「心電図」で分かるのはどんな病気?


私たちの命を支えている心臓。
その中では・・・、
電気が流れる事により、ドクンドクンと拍動しています。
拍動は筋肉の収縮で起こります。
1分間におよそ60回、1日では10万回近く動いて全身に血液を送り続けています。
筋肉の収縮は、細胞にカルシウムイオンが入ることで起こります。

そこに関係しているのがタウリン。
心臓の細胞にカルシウムが入りやすくなり、心臓の収縮力を高めます。

もし、心臓に病気があると、収縮にも異常が発生します。
その異常の発見に役立つのが、心電図を使った検査!
心電図検査では、両腕、そして両足首、胸や脇腹に電極をつけます。これによって心臓を12ヵ所からみて異常がないかを調べます。
心電図に現れる波形からは、不整脈、心臓が肥大していることなどが分かります。
さらに・・・!
日本医科大学 多摩永山病院 院長・新博次先生
新先生:「心筋梗塞の心電図検査で、どこの血管が詰まっているのか推測できます。」

でも、心臓の検査には、超音波を使って心臓を映し出すエコー検査や、カテーテルを血管に通し、X線で撮影する検査がありますよね。

エコーでは心臓の大きさや弁の動きの異常、カテーテルでは血管の動脈硬化が分かります。
こうして、映像で判断できる検査がある今、心電図は必要なのでしようか? 
心電図では、波形の間隔で、拍動のリズムに異常がないかを調べ、波形の形で心臓の筋肉が肥大していないか、周りにある冠動脈が詰まっていないかが分かるのです。

新先生:「循環器や心臓病の領域では、心電図検査は最も重要な検査です。普遍的であるということが、心電図の一番価値を高めていると思います。日本でとった心電図を海外に持って行っても通用するわけですから、世界共通なのです。」

10分以内の簡単な検査ですが、そこから得られる情報は多く、心電図は不可欠な検査なのです。

「心電図」開発の歴史


1789年、イタリアの物理学者ガルバーニは生き物の筋肉の働きに興味を持ち、カエルを使って実験をしていました。
その実験中、たまたま、金属性のメスが足の神経に当たりました。
すると・・・・
なんとカエルの足が、まるで生きているかのようにピクピクと動いたのです!

この様子に、ガルバーニはこう考えました。
生き物の体の中には、電気が流れているに違いない』
この結果をガルバーニが論文にして発表するとヨーロッパ中の医師が興味を持ち、研究に取り組み始めます。
そして、イタリアやドイツの医師達が行った動物実験から、ついに一つの事実が証明されました!
『生き物の電気は心臓が拍動したときに出ている!』

すると今度は、こう考える医師が現れます。
『心臓が出す電気を、病気の診断に役立てられないだろうか?』

それからおよそ30年後の1887年、イギリスの医師ウォラーは心臓の電気を計るためにある実験を始めました。
まず、一対の電極を人の胸と背中に貼り付けます。
その電極を、当時最も性能の高かった電流計に繋ぐと・・・
心臓の動きに合わせて、電流計の水銀がかすかに動いたのです。
その時、ウォラーが記録したのが世界初の心電図でした!
この心電図は、医学界に強い反響を呼び起こします!
ただし、心電図自体の精度は、残念ながらまだまだ低いものでした。
その理由は、心臓から出る電気が胸や背中など体の表面で計ると、わずか1000分の1ボルトであったため。
そのかすかな電流を、当時の機械では正確には計れなかったのです。

「この実験方法を、何とか進化させたい!」
そう考えたのが、オランダの生理学者アイントーフェン。
彼はウォラーの実験を元に、より精度の高い計測装置の開発を目指し・・・
1894年。ついに、画期的な心電計を完成させます!
その心電計は、微量な電流を計測するために非常に大掛かりな装置で、その重さは実に350kgもありました。

計測方法は、銀で出来た導線を塩水の入った容器に取り付け、そこに人の腕や足を浸します。
この状態で心臓に電気的な変化が起こると、その活動を正確に記録することができたのです。
こうして計った心電図を科学誌に発表したところ、それまでの心電図より、遥かに分かりやすいと大好評を博しました!

それ以降、アイントーフェンの心電図は、その後の心臓病診断に革命的な進歩をもたらします。
それまでは「胸が痛い」など、患者の自覚症状で心臓の状態を推し量ることしかできませんでした。
しかし、心電図に現れる心臓の収縮やリズムの変化を読み取ることで、症状がなくても心臓の病気の早期発見が可能になったのです。

こうして、心電図は、心臓の検査・診断・治療の分野において、欠かせない存在となったのです。

“不整脈”“狭心症”、波形からなぜ分かる?


健康診断などでも使われている心電図。
そこに現れる波形は、それぞれ心臓のどんな動きを表しているのでしょうか?
心電図は、1回の拍動を3つの波形で表しています。

最初の波形は、心臓の上部、心房から出る電流を捉えたもの。
心房の収縮が正常か異常かが分かります。
2番目の波形は、心房から心室へ流れる電流を捉えており、心室の収縮の状態が分かります。
そして3番目の波形は、心臓が収縮し終わって元に戻るときの様子です。
3つの波形によって、心臓の動きや大きさ、血管の異常が分かります。

もし病気があると、様々な形の波形が現れます。
こちらは、不整脈の一つ、脈がとぶ期外収縮の心電図です。
電流は正常に流れていながら、この部分は収縮が正常に行われていません。
心臓が正常なら、電流が一回流れると拍動も一回発生しますが、不整脈では電流が流れても拍動が起こらないことがあるのです。
期外収縮が頻繁に起きる場合は、動脈硬化を起こしている可能性があります。

こちらは狭心症。
赤い丸の部分が正常よりも下に下がっているのが特徴です。
この波形が現れる場合は、心臓の周りにある3本の動脈のどこかに動脈硬化が起こっている可能性があります。
動脈硬化で血管が狭まると、心臓に十分な酸素と栄養が行かず、電流にも影響が出るのです。
狭心症は、普段は何ともなくても、動いたりすると胸が苦しくなったり締め付けられるような痛みが走る。それが特徴です。
狭心症を、そのまま放っておくと心筋梗塞を起こす危険が高まります。
心電図によって、狭心症を見つけることができれば、心筋梗塞を未然に防ぐことが可能なのです。

こちらは、心室細動で発作を起こした時の心電図です。
心室細動の場合、電流が流れても心臓が収縮を全く起こさなくなってしまいます。
すると、全身に血液が送られなくなり、わずか数分間で死に至る恐ろしい病気なのです。

現在では、どこの病院でも心電図がとれます。
恐ろしい心筋梗塞や心室細動を防ぐためにも、心電図検査が重要なのです。

心電計のいろいろ


不整脈や狭心症は、心臓の異常が常に現れるとは限りません。
実は、さらに詳しく調べることができる心電図検査があります。
新先生:「脈がたまにとんだり、発作がたまに起きる方がいます。このような方を早く診断するために、長い時間や負荷をかけた心電図をとる方法が考案されたのです。」

身体に負荷をかけてとる心電図検査が、トレッドミル法です。
トレッドミル法は、坂道を登ったり重い物を持った時など、動いた時に起こる狭心症を調べる検査法です。
検査では、胸に電極を付けたままベルトの上を歩き、運動による負荷を与えながら心電図をとります。
3分ごとにベルトの速度や傾斜を変え、それぞれの状態における心電図と血圧、そして心拍数を記録していきます。

そして、24時間ホルター式心電図というものがあります。
まず、胸に4ケ所、シール状の電極を取り付けます。
次に超小型の心電計を胸に貼り付け、これと電極を繋いで、スイッチを入れれば準備完了。
あとは、心電計が24時間、心臓の状態をモニターします。
患者さんは普段の生活をしながら、心電図をとることができるのです。
そして、24時間経ったところで、心電計から心電図を記憶したメモリーカードを取り出し、コンピューターで確認。その結果を元に、医師が心臓の状態を診断します。

心電図で、心臓の状態を確認することで心臓の病気を未然に防ぐことが可能なのです。
今までは健康診断の時にただ何となくとっていた感じなんですが、心電図でそんなところまで分かるのかと改めて思いました。
私はまだちゃんと心電図を計ったことがないのですが、病気予防のためにもまずそれから始めなければいけませんね。計らなければいけないなと思いました。