「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#63 祈りの街バラナシ(インド) 2011/7/15 O.A.

聖なる街、バラナシ

今回の旅は、インドの首都、デリーから始まります。飛行機を降り立った瞬間、肌にまとわりつく熱い風。空港を一歩でると、そこには高層ビルや高級ホテルが並びます。今や日本を抜いてGDP3位にも成長した大都市デリー、パワーを感じずにはいられません。
 早速、私が向かったのは、デリーから寝台列車で約14時間の、バラナシ。ここはインド各地から年間何万人もの人が集まる、ヒンズー教最大の聖地です。街を歩いてみると、人、人、人!そして…、舗装されていない狭い道を我先にと進もうとする、リキシャたち。けたたましくクラクションが鳴り渡っています。そして、ヒンズー教の神様とされている、牛。物売りをする男達の声。艶やかなサリーの女達。裸足でかけまわる、子供達。気を緩めているとすっかり置いていかれてしまうような、ものすごく大きな、生きるパワーが渦を巻いているような街でした。

母なる河、ガンジス

迷路のような狭い路地を抜けるといきなり視界が開けました。ガンジス川です。ヒンズー教の神、シバ神の体を伝った水が集まって川になったとされている、ガンジス。その聖なる水で人々は体を清めながら、思い思いに神に祈りを捧げていました。輪廻転生を信じるヒンズー教の人々は、ガンジスで祈ると、死んでもまた人間に生まれ変われると信じているのです。そしてインドでは、太陽が沈む直前のことを、「太陽が人々に希望を与える時間」と言うそうです。太陽は、自分が沈んでしまうぎりぎりまで、太陽は私たちを照らしてくださるのです。なんとも素敵な表現です。向こう岸で煙があがっているのが見えます。あれはなんと、火葬場。火葬場の存在は、聖なるガンジス川に多くの人が訪れる理由の一つ。死んだら聖なるガンジス川のほとりで焼かれ、その灰を川に流してもらうために、死の近い人も多く訪れているのです。人が死んでいる煙を対岸から眺めていると、まるで向こう岸は現世、川は三途の川。するとこちら側は…?不思議な気分になりました。聖なるバラナシは、生と死が近い街でした。

祈り続ける人々

太陽が沈み、夜の帳が聖なる街を包み始めた頃。川沿いに人々が集まり、賑やかになってきました。プジャという祈りの儀式が始まるようです。オレンジ色の炎とお香の香りと煙に包まれながら、人々は皆で祈りの言葉を口にします。なんとも幻想的な一夜。
 翌朝。ガンジス川には、ひたすら祈る人々で溢れていました。また新しい朝が来たのです。人が生まれ、死に、そしてまた生まれ変わるように、太陽は昇り、沈み、そしてまた昇るー。人々の祈る姿とは、こんなにも美しかったのです…。