横山秀夫サスペンス 陰の季節3「密告」
警察の警務課を舞台に、警察内部で起こった密告事件に絡む人間模様を描く
警察の警務課を舞台に、警察内部で起こった密告事件に絡む人間模様を描く
警視庁警務課調査官・二渡真治は、人情もあるが常に正しい判断を下すことで、仲間からの人望も厚い。ある日、警務課宛てに一通の密告書が送られてきた。内容は、浜浦署生活安全課長の曾根和男警部が、取締り対象のパブ「夢夢」のママ・あゆみと不倫をしているというもので、曾根は5日後に実施される警視昇任面接を受けることになっていた。地味だが誠実な曾根を警視に推薦している二渡は、昇進間近の曾根を狙った内部の人間の仕業と推測し調査を開始、昔の部下・柳に密告者探しを依頼した。柳は二渡の依頼を快諾し、さっそく調査に乗り出す。しかし、二渡と柳が内密に捜査を進めているのを偶然目撃した二渡の同期生・前島は「柳に捜査をさせるべきでない」と忠告する。過去のゲリラ事件で、柳は内定捜査を単独で進め、手柄を自分のものにしようとしたことがあったのだ。二渡自身も、指示を無視して深追いする柳に警戒心を抱いていたが、案の定、まもなく柳は音信不通になった。翌日、曾根を尾行した二渡は、曾根の母親が入院する病院に辿り着いた。そこには、余命幾ばくもない母親に「警視以上の階級でなければ入れない本部長室に入ってみたい、自分も警視になるチャンスがある」と語りかける曾根の姿があった。