ベートーベンと頭痛


〜ベートーベンと頭痛の意外な関係
頭痛の専門医によると、ベートーベン作曲“交響曲第六番「田園」第4楽章「嵐」は

片頭痛の人が、頭が痛い時、思い浮かべる情景

が、イメージされているといるとのことです。1808年、37歳の時、『痛風性頭痛に対して抜歯』した、という、頭痛の治療記録が残っています。この痛風性頭痛の詳しい原因はわかっていませんが、重い頭痛を軽くするために歯を抜いたそうです。
この翌年、ベートーベンは《交響曲第六番 田園》を発表しました。

頭痛薬その昔


〜世界編〜
紀元前2000年・・・
古代都市エリコ、現在のヨルダン辺りでは、頭痛を治すために何をしたのか?
なんと、痛〜い頭を覆っている頭蓋骨に直接穴を開けてしまったんです!
「悪霊のせいで頭痛が起こる」と信じられていた時代。

”頭に穴を開ければ悪霊を追い払うことができる”

さらに1000年後の紀元前1200年頃、古代エジプトの人々も頭痛は、悪霊が起こすと信じていました。古代エジプトには、悪霊を追い払う、頭痛の特効薬があったのです。それは・・・カバの脂肪や牛のフン。
古代エジプトの人にとってカバや牛は神の使い。強烈な臭いで頭痛の原因、悪霊を頭の中から追い払おうと頭に塗りつけていました。


〜日本編〜
庶民の文化が花開いた江戸時代。このころ詠まれた川柳に・・・

“寝過ごして 嫁梅干を 顔へあて”というのがあります。

ついうっかり寝坊をした嫁さん、頭が痛いふりなんかしちゃって…。当時は、頭が痛いとき、梅干をこめかみに張っていたんですね。

“梅干を 二合目に張る 富士額”

頭痛に悩む、富士額のかわいらしい奥さんを詠んだ川柳…。
富士額の二合目は、こめかみ。
梅干の効果は明らかではありませんが、今なお、民間療法として語り継がれているのです。
また江戸時代の庶民は、頭が痛いとき、こめかみをぎゅっと締めつけて痛みを和らげようと鉢巻を巻いていました。自分の左側に結び目を作る結び方を病鉢巻と呼んでいました。
一方、同じ鉢巻でも助六さんのように、右側に結び目を作った場合は、病鉢巻とは呼ばず、粋でいなせなファッションとされていました。

頭痛の種類


一般的には頭痛の原因は何か一つ原因があって、その一つの原因が軽い頭痛を引き起こしたり、ひどい頭痛を引き起こしたり、とおもわれています。 ところが、実際はひどい頭痛を起こす原因と軽い頭痛の原因とは違うことがほとんどです。

私たちを悩ませるしつこい頭痛には、大きく2つのタイプがあります。
片頭痛と緊張型頭痛

〜多くの人が悩まされている緊張型頭痛〜

比較的我慢できる軽い頭痛の代表的なものが日本で2200万人いるといわれている緊張性頭痛。これは筋肉の緊張、いわゆる首や肩のこりからくる頭痛です。 頭全体が、重苦しく、締め付けられるような痛みを起こします。肩こりは、肩の筋肉が緊張して起こります。肩の筋肉は、首、そして、頭の筋肉へとつながっています。肩こりがひどくなると、筋肉の緊張が、頭にも拡がって、頭痛が起こります。

〜ひどい頭痛の代表的なものは片頭痛〜

これは日本で820万人いて、20代〜40代の女性が大体80%。ですから、男性の4倍いるというのが代表的な頭痛になります。
片頭痛は、脳の血管が拡がり、このとき、痛みの素が作られます。これが、血管の周りにある神経を刺激して、痛みが起こります。
どうして血管が拡がってしまうのか?現在のところ残念ながら、はっきりとは解明されていません。片頭痛は、頭痛の他にも、色々な、不快な症状を起こします。吐き気や嘔吐、光や音に、過敏になったり、変な臭い、不快な臭いを感じることもあります。そのほかに動くと頭痛がひどくなる。要するに動けないという症状が伴ってくるのが特徴です。

〜緊張型頭痛と片頭痛、両方持っている人は相当たくさんいます。〜
多くの場合は、仕事はできる、家事も出来る。しかしいつも頭痛が気になるというような頭痛がずっと続いている、それが緊張性頭痛ということが多い。その中に月に1,2回発作的に、突然激しい頭痛が襲ってくる。これが片頭痛。片頭痛というのは短くても4時間、長いと72時間。丸3日間非常に激しい頭痛が続くというのが特徴です。

〜我慢すると危険!〜
片頭痛の症状というのが、激しい頭痛と吐き気ということですが、これと非常によく似た症状の頭痛がクモ膜下出血です。
クモ膜下出血というのも激しい頭痛と吐き気を伴ってくる。ただ、クモ膜下出血というのは治療が遅れれば、まさに命に関わってきますので、このような頭痛がはじめて起きてきたときには、すぐに病院を受診することが必要です。

頭痛を治すための薬


頭痛薬の主流は、解熱鎮痛剤です。
例えば、こめかみがズッキン・ズッキン・・・。片頭痛かな・・・。
このとき、あなたの頭の中で何が起きているのかというと・・・血管が拡がって、痛みの素がつくり出されているのです。
解熱鎮痛剤は、痛みの素を作らないようにしたり、痛みを伝えないようにブロックします。中でも、イブプロフェンは、病院の薬から一般用になった成分。
頭全体が重く、肩や首筋がこっている、つらいな〜、これって、緊張型頭痛?
この時の、頭痛の素は、筋肉にたまった炎症を起こす物質。解熱鎮痛剤は、筋肉から頭痛の素を取り除きます。
注意していただきたいのは、この3点。

“いつもの頭痛と違う”
“いつもより頭痛が激しい”
“薬を飲んでもなかなか頭痛が改善されない”

こんなときは、病院での検査をおすすめします。

薬のプロ〜薬剤師さんに聞いてみよう


今週の薬剤師 上村直樹(かみむらなおき)

Q1
頭痛薬って、飲み続けると、だんだん効かなくなってくるんですか?
A:頭痛薬が効かなくなることはありません。
もし効かなかった場合は、別のタイプの頭痛が考えられます。頭痛薬には色々な成分がありますので、ひとによってはAという薬が効くが、Bは全く効かない。その逆の方もいらっしゃることはよくあります。ですから、薬剤師とよく相談して、自分にあったものを選んで頂くことが重要だと思います。

Q2
病院でもらった高血圧の薬を飲んでいる場合、市販の頭痛薬と一緒に飲んでも大丈夫ですか?
A:薬には相互作用といって、一緒に飲むとお互いの薬の働きを強めたり弱めたりする作用があります。
高血圧に使われている薬の一部に利尿剤がありますが、頭痛薬の一部の成分にその作用を弱めてしまうことがあります。そうすると、血圧が下がらなくなる心配があります。頭痛薬を選ぶ時には必ず薬剤師に相談してください。

Q3
錠剤の頭痛薬は、噛み砕いて飲むと早く効きそうな気がするのですが?
A:頭痛薬は、錠剤で飲んでもかみ砕いて飲んでも、効き目がでるまでの時間はかわりません。
なによりも錠剤の頭痛薬をかみ砕きますと苦味がでて飲みにくくなり、やめた方がいいと思います。薬剤師としてはおすすめできません。

Q4
よく頭痛薬は、胃に悪いといいますが、これは本当ですか?
A:最近はだいぶ薬も改良されていて、そんなに心配しなくてもいいと思われます。
ただし頭痛はいつ起こるかわかりません。たとえば、空腹時におきたときにはビスケットとか、バナナなどを少し食べてから、飲んで頂くことをおすすめします。そうすることで胃を保護することが出来ます