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第175回 2004年4月24日放送

光吉俊二氏

「こんな容姿ですが、私は悪い人ではありません」とユニークに挨拶されたベンチャー企業・エイジーアイ(AGI)の光吉俊二社長。
武道家として鍛えてきた大きな体に、丸刈りの頭とヒゲ。確かにインパクトのある方だ。そして何よりも驚きなのは、光吉さんは鉄腕アトムのようにコンピュータが人の感情を理解できるST(Sensibility Technology) という全く新しい発想のコンピュータ・システムの研究・開発に携わっていることである。

4/24鉄腕アトムと言えば、最近2本足で歩いたり、ダンスが出来たりする人型ロボットの開発には目を見張るものがある。これらは主に「動作制御」の技術が急速に進歩したことによるものだ。また人間の頭脳に近づけようとして、以前から「人工知能」の研究も行われてきた。コンピュータの演算スピードや記憶容量の増大によって、この分野の研究も急速に進んできている。しかし末吉さんの研究は、人が怒ったり喜んだりという、おもに人間の右脳が司っている「感情」に着目している。

では、どうやって人間の複雑な感情を読み取るのか?
4/24答えは、人の言葉を論理的に分析するのではなく、いわば音楽のように波動として捉えることにあるという。例えば「コンニチハ」のひと言でも、悲しい時と嬉しい時では自然と言い方は違う。そんな人が話す言葉のリズム・強弱・大小・音程等を分析して、そこに込められた感情を分析し、読み取る仕組みである。

多摩美術大学を卒業し、前衛的な彫刻家として活動していた光吉さんだが、CGの作成などを通じて次第に科学の世界にのめり込んでいったという。そのためロボットの世界に多い工学系の研究者とは異なる発想ができたのかも知れないと自らを語った。

光吉さんの研究によると、人間の感情は約135通りに分類できるそうだ。これらを数値化できれば、個人一人ひとりの感情の原点を捉えることも可能になる。この考え方を応用すれば、一人暮らしの高齢者がコンピューターとの会話を通じて、その日の健康状態を管理できたり、鬱など心の病に関しても、その根本的な原因を捉えることで新しい治療が可能になるかも知れないというから、STの応用分野は計り知れない。

4/24光吉さんのこのユニークな研究に真っ先に着目したのは3次元CGを開発した米SGI社の日本法人、日本SGIの和泉法夫社長だ。AGIと共同研究を締結し、STの研究を全面的にバックアップしている。大きな後ろ盾を武器に光吉さんは、オールドエコノミーからハイテク企業まで積極的にプレゼンテーションに駆け回っており、大手自動車メーカーとの話も進んでいるそうだ。

使い込めば使い込むほど、その人の癖や性格に合わせてくれる自動車・・まるで映画の一場面のような話も、意外と早く実現するかもしれない。21世紀は「感性ビジネスの時代」とも言われるが、光吉さんが開発を進めているのは、まさに人間と機械を融和させる、人に優しいコンピュータと言えよう。

語録 〜印象に残ったひと言〜
  • 人に優しいコンピュータを作りたい(ハイテクからハイタッチへ)
  • 科学(デジタル)と芸術(アナログ)の融合こそ自分の役割
  • 21世紀は感性ビジネスの時代
  • 理想とするビジネスモデルは、コカコーラ(原液の強力な特許)、インテル(標準化技術)、ジレット(半永久的な需要)の3社
語録 〜印象に残ったひと言〜
「この人はとても楽しそう」−−光吉俊二さんの第二印象だ。
第一印象はというと、やはり、その風貌から「この人は何者?」と思ってしまったが、話をしてみると、常に笑顔で楽しそうである。きっとこの方は、子どもが色々なことに対して「どうして?」と思う、あの好奇心を今も失っていないのだと思う。

「1つの石から2つの彫刻が出来た。これは数学的にどうやって処理するのだろう?」芸術家時代に疑問に思ったそうだ。
「1つの石から2つも出来た。ラッキー!」で終わらないところが、光吉さんの現在の研究の原点かも知れない。今まで多くの企業のトップの方々とお会いしているが、光吉さんが一番楽しそうだ。楽しんでやるのは新しいことをする時の大きなエネルギーになっているのかもしれない。ちょっとうらやましい生き方だと思いませんか?
去年から、もっとコンピューター技術について学びたいと大学院生にもなった末吉さん。きっと学生生活も楽しんでいるのでしょう。