どうして“冷え症”になる?


こすってもこすっても手が温まらない・・・、足が冷たくて眠れない!
私って冷え症?
こんなお悩みを持つ方!
一体どうして冷え症になってしまうかご存知ですか?
教えてくださるのは、東邦大学附属大森病院東洋医学科・三浦於莵先生。

三浦先生:「血の巡りが悪いと冷え症になります。これは、東洋医学でも西洋医学でも同じことをいっています。」
血の巡りが悪いと身体が冷える。つまり、血液が「温かさの元」になっているというわけです。その血液が手足の先まで届いていないと冷え症になるんですね。

では、そもそも血液はどうして熱をもっているのでしょうか?
キーワードは、肝臓と筋肉!
口から入った食べものは、胃や腸で消化吸収されたあと、肝臓で人間の活動源となるエネルギーに生まれ変わります。
このエネルギーに変わる時に熱が発生するのです。
身体の中に発生する熱のうち、およそ4割は、この肝臓で作られます。
そして、残りの6割の熱は、筋肉で作られています。
身体を動かす時、筋肉は熱を作り出しています。
肝臓と筋肉で作られた熱は、血液によって全身に運ばれ、私達の体温を一定に保っているのです。
もし、血液の流れが悪くなると、当然、熱もうまく全身に行き渡りません。
特に末端の手足の先に血液が届かなくなって、手足が冷た〜い冷え症になってしまうのです。

では、どうして血液の流れが悪くなってしまうのでしょうか?
血液のスムーズな流れを妨げるのは、不規則な生活やストレス。
そして、足に合わないきつい靴や、窮屈な下着の締め付けなど。
これらが原因で、血液の流れを司る自律神経のバランスが崩れてしまいます。
すると、手足の血管は収縮し、末端の血流が悪くなって冷え症になります。

また、肝臓や筋肉で作られる熱の量が少ないことも冷え症の原因になります。
忙しさにまぎれて朝食を抜いたり、無理なダイエットをしていませんか?
食べる量が少ないと、熱を作る材料が不足します。
すると、作られる熱の量が少なくなり、つらい冷え症に苦しむことになります。
そして、筋肉そのものの量が少ないと、熱が充分に作られません。
また運動不足で、筋肉を動かさないと作られる熱の量は少なくなります。
充分な量の熱が作られないと、手足に熱がまわらない・・・つまり冷え症になってしまいます。

血行不良。そして、肝臓や筋肉で作られる熱の不足。これが冷え症の二大原因です。

ところで、冷え症といえば、手や足と思い込んでいませんか?
実は、それだけではないのです!
三浦先生:「冷え症というと、手足だけだと思いがちですが、実は身体の中、特に胃腸は冷えやすくなります。」
胃腸も冷え症があるんです。
血液は胃や腸が活動するために必要な熱も運んでいます。
つまり、血流が不足すると、胃腸の機能が低下してしまうのです。
三浦先生:「胃腸が冷えてしまうと、食欲不振・下痢・便秘・もたれを起こしてしまいます。血液は胃や腸にも流れていますから、手足だけではなく、全身が冷え症になる可能性があります。」

Q:では、冷え症の人が気を付けるべきことは?
三浦先生:「当たり前ですが、まず冷やさないことです。そして、冬場にビールを飲むと身体を冷やしてしまうので、冷え症の人は乾杯だけにしておいて、できれば日本酒にしておくと身体が温まります。」
冷え症の自覚がある方は、この冬は、ビールは控えて日本酒を選んで下さい。
同じアルコールでも、日本酒は身体を温め、ビールは身体を冷やすんですね。
Q:では、手足が冷えて眠れないとき、何かいいものはありませんか?
三浦先生:「手足が冷えて眠れない時は、サフランをおすすめしています。身体を温めると同時に、眠りにつきやすくなります。」
サフランは、パエリヤなどの色や香り付けでおなじみ。
寝る前にお茶にして飲むと、身体をよく温めてくれます。
よく食べて運動をして、サフランのお茶を飲む。
皆さんもお試し下さい。

“冷え症”の歴史


冷えないように身体を温めたい。先人達は、お灸や湯たんぽなど、様々な冷え対策を行ってきました。

文献に「冷え」の症状が初めて登場したのは、紀元前200年ごろの古代中国。
中国最古の医学書、「黄帝内経(こうていだいけい)」を紐解いてみましょう。
こちらは人間の病気や身体の成り立ちについて記されており、後の東洋医学に大きな影響を与えました。身体を冷やすと、腹に痛みを起こし病気になると書かれています。
この頃から、冷えが病気の原因であると考えられていたということですね。

では、当時、冷えを治すために使われていたのは、シナモンの樹皮から作られた生薬、桂皮。
こちらを煎じて飲んでいたようです。
これは現代的にみると、桂皮に含まれる「ケイヒアルデヒド」の成分に手足の血管を拡げる作用や発汗作用があり、冷えに効果があることが分かっています。
わが日本の「冷え」の歴史で特記すべきは江戸時代!
京の町で親しまれた「商人買物独案内(しょうにんかいものひとりあんない)」。
これは、庶民が買い物をするときに便利なように京の町の様々な店や商品を紹介した、いわば京都タウンガイドブック。
ここに「ひえぐすり」や「婦人ひえぐすり」など、冷えに効果がある様々な薬の宣伝が載っていました。
       
また薬の他に、「冷え対策」として、江戸時代に庶民の間で使われたのが、「よもぎ」。
身体を温めるお灸の原料としてもおなじみですね。
よもぎの葉を煎じて飲む。
お風呂に入れて「よもぎ湯」にする・・・と様々な冷え対策に使っていたようです。

冷えるといろんな病気が出てしまう。昔の人は経験的に「冷え症」にならないよう、あらゆる努力を重ねてきたのです。

“冷え症”のクスリ


冷え症のクスリは、主に漢方薬です。
身体を温める、つまり、血の巡りを良くして、冷えを改善するのが目的です。
例えば、ショウキョウ。
私達が普段口にする生姜(しょうが)を乾燥させたもので、冷え症に使う漢方薬ではおなじみです。
三浦先生:「ショウキョウは、胃腸を温めます。そして、身体全体も温めてくれます。」
実際の漢方薬では、この胃腸の血流を回復するショウキョウと一緒に、手足の血流を回復するトウキが使われます。
Q:では、ショウキョウとトウキを使った漢方薬について教えて下さい。
三浦先生:「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)という、とても長い名前のものです。」
当帰四逆加呉茱萸生姜湯(トウキシギャクカゴシュユショウキョウトウ)。確かに長い名前ですが、冷え症の薬として一番よく使われるそうです。
三浦先生:「手足が冷えるのを非常に良く温める働きがあります。しもやけができる人、手を上げていると指先が冷えて白くなる人に効果があります。」

続いて、漢方薬のほかに、冷え症に効果がある薬をご紹介しましょう。
それは、ビタミンE配合の飲み薬!
ビタミンEには、血管を拡げて、血液の循環を良くする働きがあります。
血液の循環が良くなれば、温かい血液が末端まできちんと流れて冷え症が改善されます。

クスリを上手に使って冷え症を克服し、毎日を元気に過ごしましょう!
サフラン茶は飲みやすかったです。本当に身体がポカポカしてきそうでしたよ。
サフラン茶は簡単に作れるし、おすすめですね。くせもないし、見た目もきれいですしね。