地球バス紀行トップへ戻る

地球バス紀行

毎週火曜22時オンエア

人間の鼓動に出会う旅、一篇の旅物語
旅の案内役は「バス」です。大陸を横断する長距離バスから都市部を毛細血管のほうに走り回る生活導線バス。早足の旅ではけっして見えて来ない車窓の風景が、乗り合わせた人との出会いが、いろいろな物語を紡ぎだしていきます。

2011年11月15日 O.A.

#33 雲上の世界へ タトラ山地

スロバキア

地図

今回の舞台は、中央ヨーロッパにあるスロバキア共和国。
国土の3分の1が森林地帯という雄大な自然の中をバスで巡ります。
旅のふりだしは、東部の工業都市コシツェ。そこから路線バスを乗り継ぎ、
スロバキアの象徴として人々に愛されているタトラ山地を目指します。

道行きには、バスを途中下車して、中欧最大級の城・スピシュ城へ。まるで天空の城のように丘の上に堂々と聳える姿は圧巻です。このスピシュ城は、13世紀にタタール人の襲来に備えて造られた後、18世紀に火災に遭ってしまいます。しかし今ではスロバキアを代表する観光地として世界中から見物客が押し寄せています。

タトラ山地の麓にある町ケジュマロクに到着すると、不思議な造りの教会を見つけました。プロテスタントの木造建築教会です。かつて、この地域のプロテスタント教会は、丈夫な石材ではなく、安価な木材で建てることしか許されていなかった時代があったそうです。この教会は当時、プロテスタント信仰が強かった近隣国スウェーデンから派遣された船大工によって建てられました。船造りの技法が注がれた屋内は、窓が船のように丸く、天井は船底のように湾曲していて、独特の雰囲気を醸しだしています。

旅のクライマックス。いよいよタトラ山地の名峰ロムニツキー・シュティートの頂きに向かいます。麓でバスを降り、ロープウェイを乗り継いで2534mの山頂へ。その頂に広がっていたのは、息を飲むような絶景でした。

旅の大詰めに、バスは世界遺産のヴルコリネェツ村に辿りつきます。大自然に囲まれた小さな村。住人は、なんと18人です。そこでは山羊を飼って昔ながらの生活をしている元気なおばあさんと、素敵な家族が迎えてくれました。
旅人が最後に出会ったのは、山で生きる人々の素朴で逞しい暮らし。
このヴルコリネェツ村には昔から変わらない自然と一体になって生きる姿があったのです。