情報を発信している。地元企業からの広告出稿も増加傾向にあるという。「地域密着型のチャンネルはケーブルテレビだからこそできる。ビジネスとして、これからますます重要になるだろう」とみている森泉社長。ケーブルテレビ会社と視聴者と地元企業が、どこまで一体となって番組作りに取り組めるかが、地域密着型番組の発展の鍵を握っていると言えそうだ。

7/10 ケーブルテレビ会社が新たに力を入れているのがデジタル化による双方向サービスである。もともと1本のケーブルで放送局と視聴者を結んでいるケーブルテレビは双方向が可能だ。双方向を利用すればテレビショッピングのように売り手と買い手をつなぐだけでなく、病院や警察と自宅をつなぐことにより生活に役立てることができるようになる。また、見たいときに見たいものを見ることができるビデオ・オン・デイマンドもデジタル化することにより可能となり、すでに試験放送を開始している。「こうした付加価値は、使用料にも跳ね返ってくるので重要な戦略だ」と森泉社長は強調した。デジタル・サービスの加入者は年々増えており、2004年3月末時点で約150万世帯。2004年4月以降もアテネオ・リンピック効果などもあり、機器の供給が追いつかないほどだという。

テレビなどの放送業界がインターネットなど通信の世界に参入し、通信業界も放送業界に参入し始めている今、「通信と放送は必ず融合する。だから目指しているのはケーブルテレビという狭い業界ではなく、放送・通信業のトップ企業だ」という社長。ジュピターテレコムもケーブルテレビだけでなく、高速インターネットや電話サービスを開始している。 デジタル放送の普及期を迎え、ケーブルテレビ業界には強い追い風が吹き始めている。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • テレビはエンターテイメント!大きなイベントがあるたびに成長する
  • 目標はケーブルテレビ業界のトップではなく、放送・通信業界のトップ
  • ケーブルテレビだからこそできる地域密着型チャンネルは、様々な可能性を秘めている
  • マネージメントは自分でやっていることを理解し、自分でやること
亜希のゲスト拝見
生き生きと、そして物事に動じない語り口の森泉社長。実は大学卒業後入社された住友商事では、商社マンとしては珍しく、財務やタイヤ・ビジネスなど多種多様な経験をつまれている方でした。その経験から「マネージメントは自分で理解し、自分でやること」と考えていらっしゃる。

この明白な考え方は、ホームページの採用のところにも反映されているようで、的確に必要な人材が記されています。放送終了後、僭越ながら「住商時代と今、どちらが楽しいですか」と伺ったところ、「やっぱりトップは楽しい」と笑って答えていらっしゃいました。