足のトラブルのクスリ

履物の歴史&水虫の原因『白癬菌』の発見


歴史上もっとも古い履物。それは・・・?
今からおよそ4000年前、紀元前2000年頃のエジプトで履かれていたサンダル。
パピルスの葉を編んだもので、当時のピラミッドなどから発見されています。

一方、日本の記録に残っている古い履物は、平安時代に庶民が履いていた草履。
サンダルも草履も、足の裏を守るための履物で圧迫はしなかったため、足のトラブルはほとんどなかったといいます。

履物の影響による足のトラブルが急激に増えたのは、今からおよそ500年前のフランス。
その原因となったのが、現在は女性が履いている、ハイヒール!
実はこのハイヒール、元々は男性用の靴として使われていました。かかとの高いハイヒールの靴を履くと、馬に乗った際、鐙に足がしっかりと引っ掛かり、馬上で安定感が増したのです。

このハイヒールを、初めて礼装用の靴に使ったのは、18世紀フランスの王様ルイ14世。
太陽王とも呼ばれた彼の最大の欠点、それは背が低いこと。そこで、ルイ14世は靴のヒールを高くして、背を高くみせたのです。それを見た貴族たちは、ルイ14世の真似をしようと、こぞって靴のヒールを高くするようになりました。その結果、足に掛かる負担が増え、タコやウオノメといった足のトラブルも次第に増えて行きます。

この時代のヨーロッパで、タコが出来た際の治療でよく使われていたのがレモン!
タコが出来た時は、その患部に薄く切ったレモンを一晩中当てておく。こうして直したとされています。

一方、ウオノメには、現代の知識からみても根拠のあるものが使われていました。
それは、ニンニクとひまし油を混ぜ合わせたもの。ひまし油には皮膚疾患に効果的なビタミンAが豊富。
また、生のニンニクはほどよく皮膚を刺激。この相乗効果が効き目を発揮したようです。

さて、今の季節、足のトラブルで忘れてならないのが水虫。
医学的に、水虫の研究が行われるようになったのは、19世紀末になってから。1892年、フランスの医師・サブロー博士は、人間の手や足から検出されたカビに関する研究を始めました。この研究により、あせもなどの湿疹と、水虫などの皮膚病とが区別出来るようになったのです。

このサブロー博士のもとで、研究に励む一人の日本人がいました。それは後に、日本の水虫研究の祖と言われた太田正雄。太田博士は日本へ帰国後は、水虫に関する研究に没頭。そして、1921年、患者の足に出来た発疹から、細菌の分離・培養に成功!日本の医学者として初めて、白癬菌を発見しました。白癬菌はカビの一種で、水虫の原因となる菌だったのです。この発見で、水虫という皮膚病の存在が、医学的にも確認されたのです。
こうして、太田博士は我が国の水虫研究のパイオニアとして、歴史に大きく名を残すことになりました。



"足のトラブル"〜タコ・ウオノメ・巻き爪の原因と症状〜


足の裏によく出来るタコ。それは、皮膚の表面の一部が厚く硬くなってしまう状態です。
では、なぜ足にタコが出来てしまうのでしょう?

渡辺晋一先生

帝京大学医学部皮膚科主任教授・渡辺晋一先生に伺いました。
渡辺先生:「体重や一定の機械的な刺激を受けると、皮膚はだんだん硬くなります。皮膚表面の角層がどんどん厚くなって、外からの刺激が内部に及ばないようにする反応なのです。その結果、その場所だけ、どんどん硬く盛り上がってくるのです。」
強い刺激を受けた皮膚の角質層が黄色くなって、厚く硬く盛り上がる。それがタコの特徴。
ただし、感覚が鈍くなる程度で痛みが出ることは少なく、特に気にされない方も多いようです。
しかし、そのままの状態で放っておくと・・・、
渡辺先生:「足の裏に出来るタコは、あまり盛り上がらずに皮膚に食い込むようになります。これがウオノメで、足の裏に硬い物を踏んでいるような状態です。そうすると、皮膚に食い込んだウオノメが刺激を受けて痛くなります。」
内側に入り込む

皮膚の外側が盛り上がるのがタコですが、さらにそこへ繰り返し刺激が加わり続けると、
タコが皮膚の内側に入り込んでしまい、中心部分が硬い芯のようになります。
ウオノメ

これがウオノメの正体。
痛みが出る

ウオノメになると、芯が角質層の下の神経を刺激して、少し動いただけでも痛みを感じるようになります。
ウオノメへの悪化を防ぐには、出来たタコを早く治療することが大切。
では、実際にタコが出来てしまったら、どうすれば良いのでしょう?

渡辺先生:「盛り上がったタコは、削れば平らになりますが、皮膚に食い込んだウオノメは、皮膚を深く削る必要があります。医者でも硬い状態だと削るのが難しいので、皮膚を柔らかくする軟膏があります。皮膚を柔らかくする軟膏を続けて使って、皮膚を柔らかくふやけさせてから削ると安全です。」

市販の薬にも、タコで硬くなった皮膚を柔らかくするシールがあります。
皮膚が柔らかくなれば、タコやウオノメも削りやすくなるわけですね。

続いてのトラブルは、斎藤さんも長年悩んでいるという巻き爪。足の爪の両端が、内側へ巻き込むように伸びる病気です。

この巻き爪の原因は?

渡辺先生:「きつい靴などで足を圧迫すると、爪が横から圧迫されて、爪の端が曲がって下に食い込むようになります。そしてあと一つの要因は、爪の切り方で、爪を切るときに両側の角を切ると、皮膚に食い込むようになります。」
巻き爪イラスト

巻き爪になると、指の肉に爪が食い込み、激しい痛みを感じます。
厄介なことに一度、爪が内側に巻いてしまうと、たとえそこを切っても、新しい爪には内側へと伸びる癖がついてしまいます。
このままだと、手術しか手の施しようがなくなります。
では、巻き爪にならない爪の切り方とは?

渡辺先生:「爪の角は切らずに、皮膚の上に爪が伸びてから、その先を切るようにしましょう。
爪の角を切って皮膚に隠れるような切り方をすると、巻き爪になってしまいます。爪の角を皮膚の上に出すことがポイントです。」
ポイント

足が人目につきやすくなる、これからの季節。足に合った靴を選び、正しく爪を切り、
タコ・ウオノメ・巻き爪を防いで下さいね。


"足のトラブル"〜水虫の原因と症状〜


水虫の原因となるのがカビの一種・白癬菌。
どうしてカビが私達の皮膚に付くのでしょう?

渡辺先生:「白癬菌は、ケラチンを栄養源として繁殖するカビです。このケラチンが一番多いのが、皮膚の角質層で表面の垢となって落ちるところなのです。」

白癬菌は、高温多湿な環境を好み、栄養源となる蛋白質ケラチンがあれば、どんどん増えていきます。
そこで白癬菌が人間の皮膚の表面にある角質層に感染すると、角質層の死んだ細胞であるケラチンを栄養にして増殖。次第に皮膚の深い所へ侵入していきます。
かゆみがでる

白癬菌がまだ、皮膚表面の角質層にいるうちはかゆみも出ません。
しかし、増殖して角質層の下の層に侵入すると、そこで炎症を起こし、かゆみを感じさせます。
皮膚がふやける

実際に水虫になると、足はどんな状態になるのでしょう?

足の指の間に感染した水虫は、皮膚がふやけてボロボロになっており、かゆみも感じられます。
そして、足の皮膚全体がカサカサに乾燥して白くなり、ひび割れて痛みさえも出てくる場合もあります。
でも、水虫はなぜ足に出来るのでしょう?

渡辺先生:「カビは温度・湿度が高い所に繁殖します。
人間の身体の表面の中で、最も温度・湿度が高い場所が足なのです。文明人は靴を履くので、温度・湿度が高いからです。」

白癬菌が繁殖するのは、摂氏25度・湿度70%以上という環境のもと。
靴や靴下に覆われている足はその条件が整っているため、白癬菌の絶好のすみかとなってしまうわけです。

次に、なぜ水虫は他人にもうつるのでしょう?

白癬菌は生命力が強く、皮膚と一緒に体から剥がれ落ちても、栄養源のケラチンさえあれば1年近く生き続けます。
例えば、家庭内で水虫にかかっている人とスリッパを共有したり、風呂場の足ふきマットを共有すると、そこから感染してしまいます。

ではこの水虫を退治するクスリとは?

水虫の薬には、どれも白癬菌を退治する成分が入っています。
例えば、その一つが塩酸アモロルフィン。この成分には、皮膚の角質層の奥深くにまで浸透して、白癬菌の増殖をブロックする働きがあります。
現在、こうした水虫の薬には主に、スプレータイプ液体タイプ、そして軟膏タイプの3種類があります。
スプレータイプの薬は、患部に噴射すると、皮膚表面の水分を吸収して乾燥させ、水虫増殖を防ぎます。
液体タイプは、患部に押し当てることで薬が角質層に浸透。そこで水虫退治を行います。患部がベタつかないのも特徴。そして軟膏タイプは、患部に直接塗りこみ、広い範囲に一度で薬を塗れるというメリットがあります。
水虫は、患部だけでなく、その周りにも白癬菌のいる可能性が高い病気。薬は、患部から周囲へと広く塗るようにしましょう。水虫の薬は、初期の場合は2〜3ヶ月、それよりひどい場合は半年間は使うようにしましょう。

他に、水虫の治療で注意することは?

渡辺先生:「水虫だと思って薬を使っても治らない場合は、水虫ではないと考えた方が良いでしょう。水虫でない場合で一番多いのが湿疹の可能性です。水虫かどうかを確かめるために、専門医の検査を受けるようにしましょう。」
普段から足を清潔にするように心がけ、もしも水虫にかかったら、薬を丹念に塗って不愉快な水虫を退治して下さい!

ハイヒールってもともとは男性の履物だったんですね!
私も、マラソンのスニーカーは1サイズ大きいものを履くようにしているんですよ。