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地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2013年2月26日 O.A.

#97 ロンドン発 ドーバー海峡へ

イギリス

地図

今回は、イギリスの首都・ロンドンから南海岸のドーバーへ。ドーバーはフランスとの国境に当たる港町。かつて、多くの冒険家たちが横断を目指した大陸のかけ橋です。ドーバー海峡に面した町や海岸沿いの白亜の断崖を巡りながら、向かいます。

ロンドン
旅の始まりはヨーロッパを代表する都市・ロンドンです。まずはポートベロー・マーケットにやってきました。アンティークを収集することが大好きなイギリスの人々が集う英国で最も大きな骨董市です。年代物のカメラにフィギュア…実に様々な骨董品と、ユニークな店の人たちに出会いました。「バスでドーバーに行くつもり」だと伝えると、気さくな店主がブライトンに立ち寄ることをすすめてくれました。そこは海沿いの美しい町なのだそうです。まずはブライトンへ向かい、バスを乗り継いで海岸線をひた走り、ドーバーへ向かうことにしました。

ブライトン
あいにくの雨の中、ブライトンに到着しました。バスで知り合った若き画家と一緒に浜辺へ出てみましたが、嵐のような海風で、歩くだけでも大変な状態でした。にもかかわらず、何と、荒波の中、地元の人が泳ぐ姿を発見。聞けば、職場が近く、どんなに海が荒れていても、毎日、泳ぎに来ているのだとか。画家に町を案内してもらった後は、彼のアトリエへ。話し込んでいるうちに、日が暮れて、バスの最終時刻を過ぎてしまいました。泊まるところもなく、途方に暮れていたところ、アトリエに泊まるよう画家が勧めてくれました。画材道具でいっぱいの部屋の片隅に毛布を敷いてもらい、夜を明かすことに。質素な寝床ではありますが、何だか、学生時代に戻ったような夜でした。

イーストボーン
翌朝、画家が勧めてくれたイーストボーンのセブンシスターズへ行ってみることにしました。海岸沿いの展望台に立ってみると、そこには、巨大な断崖絶壁が。真っ白な石灰岩で作られた崖、セブンシスターズです。美しくも、圧巻な景観でした。この海岸も、吹きすさぶ風に見舞われましたが、最近、ネットで知り合ったばかりという陽気な熟年カップルと一緒に浜辺を散歩。崖から崩れ落ちた石灰岩を見たり、浜に落ちていたボールでサッカーをしたり、ここでも楽しい出会いがありました。

ヘイスティングス
続いては、ドーバー海峡に面した漁港の町、ヘイスティングスへ。イーストボーンで知り合ったカップルから、新鮮な魚が食べられると聞いていたのですが…海辺にいた漁師に尋ねたところ、今日は波が荒く、漁船が出なかったそうです。魚市場にもいってみたのですが、水揚げが無かったので、何もありません。諦めて、バス停に戻ろうとした道の途中で、魚屋さんを発見。昨日、水揚げされた地元の魚が並んでいました。気の良い店のご主人のお勧めは地元の人たちのソウルフフードである新鮮なニシン。店の中で加工している、できたてホヤホヤのニシンの燻製をごちそうになりました。今回、フィッシュ・アンド・チップスは食べたけど、新鮮な地元の魚は別格。“うまいもの無し”と言われるイギリスにも、おいしい魚料理があることを発見しました。

ドーバー
ヘイスティングスからバスで3時間。最終目的地のドーバーに到着しました。大陸に一番近い町と言われるドーバーは、古くから英国にとって防衛の最前線となってきた場所。その象徴であるドーバー城を見ることができました。頑丈そうな壁に囲まれ、幾つもの争いを見届けてきたドーバー城。今は静かに高台から町を見守っていました。そしてドーバーの港へ。ドーバー海峡を泳いで横断するため、古くから、多くの冒険家たちが訪れた場所ですが…海辺で、ある看板を見つけてしまいました。そこに書かれていたのは、“危険 泳ぐな”の文字。時代の移り変わりを感じながら、かつて多くの冒険家や戦士たちが見つめていたであろう、ドーバーの大海原に沈む夕日を待つことにしました。