カルシウムの歴史


“骨粗鬆症、”それは何と古代からあった病気!
今からおよそ4000年前、古代エジプトの第12王朝期。
当時のミイラを、現代医学で調査したところ、骨がすきまだらけであることが分かりました。
そう、古代から骨粗鬆症は人間に忍び寄っていたのです!

しかし、骨がもろくなるのは、あくまでも年齢による衰えと考えられていたため、20世紀に入るまで病気とは認められていませんでした。
その考えを一変させたのが、レントゲンによるX線の発明!
X線撮影により、骨の状態を調べる事への関心が高まったのです。

そして1941年。
アメリカのオールブライトは、骨粗鬆症を初めて病気として捉え、次のような定義付けを発表しました。
「骨粗鬆症とは、骨は正常な形を保ったまま、中身が少なくなってしまう状態の事」

さらに、オールブライトの調査によると、42例中40例と、骨粗鬆症が圧倒的に女性に多い病気であることも確認しています。

もっとも、残念ながら、骨粗鬆症が何故起きるか?原因は、まだ分かりませんでした。

原因が明らかになったのは1960年代に入ってから。
明らかにしたのはイギリスのノーディン博士。
彼は骨粗鬆症の患者と、健康な人の栄養の摂り方に注目して調査を始めました。
そして彼は、骨粗鬆症の患者の食事は、ある栄養素だけが明らかに不足していることをついに突き止めます!

それが“カルシウム”!
こうして骨粗鬆症の原因は明らかにされたのです。
さらにノーディンは研究を続け、骨粗鬆症の患者は腸におけるカルシウムの吸収率が悪いことも突き止めました!
このノーディンの研究成果によって、骨粗鬆症はカルシウム不足による病気である事が、初めて医学的に確認されたのです。

カルシウムが多い食品


牛乳とほぼ同じ量のカルシウムが入っている食品をご紹介します。
同じ豆腐でも、絹ごし豆腐がありますが、木綿豆腐の方がカルシウムがたくさん入っています。
木綿豆腐にはカルシウムが凝縮されているため、絹ごし豆腐の3倍のカルシウムが入っているのです。

そして、カルシウムはあるものと一緒に摂ると吸収率が良くなるということが分かっています。それは、ビタミンDです。
ビタミンDは、鮭・かれい・かじきにたくさん入っています。
とは言っても、いつもカルシウムと一緒にこれらの食品を食べるのも大変ですよね。
実は、ビタミンDは日光に当たると、身体の中で自然に作られるのです。

“骨粗鬆症”カルシウム不足だけが原因ではない?!


カルシウム不足以外の骨粗鬆症の原因、それを教えて下さるのは・・・
東京都リハビリテーション病院院長・林泰史先生
林先生は骨粗鬆症をはじめ、様々な骨の病気を研究し治療を行う骨の専門医。骨に関する著書も多く出版されています。
林先生:「男性は男性ホルモン、女性は女性ホルモンが、骨のカルシウム量を強く保つために働いています。女性の場合は、閉経後に女性ホルモンが急激に減るため、骨からカルシウムが出ていってしまうのです。」

私達の骨は絶えず、作られたり壊されたりを繰り返しています。
この二つの働きにはそれぞれ担い手があります。
骨を作る働きをしている細胞、それが、骨の中にある骨芽細胞。
逆に骨を壊しているのが破骨細胞です。
この骨芽細胞と破骨細胞がバランスよく働く事で、骨は破壊と再生を繰り返し、およそ2年で全てが新しく入れ替わります。
こうして健康な骨が維持されているのです。

実は男性ホルモンや女性ホルモンは、破骨細胞の活動を抑える働きをしています。
そのため、年齢と共にホルモンの分泌が減少すると、破骨細胞の活動が強まり、骨の破壊だけが進んでしまいます。
実際、骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、50歳を過ぎると骨の量が大幅に減ります。
65歳以上の女性の2人に1人は、骨粗鬆症の可能性があると考えられているのです。

“骨粗鬆症”早期発見


最近、骨粗鬆症の新たな原因がわかってきました。
その原因とは、骨の中の繊維の変化!

林先生:「例えば、エッフェル塔が丈夫なのは、鉄の量ではなく構造が優れているからですが、同じことが骨についても言えます。」

骨粗鬆症による骨折を最も起こしやすいのは、背骨と足の付け根の骨です。
これらの骨は、コラーゲンの繊維で出来た骨組みが複雑に張り巡らされ、その周りにカルシウムが付着して、丈夫な骨を形作っています。
足の付け根のレントゲン写真を見ると、骨に筋がたくさん走っているのがわかります。これが、繊維の骨組みです。
しかし、骨が入れ替わっていく間に骨組みに異常が起こると、骨はもろく壊れやすくなってしまいます。
これが骨粗鬆症の原因の一つだったのです。
骨粗鬆症を、前もって知る方法はないのでしょうか?
林先生:「骨のカルシウム量は減っても、骨の形そのものは変化しないので、骨がどれだけ強いかは見た目だけでは分かりません。
骨の中を透かして見るとわかります。骨を透かせるものは現在では、レントゲンです。そしてもう一つ音でもわかります。」

骨粗鬆症は骨が折れるまで残念ながら自覚症状がなく、そのため、骨のチェックには医療機関での検査が欠かせません。
チェックは、骨を透かして見るX線検査が行われます。
X線を使って手の骨を撮影。画像の透明度から骨密度を確認します。
カルシウム量が不足して、骨密度が低いと、透き通るように映ります。

一方、超音波を使って骨の密度を測る検査もあります。
その場合、足の踵に超音波を通して計測します。
検査結果は、数値として表示されます。もし数値が、グラフに示された平均値を下回るようなら、骨粗鬆症なのです。

骨粗鬆症で、骨折を起こさないためにも、中高年になったら自分の骨の状態を確認することが大切です。

“骨粗鬆症”と運動


骨粗鬆症の予防に役立つ日常的な運動を教えて頂きました。
林先生:「骨は負担をかけると(体重をかけると)、骨を強くするセンサーが働きます。」
そのセンサーが骨液。骨には細かいすきまがあり、骨液という液体が詰まっています。
骨に負担がかかると、骨液は動きます。 
すると・・
林先生:「その動きを敏感に感じ取って、骨を作る細胞が働き出します。」
骨液の中にいるのが、骨を作っている骨(こつ)芽(が)細胞。
骨に負担がかかると、骨芽細胞の活動にスイッチが入るのです。
林先生:「毎日こまめに立ったり歩いたり、散歩したりすることが、骨を強くします。」
例えば、1日に30分程度歩くようにすれば、年齢と共に低下して行く骨を作る働きを活発に出来るというわけです。

“骨粗鬆症”のクスリ


骨粗鬆症には主に3種類の薬があります。

林先生:「まず、どういうタイプの骨粗鬆症かということを調べます。」
検査では、血液や尿の中にカルシウムが溶けていないかを調べます。

骨粗鬆症には2つのタイプがあります。
骨からカルシウムが出て起こるタイプと、カルシウムの摂取不足のために骨が作れないタイプです。

例えば、閉経後の女性で血液や尿にカルシウムが溶け出している場合、女性ホルモンの減少により、骨が破壊されている証拠です。
その場合使われるのは「女性ホルモン製剤」。女性ホルモンを補う薬です。
この薬はホルモンの減少により、活発になった破骨細胞の骨を壊す働きを抑えます。
従来の女性ホルモン製剤、エストロゲン製剤では、乳がんや子宮がん発症の危険性が問題でした。
しかし現在は、その危険のない塩酸ラロキシフェンが登場しています。

一方、検査をしても血液や尿にカルシウムの成分が溶け出していない場合は、カルシウムの摂取不足が考えられます。
そのときに使われる薬が、「カルシウム製剤」。
この薬は、不足したカルシウム分を補充して骨の密度を高め、症状の改善と同時に、骨折の危険も減らしてくれます。

この薬は胃を通り、小腸の粘膜から体内に吸収され、血液によって骨に運ばれ、骨を作る材料となります。
その吸収率を高めるため、「活性型ビタミンD3製剤」を併用します。
林先生:「ビタミンDから作られたタンパク質が、カルシウムを捕まえて無理矢理、血液の方へ引っ張り込んでいくのです。」
この薬には、カルシウムの吸収を促進させる作用だけでなく、休んでいる骨芽細胞を活発にする効果もあり、骨をより丈夫にしてくれるのです!
カルシウムはビタミンDと一緒に摂ると吸収率が良くなるんですね。しかも、ビタミンDが日光に当たると自然に作られているとは驚きました。
木綿豆腐が絹ごし豆腐の3倍のカルシウムが入っているなんてビックリ!牛乳が嫌いなお子様でも代わりに木綿豆腐を食べるといいですよね。