便秘とは?


医学的に「便秘」とは、どのような状態のことを言うのでしょう?
赤坂胃腸クリニック・村田博司先生

村田先生:「医学的に便秘とは、3日間以上、排便がない状態のことを言います。」

便秘の歴史


便秘の始まり・・・それは紀元前1万年、旧石器時代にさかのぼります。
それまで狩猟生活をしていた人類は、次第に農耕生活を始め、一ヶ所に定住して暮らすようになりました。

すると、食べものが安定して手に入るようになった一方、獲物を求めて常に動いていたころに比べ運動量は格段に減少。
ここから、長い長い便秘の歴史が始まったのです。

紀元前1500年のエジプト。
当時の医術に関することが記されている「エバース・パピルス」には、便秘を改善する方法が記録されています。
そこにあったのは、「乾燥して焼いた大麦」、そして「ビール」。当時の人々は、これらを下剤として使っていたようです。
ビールは、その苦味を抑えるために蜂蜜を使い、甘くして飲んでいたという記録もあります。

そして、紀元前350年のマケドニア。
時の王国を支配していたのは、名称の誉れ高きアレキサンダー大王。
彼はあるとき、アフリカ沿岸の東、およそ800キロにある小さな島、ソコトラ島に攻め入ろうとします。あえてこの小さな島を征服しようと目論んだアレキサンダー大王の目的は何だったのでしょう?
・・・答えは、「アロエ」。ソコトラ島は、島中にアロエが群生していたのです。
当時薬草として使われていたアロエは、薬効の一つとして便秘に効くことが知られていました。
アロエの葉には「アロイン」という成分があり、これが便秘薬として抜群の効果があったのです。
アレキサンダー大王も、便秘に悩んでいたために大量のアロエを手に入れようとしたのでは・・・なんて考えられませんか?

かわっては、お隣、中国。
漢方の国、中国では便秘薬としてある植物が使われてきました。
中国最古の薬物書である「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」。そこにも記されているある植物とは?
大きな黄色と書く「大黄」!

中国が原産の植物、大黄はその成分が大腸の水分吸収を抑え、ぜん動運動を促進させる作用があるため、便秘には抜群の効果を発揮するのです。

アレキサンダー大王が求めた「アロエ」。古代中国から伝えられた「大黄」。
これらは現代でも便秘薬として使われています。

なぜ便秘になる?


なぜ便秘になってしまうのでしょうか?
赤坂胃腸クリニック・村田博司先生

村田先生:「便を我慢して、排便するタイミングを逃す、そこから便秘が始まっていくのです。」
口から食べた物が胃に到達すると、その刺激で大腸はぜん動運動を始めます。
このぜん動運動によって便が直腸まで運ばれたとき、脳に指令が行き、反射的に便意をもよおすのです。
もし、ここで排便をがまんしてしまうと便意はすうっとおさまってしまう・・・
これが便秘のきっかけになるのです。

では、どうして頑固な便秘になるのですか?
村田先生:「S状結腸、直腸付近に便が溜まってくると、腸の粘膜が張ってきて、その圧を感じることによって排便を促す指令が脳にいくのです。ところが、その指令を無視し続けてしまうと、指令が分からなくなってしまうのです。」
こうして、いくら大腸に便が溜まっても便意が起こらず、頑固な便秘となってしまうのです。

排便をがまんする。

それ以外にも、便秘になる原因があります。
村田先生:「ストレスで腸の動きがバランスを崩してしまい、それによって便秘が起こってしまうことがよくあります。」
ストレスを受けると、大腸のぜん動運動が正常に行われなくなり、便は大腸内で停滞してしまうことになります。

便秘になると、私達の身体には様々な症状があらわれてきます。
村田先生:「例えば、吹き出物ができたり、湿疹が出たり、皮膚の症状が一番出やすくなります。」
慢性的な便秘の人の大腸は、大腸の内部が便でいっぱいになり、ガスで膨らんでいます。
便が長い間大腸に留まっていると、便の中の有害物質が大腸の粘膜を刺激してしまうことになります。
すると、ポリープができたり、大腸がんになる可能性も・・・。

便意を感じたら、すぐにトイレに行く。便秘のきっかけを作らないことが大切ですね!

便秘薬の種類


便秘薬といっても、その種類は様々です。

まずは、腸を刺激して水分の分泌を促し、硬くなった便をやわらかくするもの。
薬の成分は、ビサコジル、ダイオウ、センナなどが使われます。

続いて、大腸のぜん動運動を促進するもの。
このタイプには食物繊維が含まれていて、大腸の中で便の体積を数倍に増やします。こうして、腸の壁に刺激を与えることによって、ぜん動運動を促進させていきます。

薬の成分としては、プランタゴ、オバタの種皮などが使われます。

また、座薬タイプの便秘薬が使われることもあります。
最近の座薬タイプの薬には、炭酸ガスを使用したものがあります。
座薬を直腸に入れると炭酸ガスを発生し、直腸を広げて刺激します。この刺激によって、溜まった便を出すのです。

便秘の薬は、その種類によって作用や効き方が違います。

薬のプロ〜薬剤師さんに聞いてみよう〜


クリーン薬局・薬剤師 大木一正さん

Q.便秘になった時、一体どんな便秘薬を選べばいいの?
大木さん:「便秘の症状に合わせて薬を選びましょう。最初に選ぶ薬としては、便に水分を補給する薬、次に大腸のぜん動運動を正常に動かす薬が良いでしょう。」

Q.では、一体いつ便秘薬を使えばいいの?
大木さん:「便秘薬には、即効性の物と、飲んでから6〜10時間後に効果を発揮するタイプがあります。徐々に効果を発揮するタイプですと、夜寝る前に飲むのが効果的です。」

Q.便秘薬を使うときに注意することはありますか?
大木さん:「最近の薬は、特殊なコーティングが施され、大腸で溶けるように工夫されています。胃で溶けずに、大腸で溶けることによって本来の便秘薬の作用が出るのです。ですから、胃酸が便秘薬を溶かしてしまうので、食事の後や乳製品を飲んだ後に便秘薬を飲むのは避けましょう。」

Q.便秘薬を飲む時、一緒に飲んではいけない飲み物は?
大木さん:「胃酸の分泌を促進して消化を助ける胃腸薬との併用は避けましょう。便秘薬の効果が落ちたり、胃が痛くなる場合があります。」

Q.その他に注意することはありますか?
大木さん:「便秘薬は便通障害を改善するための薬です。便秘薬をダイエットのために使用するのはやめましょう。薬の正しい使い方を心がけましょう。」

便秘薬を飲むのにはいろんなポイントがあるんですね。胃が空っぽの時に飲まなければならないのですね。
現代でも使っているアロエや大黄が、昔から便秘薬として使われていたなんて驚きですね。