MRIとは?


身体を傷つけることなく、鮮明に体内を映し出し、病気の発見におおいに役立つMRI。
MRIとは、日本語にすると「磁気共鳴装置」。
つまり、MRIというのは、磁気を利用して画像を映し出す装置なのです。
MRI装置には強い磁石が入っており、検査の際にはご覧のようにクリップが張り付くほどの磁気を発生します。
MRIの内部には、磁石のN極とS極が作り出す磁場ができており、これを利用して検査をしています。
この状態で人間に電磁波を当てると、身体の中の水分が反応します。
MRIはその水分の反応を読み取って、体内の様子を画像にしているのです。
MRIの画像は断面画像。しかも、一定の角度だけでなく、あらゆる角度から見ることが可能です。
検査可能な場所は、頭部、脊髄、腹部、骨盤部と多岐にわたっています。
頭部では、脳梗塞や脳腫瘍を発見することができます。
このように疾患がある部分は白く映し出されます。
正常の状態と比べると、違いがはっきり分かりますね。
脊髄では、椎間板ヘルニアや圧迫骨折を発見するときにも役立っています。
正常のものと比べると、椎間板がはみ出しているのが確認できます。
続いて腹部では、肝臓や胆のう、腎臓などのがんを発見することができます。
骨盤部のMRIでは、子宮、膀胱、前立腺の病気の発見に役立っているのです。
また臓器だけでなく、MRIによって血管の病気を確認できるようにもなりました。
これら、血管のMRI画像は、脳の動脈瘤や血栓の早期発見に大いに役立っています。
磁場を使ったMRIは、あらゆる病気を発見するために幅広く使われています。

MRI発明の歴史


ヒトがかかる病気を少しでも早く見つけたい!
そんな探究心がヨーロッパで最も高まったのは16世紀のことでした。

ベルギーの解剖学者・ベサリウス。
彼は1543年に27歳の若さで、解剖学書「ファブリカ」を発表しました。
ベサリウスは、自ら人体を解剖して、人間の筋肉や骨の位置、その構造まで、極めて正確かつ緻密に描き上げています。
これは当時としては画期的であり、ベサリウスは解剖学の父と言われています。
この「ファブリカ」により、体内の様子が分かると、今度は身体の外から病気を診断したいという思いが高まっていったのです。

そして、1816年。
フランスの医師・ラエンネックにより聴診器の発明。
世界中の医師達は、この聴診器を使うことで身体の外から体内の音を聞くことができ、心臓、肺などの多くの疾患を発見することに成功しました。

さらにそれからおよそ80年後、ついに、生きたままの人間の体内を見ることが可能になりました。
それは1895年、レントゲンによるX線の発見!
人間の身体の中を透視して見ることができるX線は奇跡に近い、まさに画期的なものでした。
しかし、X線は長時間浴び過ぎると、かなり危険な影響を及ぼすこともあります。
そこで、より安全な方法で、体の中を見ることはできないものかと世界中で研究が進められました。
そしてそのヒントは、医学界ではなく物理の世界で得られたのです。

1946年。 アメリカの物理学者・ブロッホとパーセル。
彼らは、磁気に関する研究を行なっていました。
その結果、磁気を使えば物体を傷つけることなく、その中身が分かる方法を発見したのです。v それをヒントにしたイギリスの物理学者マンスフィールドは、1973年、人間を磁場の中におき、特定の電波を当てることで人間の断面画像を映し出すことに成功しました。
この技術をもとにして1977年、MRI装置が医療の現場に登場したのです。

わずか30年ほどの歴史。
しかし、いまや、MRIは医療の現場に欠かせない装置として世界中に普及しています。

医療現場ではMRIはどんな使われ方をしている?


MRIが最も活躍している脳神経外科。こちらではMRIをどのように使っているのでしょう?
前田病院脳神経外科・前田達浩先生に伺いました。

前田先生:「いわゆる症状がない小さな脳梗塞の予備軍、隠れ脳梗塞の発見に非常に重要な画像を映し出します。」
これが、隠れ脳梗塞といわれるラクナ脳梗塞のMRI画像。
小さな脳梗塞が白く映し出されています。
隠れ脳梗塞とは、脳の血管が完全に詰まっているわけではなく、一部だけが塞がって血流が悪くなっている状態、または過去に一時的に血管が詰まって、軽い脳梗塞が起こっていた場所のこと。
隠れ脳梗塞は、自覚症状がないのがほとんど。しかし、一時的な足のしびれや、ろれつが回らないなどの症状を起こすこともあるのです。
これを一時的なものだと思って放っておくと、ある日突然、脳卒中で倒れてしまうことも!
脳卒中予備軍である隠れ脳梗塞は、MRIによって早く発見することができ、早期治療につながります。

さらにMRIは、他にも気付かないうちに脳にできている病気の発見に役立ちます。v
その病気とは、未破裂動脈瘤。
血管にできたコブのようなもので破裂する前の動脈瘤です。
動脈瘤は血管が枝分かれする根元の部分にできやすいのが特徴。
この部分に血流が勢いよく当たると、血管にコブができてしまい、動脈瘤になることがあります。
未破裂動脈瘤は隠れ脳梗塞と同じように、日常生活では症状は現れません。
しかし、一度破裂してしまうと、クモ膜下出血を引き起こします。
ハンマーで殴られたような激しい頭痛!最悪の場合は、死に至ってしまう恐ろしい病気です。

さて、もしここ一週間以上、頭痛が続いているという方がいたら、お気を付け下さい!
その頭痛は脳腫瘍が原因の可能性もあるんです。
脳腫瘍は、子供から高齢者まで広い世代にみられ、症状が悪化すると、吐き気やめまい、けいれんなどの危険な状態を引き起こします。
こうした病気を早期発見するのに役立っているのがMRIです。
前田先生:「隠れ脳梗塞、未破裂動脈瘤、血管の奇形は脳ドックで見つかるチャンスがあります。最近では、頭痛の患者さんで脳の専門医の診断を受けられる方が多くなっており、外来に来られたときにMRI検査をすると、早期発見ができます。」
では、突然の激しい頭痛や手足のしびれを感じ、救急車で病院に運ばれた場合、MRIでは何を見ているのでしょう?
前田先生:「救急病院では、MRIが24時間常に稼動しています。それはなぜかといいますと、脳梗塞の発見に非常に役立つのです。脳梗塞は発症からの時間が重要です。MRIによって、症状の進行具合が分かるのです。」
もし、脳梗塞を発症してしまっても、1〜2時間以内であれば脳の損傷は比較的軽くすみます。
しかし、時間とともに患部の周りに血液が行かなくなると、脳細胞が死んでしまうなど、命にかかわる事態を招いてしまいます。
前田先生:「医師は、症状が進んでいない部分の血液の流れを良くする治療を行います。」
では、このMRI、脳の手術ではどのように使われているのでしょう?
前田先生:「手術中のMRI撮影(術中MRI)を行うこともあります。MRIは手術のナビゲーションなのです。どこをどう手術するのかを導いてくれます。そして、手術の進行具合を判断します。MRIは、手術を安全に行うためにとても優良な機械なのです。」

医療現場において、すでになくてはならないMRI。
検査や、診断だけでなく手術にも大きく役立つ存在なのです。
MRI検査を受ける側は痛くもかゆくもないので、それだけで身体の中が見れるのはすごい技術ですね。もう一度、検査を受けてみたいと思いました。
私はまだMRI検査を受けたことがないのですが、いろんな角度から脳を見ることができるなんてすごいですよね!