高血圧の基準



血圧の正しい測り方



血圧はいつから測り始めた?


血圧・・・それは、心臓が血液を押し出す力のこと。
私達が血圧を測ってみて、高い、低いと知ることは健康状態を把握する上での大きな目安となっています。

しかし、長い間血圧はおろか、心臓の働きがどういうものなのかさえ、人々は具体的には全く把握できていませんでした。

今から400年前の1600年代、イギリス人の医師、ウィリアム・ハーヴェイがついに、心臓の働きについて画期的な説を打ち立てます!
彼は、腕をきつく縛り付けて、その状態で腕の色や血管の動きを見るという実験を行いました。

そして、この実験をきっかけに人間の血液が、心臓から出てきて再び心臓に戻るということを突き止めたのです!
つまり、心臓は血液を循環させるポンプのようなものである!
ハーヴェイの「血液循環説」は、当時の医学界では大変画期的ではありましたが、人々が血圧の存在に気づくまでには、さらに時間が必要でした。

ハーヴェイの血液循環説から100年後。
ついに血圧の概念を発見する人物があらわれます。
イギリス人の牧師、ステファン・へールズ。彼はかねてから動物の生態にとても興味をもっており、ヒツジやシカ、犬などの血液循環を調べて実験を重ねていくうちに血圧の概念に気がつくのです。

血液はただ自然に血管を流れているのではなく、心臓の力で押し出されて流れているのだ・・・。

ヘールズは、馬を使って血圧の測定を試みました。
馬の頚動脈に3メートルのガラス管を取り付けると、血液はなんと、血圧の力で2.5メートルの高さまで上昇!


この結果、血圧とは、心臓が収縮を繰り返しながら血液を送り出す力だということがわかったのです!

しかし、当時は血圧の概念はそれ程重要視されていなかったのか、人間の血圧を測るようになるのはさらに100年の時を経てからなのです。

当初は、血圧を測るために、色々な方法が試されたようです。
こめかみの動脈を使って測るものや、両手の指を使って計測するものなど方法は様々。
1900年代に入り、ロシアで考え出されたのが、腕を締め付けて脈を計って計測するという今日に近い形のものでした。

やがて、病院でも患者の血圧を測るようになりますが、まるで儀式のようでした。
「血圧測定」は、当初大変大掛かりな一大イベントだったといいます。

世界で初めての、馬を使った血圧測定から医療の現場で血圧が測定される、ここまで、実に200年に及ぶ歳月がかかっていました。

“高血圧が身体に悪い”と分かったのはいつ?


「血圧の測定」が行われるようになると、次第に「血圧が高いと身体に悪いのではないか」という認識が広がってきました。

しかし、それは医療の現場から言われたことではなく、意外なところが始まりだったのです。

高血圧の歴史について詳しく書かれた書物によると・・・
「高血圧」と身体の調子の因果関係を明らかにしたのは、なんと、生命保険会社でした!
20世紀初頭、アメリカの生命保険会社が高血圧と寿命の関係を探る統計をとり始めたのです。
60歳から80歳の人を対象に8年にわたって、血圧と平均余命の関係を調査したところ、高血圧で動脈の緊張が高い人ほど死亡率は増加するという相関関係が明らかになりました!
以来、生命保険会社は保険に入ろうとする加入者に対し、血圧の記載を求めるようになります。

こうして、「高血圧は身体に悪い」という考えが世の中に広まることになったのです。
すると、人々は高血圧を治すための方法を探し始め、その結果、様々な治療法が出現しました。

1920年代に流行したのが電気治療。
腕に送信機をつけた患者を檻の中に入れ、檻に電流を流すというものです。
また、発熱による治療。かなり血圧が高くなっている患者の身体をあたため、体温を上昇させて血圧を下げようとしたものです。
いずれにしても、これらの治療法は非常に突飛で効果についてもあいまいなものでしかありませんでした。

また、同時に血圧を下げる薬も数多く登場します。
「さらに優れた降圧剤」と名付けられたものや、「降圧レモネード」という名の血圧調整薬。
そして、心臓をイメージしたパッケージの降圧剤など多種多様な血圧のクスリが氾濫したのです。

そんな中、1952年にスイスの製薬会社が非常に有効な血圧降下剤の成分を発見します。
それが、レセルピン。
レセルピンというのは、インド原産のインドシャボクという植物に含まれる成分で鎮静剤にも使われているものです。
当時としては画期的なことに、「脳の交感神経を抑制する」という作用が明らかにされていたレセルピン。
そのために、レセルピンを使った薬は、血圧降下薬として非常に脚光を浴びることになるのです。

20世紀初頭から始まった高血圧は身体に悪いという認識と、その治療。
その後の医療の進歩の中で、病気との関係や新たな薬が開発されていくのです。

高血圧と病気のリスク


高血圧になりやすい生活習慣を送っている人がかかりやすい恐い病気があります。
それは、糖尿病です。
高血圧の人は、そうでない人に比べて2・3倍も糖尿病になりやすいのです。
ちなみに、糖尿病の人もそうでない人と比較すると約2倍の確率で高血圧になりやすいことが明らかになっています。

高血圧のタイプ


一口に高血圧といっても、様々なタイプがあります。
病院で測定すると血圧が高いという高血圧は“白衣高血圧”と言います。
逆に、病院で測定する血圧は正常なのに、他が高いという高血圧を“仮面高血圧”と言います。


新宿水明クリニック 竹中恒夫先生
Q:白衣高血圧とは?
竹中先生:「白衣高血圧は、中年の女性や高齢者、神経質な人がなりやすいです。緊張するとすぐに血圧が上がり、医療機関に行くだけでなくても、例えば役所など他の所に行ってもなりやすい人という人も対象です。」

Q:仮面高血圧とは?
竹中先生:「夜働いていて昼間寝ている人は、具合が悪くて病院に来て血圧を測っても昼間は正常なのですが、実際働いてる夜の時間帯には、もっと血圧が高いのです。」

昼夜を問わず働く人が増えた現代社会が生み出した高血圧といえます。

普通は休んでいるときよりも、活動中に高くなる血圧。
普段、夜働いていたりして昼間は寝ている人が、病院を訪れた昼間の血圧が低いからと活動中の高血圧に気がつかないでいると、ある日突然、心筋梗塞や脳卒中で倒れてしまう可能性だってあるのです。

高血圧と病気 “メタボリック・シンドローム”


ところで、もうおなじみですね!
メタボリックシンドローム!
このキーポイントとなるのも高血圧です!
メタボリックシンドロームとは、例えば高血圧が糖尿病を、糖尿病が内蔵脂肪蓄積型肥満を内臓脂肪蓄積型肥満が高脂血症を、というように4つの病気が次々に影響を与えてお互いを悪化させていく病気。
こうなると、動脈硬化が起こり、心筋梗塞や脳出血で命を落とす危険性が高くなってしまいます。
もし血圧が高いようなら、メタボリックシンドロームを起こさないように早急に生活習慣を見直すことが大切です。

高血圧の薬


高血圧の薬は、大きく分けて3種類あります。
まずは、身体から水分を出し、血液の量を減らして血圧を下げる薬。
続いて、心臓が血液を送りだす力を弱めて血圧を下げる薬。
そして、血管を拡げることで血液の流れを弱めて血圧を下げる薬。


北里大学望月眞弓先生

望月先生:「血管を拡張するタイプの薬は日本で一番よく使われています。カルシウムイオンが筋肉の細胞に入ると、血管の筋肉が収縮してしまいます。このカルシウムイオンが細胞の中に入るのを抑えることによって、筋肉が収縮しないように血管を拡げるのが、カルシウム拮抗薬です。」

カルシウム拮抗薬は、全身の血管を拡げることで血液の流れを弱めて血圧を下げるのです。

カルシウム拮抗薬を使うとき、注意することがあります。

望月先生:「一部のカルシウム拮抗薬で、グレープフルーツジュースの中の渋み成分によってカルシウムイオンの分解が抑えられ、身体の中にカルシウム拮抗薬がどんどん残ってしまうことがあります。それによって、薬の作用が強く出てしまうという飲み合わせの問題があります。グレープフルーツジュースを1回飲むと、3日くらい薬の作用が続いてしまうので注意して下さい。」

Q:高血圧の薬は、血圧が正常になればやめてもいいのですか?
望月先生:「動脈硬化が進んで血圧が上がるというタイプの人が一番多いのですが、硬くなってしまった血管が元に戻るわけではありません。血圧を下げる薬を飲んでいるから血圧が下がったわけで、動脈硬化自体は治ったのではありません。きちんと薬を飲み続けて頂くことが大切です。」

血圧を下げるための生活習慣



すでに高血圧の人はもちろん、高血圧予備軍の人、そして健康な人にも役立つ健康管理の目安です。
平成20年から40代の健康診断にお腹周りが追加されるということなので気を付けなければと思いました。
やはり生活習慣を改善することから始まるのだなと改めて感じました。