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第182回 2004年6月12日放送

池田弘氏

スポーツビジネスで地方経済は元気になる。それを証明したのが、去年サッカーJ2で劇的な逆転優勝を遂げ、J1に昇格したアルビレックス新潟だ。日本海側に本拠地を構える初のサッカーチームのアルビレックス新潟は、観客者数が他のチームと比べて群を抜いて多く、今やその名は全国区となっている。

6/12J1の1試合の平均動員数は1万7000人強だが、アルビレックス新潟は3万人を超えている。2003年の観客動員数は66万人に達した。経済効果も、チケット代以外にもお弁当やグッズも買うので、31億円にもなると試算された。J1に昇格した今年はもっと効果は大きくなるだろうと予測されている。

しかし最初から好調だったわけではない。かつて新潟にはスポーツの実業団もクラブチームもなかった「スポーツ不毛の地」だった。そのためか2002年の日韓ワールドカップ開催を見越して1996年にアルビレックス新潟を設立した時も、サッカーに馴染みが薄い地元の人にはあまり人気がなく、観客数が2000人を下回る日もあったという。そんなチームのファンをどんどん増やすことに成功したのがアルビレックス新潟社長・池田弘さんである。


6/12池田さんは新潟愛宕神社18代宮司であり、専門学校も経営する地元有力者。「スポーツを通じて地元を元気にしたい」という熱い想いで、池田さんがとった手段はユニークなものだった。自分自身がアメリカの満員のスタジアムで味わった興奮を新潟の人にも味わってもらいたいと、無料招待券6万枚を町内会を通じて配布した。そうすると確かにスタジアムは満員になったが、その8割は無料券で来た人。そのため「チケットのバラまきだ」 「無料で見られると思い、チケットを買わなくなる」などと非難の声も出たそうだが、池田さんは「1度、満員のスタジアムの興奮を味わえばまた見に行きたいと思うはず」と無料券の配布を辞めなかった。

その狙いは見事に的中。観客数が増えたこともあってチームは強くなり、強くなるに連れ観客数も増えるという好循環になった。2003年の無料券は2割まで減少。今年度のシーズンチケットもすでに二万枚以上が売れている。

6/12アルビレックス新潟のもう1つの特徴は地元密着型であること。他の強豪クラブは大手企業がスポンサーになっているが、アルビレックス新潟は地元企業およそ170社が支援している。また地元の人が足を運びやすいようにと入場料を安く設定。Jリーグの入場料の平均は1人4500から5000円であるのに対して、アルビレックス新潟は3000円。家族で観戦できるよう子供料金も設定(1人700円)しており、親子4人で観戦しても7400円と割安だ。

このような地元密着型経営で地元住民のつながりが深くなり、商店街はアルビレックス新潟のチームカラー・オレンジに染まり、様々な関連グッズが誕生している。地元では「若い人が増えて活気づいている」と好評だ。またアルビレックスのニュースがスポーツ紙の1面を飾ることもあり、新潟の認知度も向上、県民にも自信が出てきているという。今年からJ1チームになったアルビレックス新潟。サポーターも新潟の人だけでなく全国に広がり始めている。スポーツによって新潟は着実に変わりつつある。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • スポーツで地元を元気にしたい
  • スタジアムを満員にすることで選手とサポーターの一体感、そして興奮が生まれる
  • スポーツビジネスは地元密着にすれば成功する
  • スポーツビジネスのターゲットは家族だ
  • 地方が東京に勝つには、東京と同じ事をしていてはいけない
亜希のゲスト拝見
アルビレックス新潟のチームカラーであるオレンジ色のシャツを身にまとい、名刺入れまでもがオレンジ色だった池田社長。どれだけチームに力を注いでいるかが伺えました。ちなみに、このオレンジ色は日本海に沈む夕暮れをイメージしているそうです。

しかし、神社の宮司とサッカー。関連性が薄いように思いましたが、「神社はもともと寺小屋があって。地元の情報を発信する役割がありました。それにお祭りもやりますし、似ていますよ。」とおっしゃっていました。たしかに広く解釈すれば似ているのかも!?

アルビレックス新潟が証明したスポーツの興奮が醸し出す力。プロのバスケットチームも設立した池田社長の地方活性化策は、きっと他の地方にも大きな輪となって広がっていきそうな予感がします。