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地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2012年10月16日 O.A.

#79 市内バスで巡るストックホルム

スウェーデン

地図

大小いくつもの島が集まって出来た都市ストックホルムは、「北欧のヴェネツィア」とも称される水辺の町。路線バスは網目のように町を走り、庶民の足として欠かせない交通機関です。そこで今回は、古都ストックホルムの知られざる魅力を発見するべく、路線バスで市内を隈なく巡ります。路線バスに乗れば、地元の暮らしを垣間見ることができるし、乗り合わせた乗客の人情に触れることもできます。北欧屈指の美しい街、その素顔に触れるバス旅にいざ出発進行!

まず手に入れたのは市内バスに3日間乗り放題の乗車カードです。今回はこのカードを片手に、3日間気ままな旅を楽しみます。

最初のバス停で出会った女性に誘われて、彼女の職場について行くことにしました。「面白い場所よ」と案内して貰った職場は、なんとストックホルムの市庁舎でした。しかもこの市庁舎には“青の間”と呼ばれる世界的に有名なホールがありました。それはノーベル賞の受賞者が晩さん会を開く場所だったのです。

町の北東でバスを降りると、これから市場にザリガニを仕入れに行くという初老の男性に出会いました。スウェーデンの人々はザリガニが旬をむかえると、仲間や家族が集まり、ザリガニを肴にパーティーを楽しむ習慣があるのだそうです。そこで彼の招待でザリガニパーティーにも参加させて貰う事になりました。ストックホルムに暮らす人々の素敵な宴に同席し、和やかに夜が更けてゆきます。

2日目。スウェーデンの人たちは幼い頃から自然の中で教育を受けるのが伝統だと聞きました。そこで保育士の女性とバス停で待ちあわせて保育幼稚園を見学に行きます。園児たちは裏山を駆けまわり、天然のブルーベリーを集めて潰し、それを絵具代わりにして画を描いていました。まさに自然を体感する課外授業といったところでしょうか。のびのびと元気な子どもたちの笑顔に癒されました。

再びバスに乗ると今度はかわいい民族衣装を着た夫婦に出会いました。手にはスウェーデンの伝統楽器のニッケルハルパがあります。これから公園で仲間たちと音楽のセッションをするのだと聞き、急きょお二人に同行させてもらうことにしました。様々な楽器を持って公園に集まって来るのはアマチュアの伝統音楽の愛好家たち。セッションしている間にもぞくぞくと演奏者が増えていき、通りがかりのオーディエンスも拍手喝采をおくっています。さながら野外コンサートのような盛り上がりに心が躍りました。

旅の最後に乗ったバスで、これから仲間と野外パーティーをするという若者に出会いました。誘われて行ってみると、そこはストックホルム市内をぐるりと見渡せる丘の上。地元の人々しか知らない穴場スポットでした。最高の景色の中、地元を愛する若者たちと乾杯! 忘れられない旅の出会いになりました。