「地球絶景紀行」世界にたった1つの絶景を探す、大人の紀行ドキュメンタリー

毎週水曜日よる9時オンエア

地球は絶景の美術館。世界にたった1つの絶景旅行ガイドをあなたに。2泊3日で行く、夢の旅にご案内いたします。(旅人:森高千里)

#352 早春の雪峰 ドロミーティ(イタリア) 2017/6/7 O.A.

春の陽気に包まれた“水の都”

今回の舞台は初春の北イタリア。目指すは、世界遺産・ドロミーティでのスキーです。旅の始まりは、イタリアを代表する観光地“水の都”ヴェネツィアから。仮面のカーニバルで有名ですが、聞けば、カーニバルは終わったばかり。しかし、その熱が冷めることはありません。春の初物を並べていた八百屋さんによれば「カーニバルの後に季節が始まる」のだとか。出会った人々もどこか愉快な人ばかり。朝から仲間とスプリッツァを酌み交わす男性は、観光客をナンパ。ゴンドラ乗りは、大きな船に抜かれても「エンジンがついていたら町の音は聞こえない」と笑っていました。
夕方、薄暗い路地で出会ったのは、居酒屋の外で酒を酌み交わす人々。日本語を勉強していた仲間だという彼らに中へ案内してもらうと、そこには溢れんばかりの人、新鮮な海の幸、そしてまたナンパ…最後は流暢な「お疲れさまです!」の挨拶でお別れ。春の陽気が人の心も浮き立たせているようでした。

時を刻む“大地のピラミッド”

2日目はイタリアの北の果て、ボルツァーノへ。ドロミーティの玄関口の1つであり、ヴェネツィアからは鉄道でおよそ3時間。国境に近く、イタリア語とドイツ語が公用語になっていて、駅名は2つの言語で表記されています。その文化もどこかドイツ風。ドイツ語圏のオーストリアのケーキ、ザッハトルテの店では、郊外のレノン高原に住む女性に出会いました。帰り道についていき、キノコのような標識を頼りにたどり着いた先に広がっていたのは、尖った山に岩が乗った不思議な光景。聞けば、雨が大地を侵食し、岩がある場所だけ下に土が残ったのだそう。近隣の家もいずれなくなる可能性が高いそうですが、それは1000年後の話。果てしない大地の時間に思いを馳せました。
最後は、街に戻り出会った男性の誘いでワイン農家のパーティへ。素敵な楽団の音色とワインに酔いしれました。しかし、この2日間飲んでばかり。明日のスキーはちゃんと滑れるでしょうか…

ドロミーティ “天空の大滑降”

3日目は、いよいよスキー。ボルツァーノからタクシーでドロミーティへ。ここは3000m級の峰が18もそびえる山岳地帯です。現地で待ち合わせたガイドさんとコースをリフトで登ると、滑る前にある景色を見せてくれました。それは、天を衝くようなドロミーティの山々の鋭い稜線。もともとは海底に沈んでいたのが、その後地殻変動で隆起し、そして柔らかい岩肌が侵食されて切り立ったのだそうです。まさに息を呑むような景色。この大パノラマを望みながらのスキーは格別でした。
これで終わり…かと思いきや、ガイドさんは「まだ連れて行きたい場所がある」そう。そこに広がっていたのは、夕暮れの空をくっきりと切り取る、険しい稜線に、色づいた雪と岩肌や空のコントラスト。そして最後には、峰の先端が紅に光り輝きだしました。これは、エンロサディラという現象で、滅多に見られないのだそうです。太陽と大地が織りなす奇跡の絶景は、ドロミーティからの最高の贈り物でした。